【変化球攻略】自宅ですぐにできる変化球の打ち方をわかりやすく教えます
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
今回のテーマは、「変化球攻略」です。
変化球をタイミングよく打つことは、簡単ではありませんね。でも、変化球に対応する攻略法はあります。
変化球が打てないのは、どうしてでしょうか?
その理由はいくつかありますが、一番の理由は、ストレートとのスピード差です。そのほかにも、ストレートとは違った軌道で予測が難しいことや、目の錯視など、変化球が打てない理由はさまざまです。
ですから、ストレートを打つときとは、注意すべきポイントが変わります。そのポイントがわからないままでは、ぎこちないスイングのまま、変化球の攻略はできません。
ということで、今回は変化球の攻略方法について解説をします。
小学生の場合、所属する団体によっては、変化球が禁止されていますが、緩急をつけることは許されているようです。ですので、スピード差にタイミングを合わせるという点で、参考になる内容です。
もちろん、変化球が許されているリーグの選手や、中学野球の選手にとっては、今日からできる対策法と練習法が、役立つはずです。
これまで、変化球が打てていない選手にとって、大切な攻略法ですので、ぜひ最後までご覧ください。
変化球が打てない根本的な3つの原因
変化球が打てない原因は、大きく3つあると考えています。
ひとつめは、スピードの差。
ふたつめは、タイミング。
そして、三つめが目の錯視です。
三つめの目の錯視については、「変化球をタイミングよく打てる強打者になるための3つのポイント」で詳しく解説していますので、今回は、そのほかのふたつについて詳しく解説をします。
具体的な数字を見るとわかる打てない原因
変化球が打てない原因のひとつめは、ボールのスピードの差による時間差です。
どういうことか、説明しますね。
例えば、時速140キロのストレートと、120キロのカーブを比較します。
時速140キロのストレートが、18.44メートル先のホームベースに到達する時間は、わずか0.47秒です。
それに対し、120キロのカーブは、0.55秒になります。その時間差は、わずか0.08秒です。
たったの0.08秒ですが、この差を距離にすると、どれくらいだと思いますか?
答えは、3.1メートルです。
これは、中学生の投手が投げる120キロのストレートと100キロのカーブを比較しても、ほぼ同じです。
時間にするとほんの一瞬ですが、距離の差を知ると、意外に長く感じるのではないでしょうか?
つまり、この時間差の分だけタイミングが崩れるため、変化球は打ちにくいわけです。
タイミングが崩されスイングが乱れる
変化球が打てない原因のふたつめは、タイミングが崩されることです。
先ほど、ストレートと変化球の距離の差が、3mだと言いました。
ストレートを打つタイミングでスイングしはじめて、変化球だった時、ボールは、自分のミートポイントより、まだ3m先にあるのです。
そうなると、上半身が突っ込んだりして、スイングが乱れやすくなりますね。これは、実際に打席で経験した選手が多いと思います。
逆に、変化球のタイミングで振ろうとしていて、ストレートが来たら、確実に振り遅れてしまいます。
ピッチャーは、打たれまいと考えて、緩急をつけたりコースを変えたりしているわけです。また、クイックで投げるなどして、タイミングをずらそうとするピッチャーも多いですね。
この投球動作について、アメリカで興味深い調査が行われましたので、少し話がそれますがお伝えします。
バッターは、ピッチャーの投球動作が速ければ、投球されたボールが速く感じ、逆に遅ければ、ボールが遅く感じてしまうのです。
それは、脳が目から入ってくる色々な情報を組み合わせて、ボールの速さを判断しているためです。
このような、さまざまな理由でタイミングが狂わされるため、変化球は打ちにくくなります。
ボールの軌道が生み出す打ちにくさ
変化球が打てない原因の三つめは、ボールの軌道の読みにくさです。
変化球は、その名の通りで、ボールの軌道が直線的ではなく変化します。 変化の仕方は、スライダーとカーブでは違いますね。
小中学生のピッチャーの場合は、投球フォームやリリースの位置も、投球ごとに異なることが多いです。そのため、バッターは瞬時にその変化を見極めて、軌道を予測してスイングすることが難しくなります。
ボールの軌道の違いは、「マグヌス効果」の影響を受けます。
マグヌス効果とは、ボールの回転方向と進行方向の空気の流れによって揚力を発生させることですが、ボールの軌道に影響を与えます。
それらが、バッターの視覚に誤差が生じてしまい、変化球が打ちにくい原因になります。
なお、マグヌス効果については、「打者が恐れる「火の玉ストレート」5つの秘密を徹底解説」で詳しく解説しましたので、併せて確認してください。
変化球攻略のカギ
変化球を攻略するためには、変化球が打てない原因を克服する必要があります。
先ほどの説明では、ストレートと変化球では、ミートポイントが3mほどズレることを説明しました。
これまで、漠然とボールを見ていたとしたら、ストレートと変化球の具体的な距離感を意識するだけでも、結果が違ってくるのではないでしょうか。
また、タイミングが崩される原因についても説明をしました。
さらに、ボールの軌道の違いによる視覚の誤差が生じることで、変化球が打ちにくいことがわかったと思います。
ちなみに、ボールの見かたとビジュアルトレーニングについて解説した「プロ野球選手だけに教えた打撃理論とは?」も参考になるはずです。ぜひ、ご確認ください。
変化球を攻略するためには、タイミングとミートポイントが重要なポイントになります。
速球と変化球でスイングは変わるのか?
