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【ホップするストレート!?】打者が恐れる「火の玉ストレート」5つの秘密を徹底解説
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元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ
剛速球を投げる5つのコツ
こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。
ピッチャーであれば、打者が手も足も出ないストレートで三振を奪いたいですよね。
今回は、元阪神タイガースの藤川球児投手の代名詞となった「火の玉ストレート」について解説します。
前回お伝えした「変化球の錯視」だけでなく、ストレートでも錯視によって空振りを奪えることを知っていましたか?
それが、火の玉ストレートの秘密です。
では、どんな風に投げると打者の錯視を誘う火の玉ストレートになるのでしょうか?
これからお伝えする5つのポイントを知ることができれば、今は投げられないとしても、トレーニングによって火の玉ストレートが投げられるようになるかもしれません。
ただ、火の玉ストレートの原理がどのようなものか知らなければ、火の玉ストレートをイメージしたトレーニングはできませんね。
逆に、火の玉ストレートの原理を知ることができれば、トレーニング効果が何倍にも高まります。
これまで、ただ力まかせに投げているだけで、なかなか伸びのあるストレートが投げられないというピッチャーにとっては、とてもためになる内容です。
また、自分はストレートに自信があるという場合でも、今回の内容を知ることで、さらに磨きのかかったストレートが投げられるようになります。
ですから、これからお伝えする内容を、ぜひ最後までご覧ください。
それでは、火の玉ストレートの解説をはじめます。
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打者が恐れる火の玉ストレートとは
打者が恐れる火の玉ストレートとは、ストレートだとわかっていても空振りしてしまう魔球のようなストレートです。
投手なら誰もが憧れる剛速球ですね。
アメリカでは剛速球を、煙を噴射しながら進むロケットに例えて、スモークボール(Smoke Ball)といいます。そんな迫力のある剛速球には、必ず球威があります。
では、球威というのはどういうことなのでしょうか?
剛速球の迫力と球威
打者が恐れる火の玉ストレートの秘密のひとつ目は球威です。
球威とは、投手が投げるボールの「威力」を総合的に表したものです。球のスピードや球質、回転数など複数の要素が組み合わさっています。
一般的に、球威のあるストレートは、高速で打者にとって非常に打ちづらい球として認識されます。これは、その速さだけでなく、後で説明しますが、球にかかる回転や投げ方にも影響を受けます。
球威のあるストレートのことを、浮き上がるような球、ホップするような球と表現することがあります。
現実は、重力を受けてボールの軌道は少しずつ落ちていきます。ですから、投球されたボールが物理的に浮き上がるような変化をすることはありません。
ピッチャーが投球した全ての投球は、指先を離れる瞬間から徐々に落下していくのですが、ボールに回転を加えることによって、その落下速度を遅らせることが可能になります。
それが、打者の錯視を誘う効果となります。
打者を惑わす錯視効果
打者が恐れる火の玉ストレートの秘密の二つ目は錯視効果です。
先ほど、球威のあるストレートは、重力による落ちが少ないことを説明しました。それが、打者の目には浮き上がってくるような「錯視」を起こさせます。
そして、球威のあるストレートは、その軌道の予測ができないので、振ったバットの上をボールが通過するということが本当に起こるのです。
これは、後で詳しく解説をしますが、マグヌス効果による現象です。
ボールに強いバックスピンをかけることによって、空気抵抗が増し、ボールの落下速度が遅くなるという現象があります。回転数が多いほど揚力は大きくなるので、ボールは直進する軌道を描き、キレのあるストレートとなります。
そして、この下から上への回転によって、打者にボールが浮き上がるように「錯視」させることができるのです。
なお、「錯視」については、前回の情報を参照してください。
錯視をさせるマグヌス効果とは?
打者が恐れる火の玉ストレートの秘密三つ目は、マグヌス効果です。
球威があるストレートを投げるためには、ボールの回転で揚力を発生させる「マグヌス効果(Magnus Effect)」をうまく活用することがポイントです。
マグヌス効果とは、回転しているボールが回転軸に垂直な方向に力を受ける現象です。
これは、ドイツのマグヌス氏によって約170年以上も前に認識されました。
揚力を生み出すバックスピン
マグヌス効果をうまく活用するポイントは、バックスピンです。
ストレートの場合、ボールに逆回転をかけるバックスピンが上向きの揚力を発生させます。その揚力の分だけ重力に逆らってボールが落ちないで進むことになります。
揚力は、ボールが空気中を進む際に周囲の空気との相互作用を通じて発生します。
ボールが回転することで、一方の側面では空気を押しのけ、もう一方の側面では空気が引き込まれることになります。この空気の動きが、ボールに揚力与え、結果として「キレ」を生み出す訳です。
この効果により、投げたボールが実際よりも落ちにくく見え、打者がボールの軌道を正確に捉えにくくなります。
また、打者は投手の投球フォームやボールの初速を見て、ボールがどの位置をどのタイミングで通過するかを予測しています。そして、それに合わせてバットを振ります。
しかし、すでに説明をしたように、球威のあるストレートは、予測された軌道よりも落ちるのが遅れるため、打者のミートポイントを狂わせることができます。
この「マグヌス効果」で生む揚力を、大きくするほど球威のあるストレートになるのです。
そのためにはボールに回転をどれほど多くかけられるかがポイントになります。
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横回転が生む「キレ」
火の玉ストレートの話からそれますが、変化球についても少しだけ触れておきますね。
横回転から生じる横向き方向の揚力は、スライダーやシュートなどの「キレ」を生み出します。
ボールの回転とボールにある108の縫い目の動き方が、これらの揚力を変化させる重要なポイントになります。
変化球のキレとは、ボールが投手の手を離れた後に予測しづらい動きのことを指し、このキレが打者を翻弄します。
