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化学物質のリスクアセスメントはどのような手順で行いますか?

平成28年6月1日、労働安全衛生法が改正され、SDS交付義務の対象となる物質(※平成30年3月1日時点で673物質)について事業場におけるリスクアセスメントが義務付けれらました。
業種、事業場規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場が対象となります。
製造業、建設業だけでなく、清掃業、卸売・小売業、飲食店、医療・福祉業など、さまざまな業種で化学物質を含む製品が使われており、労働災害のリスクがあります。
労働災害低減のため、義務付けられている対象物質のみならず、対象物質に当たらない場合でも、リスクアセスメントを行うよう努めましょう。

実施体制等

リスクアセスメント及びその結果に基づく措置は、次の体制で実施する必要があります。また、安全衛生委員会の活用等を通じ、労働者を参画させなければなりません。

統括安全衛生管理者等(統括管理)
安全管理者、衛生管理者等(実施の管理)
化学物質管理者(技術的事項を実施)
化学物質等、化学物質等に係る機械設備等に係る専門知識を有する者

実施時期

リスクアセスメントは、事業場におけるリスクに変化が生じ、又は生ずるおそれがあるときに、リスク低減措置に必要となる時間を十分確保した上で実施します。

 化学物質等に係る建設物を設置し、移転し、更し、又は解体するとき
 化学設備等に係る設備を新規に採用し、又は変更するとき
 化学物質等である原材料を新規に採用し、又は変更するとき
 化学設備等に係る作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき

危険性または有害性をどうやって特定しますか?

化学物質等による危険性又は有害性は、作業標準等に基づき、特定するために必要な単位で作業を洗い出した上で、「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」で示されている危険性又は有害性の分類等に則して、各作業ごとに特定します。

リスクの見積もり

● リスク低減の優先度を決定するため、危険性又は有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度とそれらの発生の可能性の度合の両者を考慮してリスクを見積ります。
● ただし、化学物質等による疾病は、化学物質等の有害性の度合及びばく露の量のそれぞれを考慮して見積ることができます。『ばく露濃度等』を測定して『ばく露限界』と比較し、『ばく露限界』を超えている場合には、
リスクが許容範囲を超えていると判断します。

ばく露限界とは何ですか?

○『ばく露濃度等』は、個人ばく露測定、作業環境測定、バイオロジカルモニタリング等から把握しますが、比較においては、測定値の精度やばらつきの存在、作業状況の変化等についても考慮する必要があります。
○『ばく露限界』には、日本産業衛生学会の「許容濃度」やACGIH(米国産業衛生専門家会議)の「TLV-TWA」,「TLV-STEL」等があり、例えば「許容濃度」は、「労働者が1日8時間、週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質にばく露された場合に、当該有害物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度」とされています。評価に当たってはこれらの「ばく露限界」の意義をよく理解しておくことが必要です。

コントロールバンディングとは何ですか?

化学物質の健康有害性についての簡易なリスクアセスメント手法として、「コントロール・バンディング」があります。 これは、ILO(国際労働機関)が、開発途上国の中小企業を対象に、有害性のある化学物質から労働者の健康を保護するために、簡単で実用的なリスクアセスメント手法を取り入れて開発した化学物質の管理手法です。

厚生労働省版コントロール・バンディングは、この手法をわが国で簡易的に利用できるようにウェブシステムとして開発されたものです。
【液体または粉体を扱う作業(鉱物性粉じん、金属粉じん等を生ずる作業を除く。)】と【鉱物性粉じん、金属粉じん等の生ずる作業】の2つのシステムがあり、次のような特徴があります。

特徴
労働者の化学物質へのばく露濃度等を測定しなくても使用できる。
許容濃度等、化学物質のばく露限界値がなくても使用できる(粉じん等が生ずる作業は値設定が必要)。化学物質の有害性情報は必要。

手法
作業条件等の必要な情報を入力すると、化学物質の有害性とばく露情報の組み合わせに基づいてリスクを評価し、必要な管理対策の区分(バンド)が示される。バンドに応じた実施すべき対策及び参考となる対策シートが得られる。

注意点
得られる対策シートはあくまで安全衛生対策の参考としていただく材料です。労働安全衛生法令によりばく露防止対策が規定されている場合は、それに基づいた対策を実施することが必要です。

CREATE-SIMPLEとは何ですか?