変化球を打つ時、ストレートのスイングとは違うスイングで対応する必要があると思いますか?
結論を先に言いますね。
強いインパクトを生み出すスイングは、インサイドアウトでレベルに振り抜くスイングです。それは、ストレートでも変化球でも変わりません。
強いスイングを生み出す「理想のインパクトの形」については、「打撃でうまくいかない内外角打ちの具体的な攻略法」で説明しました。併せて確認してください。
ここで理解してほしいことは、バッターはタイミングさえ合えば、どんなボールでも打てる可能性があるということです。そして、ストレートと変化球で、スイングを変えてはいけないということです。
その点について、落合博満さんは著書の中で
唯一変わるのは、タイミングの取り方です。
それを頭に置いて、変化球を打つ練習をしていきましょう。
変化球を打つ間とタイミングの考え方
ひと口に変化球といっても、さまざまな種類があります。
カーブやチェンジアップのように、ストレートとスピード差の大きい変化球。そして、スライダーのようにスピード差の小さい変化球があります。
少年野球の場合は、変化球は禁止されている団体がありますが、緩急をつけた投球は許可されているようです。また、リトルリーグや中学野球であれば、変化球が許可されています。
ですので、小中学生であっても、変化球を打つ間とタイミングの取り方を身につけていく必要があります。
ここでは、「遅い変化球」と「速い変化球」に分類して、タイミングの取り方を考えていきます。
まず知ってほしいのは、タイミングを取る時の基本は、ストレートのタイミングでスイングを始動して、変化球が来たら対応して打つことです。
この時に大切なことは、テイクバックでしっかりと軸足に体重を乗せること。そして、トップの形を必ずつくることです。
速い変化球のタイミング
バッティングの基本は、自分のミートポイントでボールをとらえることです。
スイングは、構えからテイクバックし、トップをつくりインパクト。そしてフォロースルーへとつながります。
名伯楽、内田順三コーチの著書には、次のように記されています。
そのリズムをつくるために、「イチ、ニー、サン」と表現する指導者が多いと思います。
スライダーやシュートなどの速い変化球の場合は、タイミングがストレートとほぼ同じで、「イチ、ニー、サン」のタイミングです。
ただし、ストレートとスライダーでは、球速に差があります。一般的に、10キロ前後だとすると、ストレートとの時間差が0.05秒あります。
ですから、「ボールを呼び込んで打つ」意識が必要です。
この点について、落合博満さんは、
ですから、小中学生は、振り遅れることを怖がらず、ミートポイントに呼び込んで打つ練習を重ねましょう。
遅い変化球のタイミング
カーブやチェンジアップのように、ストレートとは明らかにスピード差がある変化球は、スイングを崩されやすいです。
リズムの取り方としては、「イチ、ニーノ、サン」と、トップで「ノ」が入り、一瞬の間をつくってスイングします。
ストレートとカーブの球速差は、大きくても25キロ前後で、時間にすると約0.1秒です。
非常に短い時間ですから、感覚を養う練習が必要になります。日頃の素振りから、間の取り方を意識することが重要になります。
そうすれば、変化球を攻略できる技術が身についていきます。
繰り返しになりますが、練習では振り遅れることを恐れずに、自分のミートポイントまで呼び込んで打つようにしてください。
立ち位置でインパクトの位置を変える
変化球を攻略する、もうひとつの考え方として、打席での立ち位置を変える方法があります。
ひとつは、打席で投手寄りに立ち、なるべくボールが変化する前にインパクトするという考えです。
ただし、投手に近い分、ボールを見極める時間が短くなります。また、打席ではストレートへの対応も必要ですから、速球に負けないスイングのスピードが必要になります。
反対に、打席で捕手よりに立ち、ボールが変化し終わったところをインパクトするという考えもあります。
ピッチャーから遠いので、ボールの軌道を少し長く見ることができます。しかし、ボールをミートポイントまで呼び込めないと、体が突っ込むなどスイングを崩す原因になります。
小中学生の場合、球種も少ないですし、球速もそれほど速くありません。ですので、変化球の多い投手と対戦する打席では、投手寄りに立つことで攻略しやすくなります。
実際に、両方を試してみて、自分の感覚をつかんでいきましょう。
変化球攻略のための練習法
変化球攻略の第一歩は、やはり基本にのっとったスイングを身につける練習をすることです。
そのために、日々インサイドアウトのレベルスイングを意識した素振りを行い、体に良いクセを染み込ませていくことが重要です。
その上で、変化球を攻略していくためのポイントは「軸足」です。
ここからは、今日からできる変化球攻略のための練習法をお伝えします。
なお、スイングの基本については、「一流のプロを育てた飛距離を生み出すスイングの原理」を確認してみてください。
