【タフメンタル】心が軽くなる漢方薬10選、薬剤師が教えるあなたに合う選び方と使い方
漢方薬で心の安定を
はじめまして、薬剤師の宮本です。
今回は、「不安やイライラを減らす漢方薬9選」を紹介します。
不調・体質改善に漢方薬も以前から注目されていますので、一緒に確認していきましょう。
あなたに適した心を癒す漢方薬を知ることができます。
漢方薬をセルフケアとして効果的に活かせる取り入れ方を実践していただくことで、毎日を心穏やかにまわり人たちに優しく接することができるようになります。
それでは本題に入ります。
■心の漢方薬
1. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
症状チェック
ストレスや不安で眠れない
仕事や家庭、人付き合いなどで思い悩みイライラしている
高血圧に伴う不安・不眠・動悸がある
虚実:実
寒熱:熱
漢方では、皆さんの知っている体のしくみとは別の考え方があり、ヒトの体を3つの要素「気血水」の考え方でとらえます。
生命エネルギーを意味する気は、体に栄養を与える、体そのものや臓器などを動かす、温める、外敵から体を守るなどさまざまなはたらきがあるとされています。
体をめぐる気の流れが、ストレスなどで滞ったり逆流したりすると、神経が過敏になってさまざまな精神症状・不眠・高血圧などを引き起こします。
柴胡加竜骨牡蛎湯は気の流れを正常に戻し、気持ちを穏やかにする処方です。
体力中等度以上で、肥満傾向が強い方
精神不安が強く、頭痛・肩こり・動悸・不眠・便秘などを伴う場合に適しております。
2. 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
症状チェック
のぼせて顔が赤くイライラする
かゆみの強い皮膚症状などがある
二日酔で顔がほてる
虚実:実
寒熱:熱
黄連解毒湯は、熱を冷ます生薬のみで構成されているため、のぼせぎみで顔が赤くほてる人に適した処方です。
かゆみ・湿疹・イライラ・不眠症・胃炎・口内炎・めまい・動悸など、体の中に熱がこもることで出てくる症状に幅広く使えます。
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、イライラして落ち着かない傾向のある場合に用います。
3. 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
症状チェック
のどの奥に何か物がつまっている感じがする
気分がふさぎ、動悸を伴い、不安症状が長く続く
ストレスを受け、胃の調子が悪い
虚実:中間証
寒熱:熱証
半夏厚朴湯は、ストレスなどで気分がふさぐときや、のどの奥に何かつかえた感じがする、吐き気がする方の不安神経症に使用する漢方薬です。
喉のつまりや違和感は、梅の種が喉にあるような状態に例えられ漢方薬の世界では「梅核気」と呼ばれる特徴的な症状です。
これらの症状は、生命エネルギーとされる気のめぐりが悪くなると起こる症状とされおります。
半夏厚朴湯は気のめぐりを良くすることで、症状を改善していき、せきやしわがれ声があるときにも適しています。
また気が停滞するとおなかが張ったり、水のめぐりが悪くなるため、胃の中に水が溜まって吐き気を感じるなど胃腸にもさまざまな不調として出現します。
半夏厚朴湯は、停滞した気を動かし、のどや胃の緊張をやわらげることによって体内に水をめぐらせ、胃の症状も改善していくため、つわりの症状にも使われたりします。
体力中等度をめやすとして、神経質・几帳面傾向がある方
気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う場合に用います。
4. 抑肝散(よくかんさん)
症状チェック
目がさえてなかなか寝つけない
最近、カッとなったり、イライラすることが増えた
年を重ねて怒りっぽくなったと感じる
l眠りが浅く、歯ぎしりが気になる
虚実:虚証
寒熱:熱証
抑肝散は、ストレスなどで気がたかぶり、イライラする、眠れないなどの症状に適しています。
また、寝ている時に歯ぎしりをする方にも使われます。
先ほど 漢方薬には気血水の考え方があるとお伝えしました。
それに加え五臓という考え方もあります。
