
マンガ メダリスト 9巻まで
子どもにもスポ根を読ませようと思い、調べたり聞いたりしたところ、ものすごく勧められた本作。いったん全日本ノービス大会終了で感想を書いておく。
スケート選手を諦めプロのオーディションにも落ち続けた司の元に、小学5年生の結束いのりが現れる。彼女のスケートへの思いに司はコーチを引き受けることになるがーー
面白い。面白いよ、充分面白い。子どもに読ませるのも合格。はじめは小学生と大人のキモいペアのストーリーか、コーチと選手のラブストーリーなのかと思ったが全然そんなことなかった。
スポ根ど真ん中。コーチと選手の関係性は柔らかすぎるくらい柔らかいが、競技における年齢制限を分からせるマンガはなかなかない。
はっきりとした目標を設定すること。まずはそこをスタートに日々の練習、生活を組み立てること。友達に気をつけること。
子どもに身に着けてほしい考え方がふんだんに入っていて、素晴らしい。
だけど、、作者がうるさい。ページの間から作者がこっちを見ている。どう?どう?わたしの作品面白い?感想は?感想聞かせて!って。
セリフかなぁ。セリフに作者の想いが乗りすぎていて、小学5年や6年が吐く言葉ではないから、一歩も二歩も引いて読んでしまう。だから没入感がない。キャラクターに現実味がない。こんな子いないでしょ。だから感情移入ができない。
作者がこっちの目を見ながら一人人形劇を見せてくる感じ。マンガってのはもちろん全部そうなんだけど、そんな状態で読ませられたら引いちゃうでしょ。そういうこと。
だから、あぁこのセリフ、過去に作者が言った、いや、口に出さなくても脳内で叫んだ言葉なのかなとか、似たような経験をしてきてるのかもしれないというリアリティがある。それと作者の思想ね。思想を感じる。
熱量が凄いから。
実体験込みじゃないとあんな熱量出ないでしょ。思想を含んだ熱量。執念を感じる。こうあるべき!っていう。大人と子供は対等であるべき!っていう思想。
あーっ、そうか。この違和感は自己啓発だ。自己啓発セミナー。熱く語るトレーナーと、シラけた部分がある自分。
だから、トレーナーである作者のことを考えながら読んで、トレーナーははたぶんこういうセリフを吐かせたいんだろうから、ストーリーはこうしたいんだろうなぁ、このジャンプは成功、こっちは失敗。あ、ちがったか、こっちは合ってた。みたいな、空気を読みつつ設問を回答していく、セミナー参加者の気持ちで読んでいたのだ。
または宗教。新興宗教。熱狂的な信者が現れるだろうな。そういう危うさがある。没入すると危険。
でも今後も楽しみな作品ですよ。どうなっていくかなぁ。いのりには
「学校に行きたくない」
「学校に行く時間無駄だから」
って言ってほしいなぁ。この質問に教祖である作者がどう答えるか興味がある。
それはそうと、フィギュアスケートの得点ってこんなに複雑でちゃんとしていることを初めて知った。もっと感覚的にやっているのだと思ってた。
中継とかでも予想の基礎ポイントとか、予想の得点途中経過とか見せてくれれば見やすくなるのに。本作を読むと、ジャッジって技ごとにその場で得点を決めてる感じに見えるから、押したボタンを画面に表示するとかしてくれないかなぁ。