特に横回転を伴うスライダーやシュートといった球種においては、打者にとって捉えにくい軌道の変化を生み出します。その結果、バッターにミスをさせる確率を高めます。
投手がこれらの変化球をマスターするには、握りや回転のかけ方、リリースの瞬間の手の動きなど、細かい技術を習得する必要があります。
また、これらの球種を効果的に使うためには、それぞれの球種が持つ特性を理解し、打者のタイミングを外すための戦略的な配球が求められます。
これらの細かな技術の習得は、実際にプロ野球で活躍した選手から教えてもらうことが一番ですが、それについては後ほどお伝えします。
それでは、話を火の玉ストレートに戻しましょう。
ここからは、いよいよ藤川球児投手についても触れていきたいと思います。
藤川球児投手の火の玉ストレート
すでにお伝えしたように、藤川球児投手が阪神時代に投げていたストレートは、火の玉ストレートと呼ばれていました。
それは、浮き上がるような球筋から、打者がストレートと分かっていても打てないストレートでした。
それでは、藤川球児投手の火の玉ストレートの秘密を探っていきましょう。
回転数の秘密
打者が恐れる火の玉ストレートの秘密四つめは、回転数です。
藤川投手が投げていたストレートの回転数は、1秒間に45.5回という報告があります。
ちなみに日本プロ野球投手のストレートの平均回転数は、1秒間に37回です。
ですから、藤川球児投手の「火の玉ストレート」は、日本プロ野球の中でも群を抜いて回転数が多かったことが分かります。
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ちなみに、アメリカでは「ストレート」という表現はせず、「ファストボール(Fast Ball)」と表現されています。
また、日本の投手のストレートは、フォーシームの握りで投げられることがほとんどです。
フォーシームの握りでボールにバックスピンを利かせたストレートは、打者から見ると、4つの赤い縫い目が下から上へグルグル回転して見えます。
そのストレートは、ボールが1回転するときに縫い目が4回見えるため、フォーシーム(Four-Seam)と呼ばれています。
球の回転数を高めるためには、リリースの瞬間に指先でボールに強いバックスピンをかけることが必要です。
しかし、無理にバックスピンをかけようとすると、ボールを押し出してしまって逆に回転数が上がりません。
ボールにも重さがあるので、リリースの瞬間にわずかですがボールは自然に指先から落下しているのです。
その落下するボールを押し出すのではなく、どのようにすれば上手くバックスピンがかかり、回転数が高まるかが重要なポイントです。
そして、火の玉ストレートを投げるためのもう一つ重要なポイントがあります。
それを次にお話しします。
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力感ある投球モーション
打者が恐れる火の玉ストレートの秘密五つ目は投球モーションです。
例えば、150キロを超える速いストレートでも、棒球といわれるものがあります。逆に、150キロに満たないストレートでも、投球モーションの「力感」と、ボールの「角度」を打者に感じさせて、打ち取る投手がいます。
藤川球児投手は、とても「力感」あふれる投球モーションで投げていたといわれます。
これは実際に、当時のプロ野球選手に聞いた話です。
藤川球児投手は、左足を高く大きく上げ、右の軸足を真っすぐに伸ばしたまま踏出して投げていたので、まるで大きな木が自分に向かって倒れてくるように感じたそうです。
実際に、投球後には軸足がプレートから、大きく打者の方向にずれていたそうです。
打者は、自分に向かって大きく勢い良く近づいて来る感じがして、投球モーションの「力感」の凄さや怖さを感じていたのでしょう。
またリリースポイントも高く、指先で切るように腕を振っていたので、ボールの「角度」も感じていたそうです。
このように、球威は単にボールの速さだけではなく、投球の質や、打者に与える心理的な要素が複雑に絡み合って成り立っています。
ですから、投手として結果を出すためには、ボールの速さだけでなく、正確なコントロールや変化球との組み合わせ、さらには投球の際のリズムやタイミングなど、様々な技術を磨くことが重要になってくる訳です。
しかし、こういったプロ野球選手が語る重要なポイントは、文章でいくら説明しても上手く伝わらないかもしれません。
だからこそ、実際にプロ野球で活躍してきた選手から、直接指導を受けられたらいいですね。
今回のまとめ
いかがでしたか?
今回は、打者が恐れる火の玉ストレートについてお伝えしました。
火の玉ストレートの秘密のひとつめは、球威でした。二つめが錯視効果。三つめがマグヌス効果でしたね。
そして、四つめが回転数で、五つめが力感のある投球モーションでした。
今回の内容を何度も確認して、火の玉ストレートが投げられるようになってください。
ただ、今回は時間的に具体的なトレーニング方法までお伝えすることはできませんでした。それについては、またの機会にお伝えしたいと思います。
ホロス・ベースボールクリニックには、150キロを超えるストレートで打者を打ち取ってきた紀藤真琴コーチがいます。また魔球パームボールを駆使して、最優秀防御率を獲得した小林誠二コーチもいます。
お二人ともプロ野球で輝かしい結果を残していますので、ただ速いストレートや、凄い変化球の投げ方を教えるだけではありません。
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プロ野球で実際にストレートや変化球で、プロの打者を抑えてきた経験値は計り知れませんね。ですから、その高いレベルの経験から学ぶことにも意義があると思います。
紀藤コーチ、小林コーチの、オンラインでのパーソナルトレーニング指導にご興味のある方は、ぜひお問合せ下さい。
今回は以上です。
次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。
引き続き、野球の上達のために頑張っていきましょう。
それでは、またお会いしましょう。
【石橋秀幸プロフィール】
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広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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■石橋秀幸これまでの業績:
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