肝・心・脾・肺・腎の5つになっており、気血水がヒトの状態を大きく捉える考え方、五臓が少し細かく捉える考え方だと思ってください。
漢方では、ストレスなどで感情をコントロールする肝に乱れが起こるとイライラなどの症状が生じやすいと考えます。
抑肝散は肝の乱れを整えることで、症状を改善する漢方薬です。
普段からイライラしやすい、興奮しやすく、カッとなってしまう方
目が冴えてなかなか寝付けない・眠りが浅く歯ぎしりをする方に向いています。
人によっては、まぶたや顔面が痙攣している、手足が震えて落ち着かない症状がある場合もあります。
体力中等度をめやすとして、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状にも用いられます。
5. 抑肝散加陳皮半夏 (よくかんさんかちんぴはんげ)
症状チェック
イライラしてつい人や物に当たってしまう
興奮すると手が震えることがある
怒鳴ってしまうことがある
どちらかと言えば胃腸が弱い
虚実:虚証
寒熱:熱証
先ほどの抑肝散に陳皮と半夏という生薬をプラスした漢方薬が抑肝散加陳皮半夏です。
抑肝散に陳皮・半夏を加えるとそのままの名前になっています。
抑肝散には、当帰・白朮という生薬が入っているのですが、これらが胃もたれ食欲不振が起こることがあります。
そのため、陳皮・半夏という生薬を加えることで、胃の働きを整えることで
お腹が張る食欲がわかないといった胃腸が弱い方や体力が低下した方にも使われます。
抑肝散加陳皮半夏は、ストレスなどの外的刺激によって、気の流れが乱れて頭部へ上昇したことで、血が昇って激しくイライラしたり、人や物に当たってしまう方に用いられる処方です。
生命エネルギーの気の上昇を抑え、興奮を鎮めることで気分の変調を整えます。
激しい怒りは、筋肉の緊張を伴うことがあり、怒りによる手の震え、歯の食いしばり、歯ぎしりなどが特徴的な症状として出ることもあります。
睡眠に関しても興奮は入眠を妨げるため、興奮を鎮めることはスムーズな入眠にも繋がります。
体力中等度をめやすとして、抑肝散では胃がムカムカするような胃腸が弱い方
また月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状にも用いられます。
6. 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
症状チェック
イライラして眠れない
からだが弱く、疲れやすい方
怖い夢やいやな夢を見ることが多く、不安になる、もしくは眠れない
ささいな事が気になって落ち着かない、驚きやすい方
疲れやすく、神経が過敏になることで起こる不眠症、イライラ、不安などを改善する漢方薬です。
生命エネルギーである気をめぐらせることで、体内の血と水のめぐりを改善する「桂枝湯」に「竜骨」と「牡蛎」を加えた漢方薬です。
神経の高ぶりを鎮め、不安を取り除いて気力をつけ、不安定な精神を落ち着かせます。
体力中等度以下で、顔色が悪く、華奢な体型をしており疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすい方、手足の冷えや脱毛ガ生じている場合もあります。
7. 加味帰脾湯(かみきひとう)
症状チェック
虚弱体質で血色が悪い
貧血や心身の過労
気分がイライラしたり、落ち着きがなくなったり、元気がなく口数が少ない
虚実:虚証
寒熱:熱証
加味帰脾湯は、消化器のはたらきを助けながら、足りない血を増やして不眠・不安を改善する漢方薬です。
体に栄養を送る血を補ったり、気をめぐらせたりする処方によって、気持ちを落ち着かせることで、精神を安定させる作用があります。
体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪くときに熱感を伴う場合に適しており、血色が悪く、貧血気味で、精神的なストレスや不安感、不眠、焦りなどの神経症状がある方、胃腸の不調がある方などに使用されます。
8. 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
症状チェック
一気に疲れが押し寄せてくる
貧血や冷え性
ホットフラッシュなどの更年期の症状
