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いったん、ここでは、産業医の業務について法令でどのように定められているのか確認したのち、労働衛生コンサルタントとの違いについて、説明します。労働衛生コンサルタントの業務については、下の「労働衛生コンサルタントとは、どのような資格なのか?」の記事を参照してください。


産業医にはどのような役割がありますか?

事業所は、法令で定める事業場の規模ごとに、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(健康管理等)を行わせなければなりません。産業医は、労働者の健康管理等について、衛生管理者に対して指導、または助言することができます。産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければなりません。

労働者の健康管理等とは、下記のものを指します。

  1. 健康診断の実施、その結果に基づく措置

  2. 長時間労働者に対する面接指導、その結果に基づく措置

  3. ストレスチェックと、高ストレス者への面接指導、その結果に基づく措置

  4. 作業環境の維持管理

  5. 作業管理

  6. 上記以外の労働者の健康管理

  7. 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置

  8. 衛生教育

  9. 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置


労働安全衛生法

第三章 安全衛生管理体制
(産業医等)
第十三条
 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。
 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
 事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

第十三条の二 事業者は、前条第一項の事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。
 前条第四項の規定は、前項に規定する者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる事業者について準用する。この場合において、同条第四項中「提供しなければ」とあるのは、「提供するように努めなければ」と読み替えるものとする。

第十三条の三 事業者は、産業医又は前条第一項に規定する者による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、産業医又は同項に規定する者が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない

労働安全衛生規則

(産業医及び産業歯科医の職務等)
第十四条
 法第十三条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
 法第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項に規定する面接指導並びに法第六十六条の九に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
 法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第三項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
 作業環境の維持管理に関すること。
 作業の管理に関すること。
 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
 衛生教育に関すること。
 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

 法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者
 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

 産業医は、第一項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。

 事業者は、産業医が法第十三条第五項の規定による勧告をしたこと又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない

 事業者は、令第二十二条第三項の業務に常時五十人以上の労働者を従事させる事業場については、第一項各号に掲げる事項のうち当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。

 前項の事業場の労働者に対して法第六十六条第三項の健康診断を行なつた歯科医師は、当該事業場の事業者又は総括安全衛生管理者に対し、当該労働者の健康障害(歯又はその支持組織に関するものに限る。)を防止するため必要な事項を勧告することができる。

 産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

(産業医に対する情報の提供)
第十四条の二
 法第十三条第四項の厚生労働省令で定める情報は、次に掲げる情報とする。
 法第六十六条の五第一項、第六十六条の八第五項(法第六十六条の八の二第二項又は第六十六条の八の四第二項において読み替えて準用する場合を含む。)又は第六十六条の十第六項の規定により既に講じた措置又は講じようとする措置の内容に関する情報(これらの措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)
 第五十二条の二第一項、第五十二条の七の二第一項又は第五十二条の七の四第一項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報
 前二号に掲げるもののほか、労働者の業務に関する情報であつて産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの

 法第十三条第四項の規定による情報の提供は、次の各号に掲げる情報の区分に応じ、当該各号に定めるところにより行うものとする。
 前項第一号に掲げる情報 法第六十六条の四、第六十六条の八第四項(法第六十六条の八の二第二項又は第六十六条の八の四第二項において準用する場合を含む。)又は第六十六条の十第五項の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取を行つた後、遅滞なく提供すること。
 前項第二号に掲げる情報 第五十二条の二第二項(第五十二条の七の二第二項又は第五十二条の七の四第二項において準用する場合を含む。)の規定により同号の超えた時間の算定を行つた後、速やかに提供すること。
 前項第三号に掲げる情報 産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに提供すること。

(産業医による勧告等)
第十四条の三
 産業医は、法第十三条第五項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の内容について、事業者の意見を求めるものとする

 事業者は、法第十三条第五項の勧告を受けたときは、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
 当該勧告の内容
 当該勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)

 法第十三条第六項の規定による報告は、同条第五項の勧告を受けた後遅滞なく行うものとする。

 法第十三条第六項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
 当該勧告の内容
 当該勧告を踏まえて講じた措置又は講じようとする措置の内容(措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)

(産業医に対する権限の付与等)
第十四条の四
 事業者は、産業医に対し、第十四条第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。

 前項の権限には、第十四条第一項各号に掲げる事項に係る次に掲げる事項に関する権限が含まれるものとする。
 事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること。
 第十四条第一項各号に掲げる事項を実施するために必要な情報を労働者から収集すること。
 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること。

(産業医の定期巡視)
第十五条
 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
 第十一条第一項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果
 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であつて、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの


産業医と、労働衛生コンサルタントはどう違いますか?

産業医は、労働者の健康管理等の知識があると認められた医師が、事業者に選任され、包括的に労働者の健康管理等を行い、中立的な立場で、衛生管理者に対して助言、指導を行います。また、労働者の健康を確保するうえで必要があれば、事業者に勧告をすることができます。一方、労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタント試験に合格し、登録されたもので、必ずしも医師とは限りません。企業からの依頼で、衛生についての診断およびこれに基づく指導を行うことが業務になります。産業医よりもより専門的で、独立した立場から、案件ごとに依頼を引き受けることになります。

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