【短編小説】月夜影に棲まうもの《あとがき》 憧れの『あとがき作家』
こんにちは、宍戸晴礼です。
短編でしたが、完結できました。とても、嬉しいです。今回は、試しに連載形式で発表してみました。
《1》を投稿したときは、《2》の途中まで書いてありました。でも、そのとき完結が《5》だとは思っていませんでしたね。
いつ終わりが来るのかなあ、と五里霧中の気分でした。物語をコントロールするのは、難しいです。
僕の書き方としては、かっちりとしたプロットは作りません。登場人物と忘れてはいけない通過ポイントをメモして、書き始めてしまいます。
以前、プロットをちゃんと作って書いたこともあるのですが、出来上がってみると全く違う物語になっていました。執筆中に、ひとつのアイデアを思いつくと、そちらに引っ張られてしまうようです。
なので、プロットを作っても無駄なのです。おっと、そんな展開になるのかい、と知らない物語が目の前で展開するので、自分でも驚いています。
ただし、ラストシーンだけは常に頭の中にあって、それを意識して執筆しています。なんとか目的地へ着陸させるぞと、フラフラ、グラグラする飛行機を操縦している感じですかね。
話は変わりますが、皆さんは本を購入した際、著者の『あとがき』は先に読みますか? それとも本編を読了してから、デザート感覚で読みますか? 僕は真っ先に『あとがき』か『解説』に目を通します。これは癖というか、もう衝動ですね。
僕の好きな作家さんには、『あとがき』が面白い方が何人もいます。どんな体験をしたなど近況を教えてくれる方、上下巻なのにそれぞれに『あとがき』を書いちゃう方、『あとがき』だけを集めて一冊出版した方。本当に、作家さんの個性が出ます。
僕も本を出版できるようになったら、「あとがき」を書くんだ。「あとがき」作家になりたい。いつしか、それが夢になっていました……
あれ、今本棚から本が落ちる音がしました。何でしょう?
古い文庫本を拾うと、開いた頁が光を放っています。覗き込むと、黒縁メガネにスーツ姿の男性が、こちらを睨んでいました。
「バカ者。本編もろくに書けない奴が、『あとがき』を語るな。もっと、精進してからにしなさい」
「お待ちください。敬愛するH先生。夢を持ってはいけないのですか?」
「夢をみるのは構わない。しかし、『あとがき』は、素晴らしい本編を著した作家だけに与えられる特権だ」
「しかし……」
「お前は、『ルックバック』を読んだ。映画も観たな。主人公が、絵の上達のために調べたホームページに、何と書いてあった!」
「……とにかく描け、バカ! です」
「そうだ。お前はバカなので、とにかく書け、書きまくれ! 『あとがき』はそれからだ。いいな」
「……はい、先生。ありがとうございました」
光の消えた文庫本を、僕はそっと棚に戻しました。そして机に向かい、キーボードを叩き始めます。目に、いっぱいの涙を溜めて。
アニメ映画『ルックバック』を観に行って感激した、という近況を書きたかったのですが、途中から色々変わって、こんな感じになってしまいました。やはり僕は、最初の構想通りに書けないのです。
この投稿からご覧になった方は、ぜひ小説も読んでみてください。ちょっと怖いお話です。再読したい方も大歓迎です。
しかし、あの文庫本からは、いつもパワーをもらえます。ああ、何だか胸の辺りが暖かくなってきました。今でも、『光のネットワーク』は、僕の中にあるのです。