タメの意識がツボ
変化球攻略のためには、タメが必要だということを、先ほどお伝えしました。
このタメは、ストレートとのスピード差が大きくなるほど重要になります。
タメをつくるには、軸足にしっかりと体重を乗せ、深いトップをつくるといった、スイングのツボを抑える必要があります。
小中学生に多く見られるのは、とにかくボールに対応しようとして、トップが浅くなってしまうスイングです。また、軸足で間が取りきれず、体が突っ込んでしまうケースもよく目にします。
体が突っ込むと、自分からボールに近づいて打つことになります。結果的に強いインパクトができず、詰まった打球になってしまいます。
ですから、軸足を意識した素振りをしましょう。
ストレートのタイミングと同じように軸足に体重を乗せ、少しだけ長めに体重をかけてスイングします。
ストレートのタイミングでスイングしたら、次は速い変化球、そして遅い変化球のタイミングでスイングするといった具合に、素振りを繰り返してみましょう。
その時、自分で「イチ、ニー、サン」や「イチ、ニーノ、サン」と言いながらスイングするのがおすすめです。
「ニー」や「ニーノ」でトップをつくり、「サン」で一気に振り抜く素振りを繰り返してみましょう。
今日からできる軸足を意識したスイング
自宅でもできる練習のひとつに、ティースタンドを使った練習があります。
素振りで感覚がつかめたら、実際にティーバッティングをしてみましょう。
まず、ティースタンドを自分のミートポイントにセットし、ストレートのタイミングと変化球のタイミングで、交互にバッティング練習をしてみます。
その時に注意することは、繰り返しになりますが、しっかり軸足に体重を乗せることと、深いトップをつくることです。
やはり、自分で「イチ、ニー、サン」や「イチ、ニーノ、サン」と言いながらスイングするのがおすすめです。
さらに、トスしてもらってティーバッティングができるようなら、ぜひ行いましょう。
自宅でティーバッティングができない場合でも、週末のチーム練習に取り入れてみてください。
ボールをトスする投げ手が、わざと山なりのボールをトスしたり、投げるテンポを変えることで、タメをつくる良い練習になります。
ワンテンポで同じようなボールをトスしていると、子どもも惰性でスイングをしてしまいます。ですから、数球に一度、ボールをトスする寸前に手を止めるというのも、良い練習になります。
そのほか、100円ショップで入手できる、軽いプラスティックボールは、軌道を予測しにくいので、変化するボールへの対応力が養える練習になります。
そのほかにも、おすすめの練習法がありますが、今回はここまでとします。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、変化球を攻略するためのバッティング技術と練習方法について解説しました。
変化球が打ちにくい主な理由として、ストレートとのスピード差、タイミングのズレ、そしてボールの軌道の読みにくさがあることを説明しました。
そして、変化球攻略のカギは、基本に忠実なインサイドアウトでレベルなスイングを維持しつつ、タイミングの取り方を調整することです。
そこで、速い変化球と遅い変化球、それぞれに対するタイミングの取り方を紹介しました。
効果的な練習法として、軸足を意識した素振りやティーバッティングも提案しました。
「イチ、ニー、サン」や「イチ、ニーノ、サン」といったリズムを意識しながら練習してください。
変化球への対応力を高めるには、日々の地道な練習が欠かせません。しかし、焦らず継続的に取り組むことで、必ず上達が見られるはずです。
お子様の成長に合わせて、段階的に練習を進めてください。
今回の内容を参考にして、効果的な練習を重ねていくことで、変化球にも対応できる選手に成長していくでしょう。
それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。
今回は以上です。
次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考文献:
石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社
内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA
内田順三著、二流が一流を育てる ダメと言わないコーチング、KADOKAWA
内田順三著、打てる、伸びる!逆転の育成法、廣済堂出版
落合博満著、落合博満の超野球学②、ベースボールマガジン社
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【石橋秀幸プロフィール】
広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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