CREATE-SIMPLE(Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplaces;クリエイト・シンプル)は、サービス業などを含め、あらゆる業種にむけた簡単な化学物質リスクアセスメントツールです。

ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較する方法となっています。英国安全衛生庁(HSE)が作成した、HSE COSHH essentialsなどに基づく、リスクアセスメント手法における考え方を踏まえた、大量(数kL、数トン)の化学物質取扱事業者から極少量(数ml、数g)の化学物質を取扱う事業者まで、業種を問わず幅広い事業者が使用可能な簡易なリスクアセスメント支援ツールです。

また新機能として、米国NIOSHの手法などを踏まえたばく露限界値から算出した経皮ばく露限界値と取扱条件等から算出した経皮吸収量を比較する方法により、経皮吸収による有害性のリスクを見積もるとともに、GHS区分情報と取扱条件(着火源の有無等)から取扱物質の危険性についてもリスクを見積もる機能を追加した画期的な簡易なリスクアセスメント支援ツールです。

特徴
労働者の化学物質へのばく露濃度等を測定しなくても使用できる。
大量(数kL、数トン)から極少量(数mL、数g)まで幅広い化学物質取扱量に対応
選択肢から回答を選ぶだけで、簡単にリスクを見積もることが可能。
リスク低減措置の検討も支援しており、どこを改善すればリスクが下がるかが確認可能。
厚生労働省版コントロール・バンディングでは考慮していない作業条件(換気や作業時間、作業頻度など)の効果も反映。
吸入による有害性リスクだけではなく、経皮吸収による有害性リスクや危険性についてもリスクの見積もりが可能。

手法
(有害性)英国HSE COSSH essentialや米国NIOSH 「A Strategy for Assigning New NIOSH Skin Notations」(2009)などを踏まえた吸入及び経皮吸収による有害性リスクを見積もる手法。
(危険性)危険性に関するGHS区分情報と取扱条件(着火源の有無等)を踏まえて危険性リスクを見積もる手法。
ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較する方法。

注意点
短時間のばく露による健康影響は対象外。
何らかの理由によりばく露が大きくなるような作業については、リスクを過小に見積る可能性がある。
危険性については、プロセスについては対象外としており、化学物質が潜在的に有する危険性に気づくことを主目的にしているため、プロセスで用いる場合などは、労働安全生成総合研究所が作成した「安衛研 リスクアセスメント等実施支援ツール」などをご利用ください。

生物学的モニタリングとは何ですか?

労働衛生管理におけるモニタリングとサーベイランスの位置づけ

作業環境許容濃度TLV (Threshold Limit Value )は、ほとんどすべての作業者が毎日繰り返し暴露しても、有害な健康影響が現れないと考えられる化学物質の気中濃度です。
生物学的暴露指標(BEI)とは、体内に取り込まれた化学物質の量についての指標です。米国ACGIHの勧告値であり、体外的なばく露に対する勧告値であるTLV-TWA(時間加重平均)の濃度に対応する生体試料中の測定対象の濃度です。

有機溶剤などの有害物にばく露すると、体内に取り込まれ、体内で化学的な変化(代謝)を受けてほとんどが尿などになって排泄されますが、一部が体内に蓄積されます。したがって、体内に摂取された有害物の量と、排泄された量との関係が明らかな場合は、排泄された物質の量を分析することにより、体内に蓄積された有害物の量をある程度推定することができます。このような方法により、有害物へのばく露の程度を把握する手法を生物学的モニタリングといいます。

生物学的モニタリングは、体内に摂取された有害物の量と排泄された物質の量との関係が分かっている物質であれば行うことができますが、特殊健康診断においては有機溶剤8物質、金属1物質についてその検査が義務付けられています。

なお、生物学的モニタリングは、作業者の血液、尿などに含まれる化学物質の代謝物等を分析し、その値によってばく露量の程度を評価することなので、作業者が健康かどうか直接評価するものではありません。

リスク低減措置の検討及び実施

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