虚実:虚証
寒熱:熱証
柴胡桂枝乾姜湯は、体質が比較的虚弱な傾向のある方に向いている処方です。
胃腸の状態が悪いと、血による栄養素が不足し、貧血や冷え症といった症状が現れることがあります。
ほっと気が抜けたときに疲れてしまう、一気に疲れが押し寄せてくると感じる方の自律神経を整えたり、興奮をしずめたり、身体や口の乾きなども潤します。
女性のストレス不調に寄り添う処方でもあるため、ホットフラッシュなどの更年期の症状にも向いています。
体力中等度以下で、痩せ型で貧血気味、顔色が良くない方
冷え症、神経過敏、動悸、息切れ、寝汗、頭部の発汗、口の乾きがある症状が見られます。
9. 加味逍遙散(かみしょうようさん)
症状チェック
疲れやすくイライラしがちで、気分が不安定になりやすい
のぼせ感や肩こりなどがある
更年期障害である
気分が不安定で眠れない
虚実:虚証
寒熱:熱証
加味逍遙散は、気のめぐりを正常化し、血を補って十分にめぐらせることで女性特有の不調を改善してくれる漢方薬です。
婦人科三大漢方薬の1つとされており、多くの女性の不定愁訴の改善に使われ、主に女性の更年期症状に向いています。
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものに適しています。
10. 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
症状チェック
疲れやすい
虚実:虚証
寒熱:熱証
体力が低下している、心身が疲労している人の不眠、神経症、自律神経失調症による不眠のある方に適しています。
■漢方薬の効果的な飲み方・注意点
漢方薬を効果的に使うときに飲み方も大切なポイントがあります。
漢方薬の名前は基本的に漢字で書かれていますが、名前の最後に、「~湯」「~散」「~丸」のように漢方薬の元々の作り方を表わしています。
現在普及している漢方薬の多くは「エキス剤」と呼ばれるものです。
これは、生薬を煎じたエキスを乾燥させて粉末化させたものを顆粒剤や錠剤にしたもので、安定した品質を得ることができることや保管が便利なため広く使われるようになりました。
このようなエキス剤には、本来の漢方薬の名前に追加して「〜料」と最後に付いています。
本来の漢方薬の飲み方の考えとして、体を温める作用のある漢方薬は、お湯で飲んだり、香りを嗅ぎながら飲むと良いとされています。
特に「~湯」とついている漢方薬に関しては、煎じて飲むことで効果を発揮する漢方薬です。
そのため、白湯にエキス剤を溶いて少しずつコーヒーやハーブティーを飲むのと同じようにすることがオススメです。
もしも錠剤の場合には、あまり気にせず普通の薬やサプリメントのように服用してください。
また、漢方薬の味にも効果があるとされています。
皆さんも「良薬は口に苦し」なんて聞いたことがあるかもしれません。
自分が漢方薬を飲んだときに苦味を感じる場合には、体や心の不調があるサインと考えられ、逆に苦味を感じなければ、今は健康体という意味です。
それだけでなく、五味と呼ばれる「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(塩味)」の5種類にそれぞれ効果があるとされております。
そのため、漢方薬は香りと味を感じながら飲むことで本来の効果を発揮します。
ヨーロッパのハーブ療法も同様の考えがあるため、漢方薬はどちらかというとハーブ療法っよりだと私は感じます。
また、漢方薬の飲みタイミングについて「食間」に服用することがオススメ
食間とは「食事と食事の間」のことで、食後2~3時間のことを指しています。
または、食事の前の1時間~30分の間の「食前」に飲みのもオススメです。
「お腹が空いているとき」に服用すると漢方薬が吸収されやすいとされています。
今回は、漢方薬についてお伝えしていきましたが、漢方薬をより効果的に活かすためには私たちの体の状態を元気にしていくことも大切です。
その元気にする源になるのが、やはり栄養を活かせる体づくりにあります
そのため、皆さんが体の機能を活かせない栄養不足になっていては、せっかくの漢方薬も体に取り入れられないこともあります。
日々の生活習慣の見直しもしていきましょう。