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若いデザイナーが起業して失敗した話

つい最近まで小さな会社の代表をしていました、大堀です。社名は株式会社DENDESIGNといいまして最大でも5名くらいの小さな制作会社でした。2013年に創業し2021年に会社を畳んで一区切りしたところで、これまでを振り返りつつ経緯と反省点など書いてみようと思います。


なぜ起業したのか

独立前の話はこのnoteに詳しいですが

24歳で独立してから売上もたち案件の相談も増えてきたので、25歳の時にアシスタントを雇うタイミングで法人化しました。いわゆるスタートアップのように明確なミッションやエグジット目標があったわけではなく、個人事業からの節税目的で法人成りというスタートでした。

会社の将来像とかは深く考えておらず、10年後にはそれなりの会社になっているといいなぁくらいに思っていた気がします。

順調なスタート

UIデザインの仕事はちょうど時流もあって増え続け、起業2年目から代官山→渋谷区東→渋谷区桜丘町へと1年ごとにオフィスを拡大していました。

社員数5名になったタイミングで、渋谷駅から徒歩7-8分の桜丘に60平米のオフィスを借りるに至ります。ちなみにアルバイトではなく正社員を雇い始めると社会保険の加入義務が発生するので、厚生年金や健康保険の適用事業所にもなり、色々と事務手続き周りも忙しくなっていました。家賃38万円のオフィスも借りて大きめの仕事も引き受けるようになりました。

会社拡大を目指し始める

人を増やして売上も増えてきて調子に乗って、もっと会社を大きくしたい欲が出てきました。周りにも「社長!」とか唆されてうわ着いていたこともあるかもしれません。ただあくまでスタートは個人事業ですし、サラリーマン経験1年にも満たない自分にはどうやって会社を大きくするのかがよくわかっていませんでした。人を増やして案件をたくさん取ってくれば良い、くらいの解像度で拡大を目指し始めます。

この甘い見通しのまま拡大の目標を立てたことでだんだん雲行きが怪しくなってきました。


棚卸しのジレンマ

なにせ会社がどうやって機能するのかもよくわかっていないので、営業から契約、ディレクションから給与振り込みまで自分でやっていました。頑なに郵送を求めてくる社会保険系の手続きには特にイライラさせられた思い出があります。

組織拡大をするためには自分の仕事を誰かに任せる必要があります。

会社に必要な業務をやって全てのプロジェクトにも関わっていては余裕がありません。さらに母校の非常勤講師を引き受けてみたり、子供が小さいので早め帰宅を心がけていたとかの言い訳もあります。


会計素人

正直これが一番の原因でしょう。当たり前ですが組織拡大を目指すならばきちんと儲けを出すことが必要です。人を雇ったりオフィスを大きくするには多くの資金が必要です。(当時リモートワークという概念は全くなかった)

しかしフリーランス時代の癖もあって、この「儲け」をとる見積もりを怠っていました。利益率がどれくらいが適切なのかもわかっていませんでした。必要な売上計画は立てたものの、達成できるかは時の運です。

会計周りは税理士さんにエクセルを丸投げですし、もらえたはずの助成金の数々はすべて後から知りました。(中小企業が社員を雇用するだけで何十万かもらえます)

儲けを積めないことには自転車操業が続きます。政策金融公庫で借りた800万円もオフィス移転と運転資金で徐々に消え、採用などの組織拡大に使える資金は結局ほとんど残りませんでした。役員報酬も創業時からほとんど上げていないけど、仕事は増えていくのは何故なんだろうとは思いましたが、このまま会社が大きくなれば、いつかブレークスルーするだろうという思い込みで頑張っていました。

自分の気持ちが折れる

当たり前ですが会社経営にはデザインの専門性とはまったく異なる職能が必要です。営業したり採用したりマネージメントしたりお金のやりくりをしたりと、それはそれで良い経験だったのですが、結局本来独立してやりたかったデザインの仕事や、世の中に認知されつつあったUXデザイン的手法の実践、リサーチや分析に割ける時間は減っていました。

当時経営者向けのコーチングをお試しで受けてみたのですが、結果は「なるべく経営をしない」「面白い仕事だけする」が自分の本音だったのでもうダメでした。

会社を大きくしたいけど儲けが少ないからそんな資金はない。仕事を抱えているから余裕も作れない。やりたい仕事ができていない。の三重苦に、仕事を任せ始めていたメンバーの転職も重なり、心が折れて組織拡大を諦めました。自分を再起動してまた拡大軌道に乗せるにはその道筋が途方もなく長く感じました。

自転車操業の慢性的なストレスもあったことから半年かけてメンバーには転職してもらって、2018年ごろには自分1人の節税法人に戻しました。UIデザイナーは引く手数多なので、すぐにみんなの働き口が見つかったのは幸いでした。

再出発

その後1年くらいは既存のクライアントワークを1人で引き受けていたものの、やはりもう一度チームで仕事をしたいと思っていた矢先にGoodpatch Anywhereに誘ってもらい今があります。土屋さん誘ってくれて本当にありがとうございます。ケイタさん受け入れてくれてありがとうございます。


という感じで何も知らない若造が25歳で法人を作ってみたものの、経営という職能を学ぼうともせずになんとなく組織拡大を目指して失敗したお話でした。

やってみないとわからなかった世界があったし、起業したことで数えきれない良い出会いがあったので後悔はありません。

もしこれからデザイナーやエンジニアなど専門性をもった方が法人化を考えていたらちょっとでも参考にしてもらえたら幸いです。

ここ最近は、自分の会社を畳んで株式会社グッドパッチでフルリモートデザイン組織のAnywhereの組織拡大にコミットしています。会社とはどういうものか、日々仕事の中で実践しながら学んでいる毎日です。

何年後かにまた会社を作る気もしますが、その時は誰かと一緒に立ち上げようかなと思います。


それでは

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