飛行機の暗窓から眼下に見えるひとつ一つの灯りは増え やがて消え、そしてまた灯りの集まりが見えたと思ったら また消える 

僕が木内と話して居たのは

表裏の狭間の事だったのかも知れない 
 
音は何も聴こえない 
 
 
木内と図書館に入ると、出遅れた僕の前で音も無く自動扉が閉まる 
 
あの時の木内が振り返って見せた笑顔は何だったのだろう 
 
自動ドアと木内の笑顔から 一歩後ろに下がり
また前に一歩進むと自動ドアはまた音も無く開いた 
 
木内とエアコンの聴いた何の音楽かは解らないが微かに聴こえるクラシックが流れる館内に歩みを進めた 
 
正面に居た 髭を綺麗に整えた細い初老の男性が本の表紙を見て、貸し出し日か何かを手元のノートに書き写しながら 老眼鏡の上から
僕と木内を覗いた 
 
僕はこんな時間に子供2人が図書館に来た事を咎めらたり、学校に連絡されるのかとヒヤヒヤしたが 初老の男性はまた本に眼を落とした 
 
隣では ショートカットの女性が男性と同じ様な作業をしているが僕達には目もくれず作業を進めて居た。

書士であろう二人を横目に通過した時
僕は安堵した 木内は僕の遥か先を歩く 
 
 
いつだってそうだ 君は先にいってしまう 
 
 
木内は木内で本を探しに行ったのだろうと
僕は僕で どんな順番に、どんか種類分けがされてるのか身長を遥かに超えた本棚の間をしばらく歩いた。 
 
知らないホームズや、ファーブル昆虫記、江戸川乱歩、他にも沢山の見慣れぬ本が沢山あったいつもと違う図書の匂い、床のカーペットの毛足は長く 幾何学模様が複雑に絡み合う深い茶だった 僕は一切の本を手に取ってカーペットの上に座り 本棚に寄り掛かりファーブル昆虫記のページをペラペラとめくった

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