借金なしでは成り立たない?国の財政の仕組みをシンプルに解説
国の金融システムのシンプルなモデル化から考える「本質的な疑問」
はじめに
「国の借金は悪であり、返済しなければ破綻してしまう」といった声を耳にすることがあります。このような議論は日常的に見聞きしますが、本当にそうなのでしょうか?実際のところ、国の財政や借金の仕組みをシンプルにモデル化してみると、単純な「借金=悪」という構図では語れない、より本質的な問題が浮かび上がります。
シンプルな金融システムのモデル
新たな国が誕生
国が成立し、経済活動を行うために貨幣を供給する必要が生じます。
貨幣供給の方法
貨幣を発行するために、政府は国債を1000億円発行します。
金利を2%と設定し、中央銀行がこれを引き受けます。
貨幣の供給量
この時点で、国の経済には1000億円の貨幣が供給されます。
返済の構造
政府は元本1000億円に加えて、金利2%(年間20億円)を返済する義務を負います。
浮かび上がる根本的な疑問
このシンプルなモデルには、以下のような疑問が生じます:
1. 金利分の貨幣はどこから来るのか?
初期段階で供給された貨幣は1000億円です。
しかし、政府は元本1000億円に加え、金利20億円を返済しなければなりません。
ここで重要なのは、金利分の貨幣(20億円)はこの国の経済には存在していないという点です。
2. システムを維持するにはどうするのか?
この不足を補うには、政府がさらに新たな国債を発行し、貨幣を供給する必要があります。
つまり、この仕組みは「新たな負債を発行し続けること」を前提として成立しているのです。
この矛盾が示す金融システムの本質
現代の金融システムにおいても、このモデルの本質的な矛盾はそのまま当てはまります。
負債ベースの貨幣供給
貨幣は国債という形の負債に基づいて発行され、流通します。
金利の存在により、常に元本以上の返済義務が生じます。
新たな負債の必要性
金利分を返済するためには、新たな負債(国債の発行や貨幣創造)が必要となり、負債総額が膨らんでいきます。
経済成長が前提
このシステムが持続可能であるためには、経済成長により負債の負担を軽減することが前提です。しかし、成長が止まれば、システム全体が崩壊の危機に直面します。
なぜこの答えに触れられないのか?
この問いの本質は非常にシンプルですが、公に議論されることはほとんどありません。その理由は以下の通りです:
1. 専門家の間では「常識」
経済学や金融の専門家にとっては、貨幣が負債に基づいて発行される仕組みや、新たな負債が必要な構造は当然の前提です。
あえて一般に議論されることは少なく、「暗黙の了解」として扱われがちです。
2. 一般に伝えることの困難
この仕組みを一般向けに説明するのは非常に難解です。また、「貨幣=負債」という本質を理解するには、ある程度の経済学的知識が必要です。
一般には「金融政策」や「量的緩和」といった表面的な議論に留まり、本質には触れられません。
3. 不安を煽るリスク
この仕組みを明確に公に議論することで、人々や市場に不必要な不安を与える可能性があります。特に、「この仕組みは破綻するのでは?」という疑念を避けるため、表面的な説明が優先されることが多いのです。
私たちがこの仕組みから学ぶこと
現行システムの限界を認識する
現代の金融システムが「新たな負債を供給し続けること」を前提として成り立っている以上、成長が止まった時や信用が失われた時に危機を迎えることは避けられません。議論を深めることの重要性
この仕組みの本質に目を向け、持続可能な経済システムについて議論を進めることが求められています。
おわりに
このシンプルなモデル化を通じて見えてきた金融システムの本質は、現代社会における非常に重要な問いを投げかけます。
なぜ、この仕組みが持続しているのか?
どこに限界があるのか?
私たちがこの仕組みをどのように改善できるのか?
この問いを共有し、より多くの人々が考えるきっかけになれば幸いです。次回は、日本の国債の実データを踏まえ、考察してみたいと思います。