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TEDxKobe2024/応募から当日まで【無料投稿】

 こんにちは武藤北斗です。このnoteはパプアニューギニア海産代表武藤北斗が人間関係や組織作りについて毎週金曜に投稿しています。

 今回は特別編で、今週登壇したTEDxKobe(テデックスコウベ)について、応募から当日までをかなり細かく報告します。

 これからTEDxKobeのオーディションを受ける方には参考になると思いますが、あくまで私の場合という事であり、これをやらなければいけないわけではないし、私はスイッチが入るとストイックな人間だということは頭の片隅に置きながら読んでみてください。

 手帳に書き残していたものやチャットを遡ってできる限りその時の内容や気持ちを再現しております。読みにくい部分もあると思いますが、リアルな感じをお楽しみください。逆に写真はあまり撮っていませんので後で公式の写真がでてきたら追加していきます。

このnoteはパプアニューギニア海産代表武藤北斗が人間関係や組織作りについて毎週金曜に投稿しています。

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*各投稿は1週間は無料。その後は有料マガジン『争わない組織が答えだった』に移行。購読者になって頂くと過去投稿も読み放題になります。



*voicyにて解説


2024年8月7日(水)本番137日前 応募フォーム送信

 TEDxに登壇したいという想いはずっとありましたが、オーディションしている地域があるとは知りませんでした。そんなある日突然Facebookの広告で僕の目の前に飛び込んできたのが、TEDxKobeのオーディション募集でした。自分から応募できることに歓喜し、締め切りが8月18日(日)だったので急いで書き上げ翌日には送信したはずです。
 書いたのは自己紹介400字、アイディアのタイトル、広めたいアイディア400字、アイディアをみつけた背景800字、あとは名前とかそういった類のものだったはず。この時はパプアニューギニア海産の働き方の全体像を書いていて、タイトルも『争わない組織が答えだった』でした。これは今後ミーティングの中で大きく変更していくことになります。


8月19日 本番125日前 一次審査通過メール

 自分達がやっていることに自信は持っているものの、書類が通ってまずは一安心。そして1週間後に2次審査のプレゼンがあることは分かっていたので用意を始めますが、この時は講演会で関心の高い内容をいくつか説明するような感覚だったので特別な用意はあまりせず2次審査を迎える。

8月25日 本番119日前 2次審査

神戸某所で10分プレゼン&10分質疑。11名が書類審査を通過していたはず。応募総数を聞きましたがそれを事前審査し、さらにこの11名から絞っていくのは大変な労力だと思います。だからTEDxのオーディションはあまり聞かないのかもしれません。
 その年によって通過する人数は様々らしく、たしか今年は多いような話をされていたように思います。オーディションですが、機材もしっかり用意しスタッフさんも30名位いてビックリ。この後一緒に駆け抜けるスピーカーともここで初対面するわけですが、誰が残るのか全く分からない状況、かつ私は人見知り炸裂してほとんど話はせず。感じ悪く見えてたらごめんなさい。
 記憶では私が中央列の後ろの方、左列の一番前が平林さん、その後ろが大西さん、僕の左後ろに手塚さん、そして後からきた小池さんが僕の真後ろだった気がします。ようするに当日8名のうちこの5人がオーディションから登壇にいたったメンバーなんです。
 そしてその日のプレゼンですが私は大失敗しており、10分なんてまったく収まらず、割愛しまくりながら15分ほど話してしまう。ただ質疑はすごく活発で、スタッフさんだけでなく、さすがここにくるスピーカー候補はガンガン質問しまくりでメチャ面白かった。
 私の勝手な想像ですがこの日はうまく話せるかではなく、私の中にコアアイディアとなるものがあるかどうか、そしてチームとして進めていける人間かどうかを見定められていたのかなと思います。

8月28日 本番116日前 2次審査通過メール

2次審査通過がメールにて届く。そして私を支えてくれるスタッフさんも伝えられる。こんなにしっかりチームを組んで進めていくのだと驚きながらも、うちの働き方のことを話し合えると思うと何だかワクワクしている。
 ただこの時点ではまだ登壇は決定しておらず、あくまでこのチームでトークの内容(スクリプト)を作っていき、それがTEDxKobeとしてOKであれば登壇が決まるというなかなか厳しいルール。そして実際に途中で抜けられた方もいます。

8月31日 本番113日前 第1回ZOOMミーティング

第1回のミーティングは土曜の15時に設定。自分と同年代の方がスタッフさんだと思いこんでいたが、なんと主担当は高校1年生のWさんで、他にも学生さんがいてとても若いチーム。ちょっとドキドキです。実は以前、学生さんにうちの働き方のことを話したら、働いた経験がないからまったく話を理解してもらえず困ったことがありました。だからスタッフさん4名のうち2名が学生さんというのは、正直ちょっと不安には思ったんですが、ただ今振り返るとこれがとてもよかった。いろんな世代の感性から意見がもらえるし、何よりただの会社や働き方の説明にとどまらず、もっと僕の心の奥にある人間的な部分を掘り出してくれたからです。
 その日のメモにはこんなことが書いてありました。『今回学生さんが手を挙げてくれた。これまで社会人に伝えようとしすぎることで、実は伝わっていなかったのかも。もっと核心の部分を伝える必要があるのでは。まだ働いてない学生さんにも通じるものがあるはず。ならば彼らに伝えるものを作る事こそTEDxに出る意味なのでは』
 そしてここからなんと毎週のミーティングが始まり、登壇当日まで途切れることなく続きます。平均して1時間半-2時間くらいのミーティングでしたが毎週だったので終わった今はなんだか木曜の夜がぽっかり寂しい気もしています。
 メールでのやりとりは大変なのでメッセンジャーグループで共有を開始。面白かったのは若い世代はあまりfacebookを使っておらずSNSでも世代が分かれるなどいろんな気づきあり。
 そしてこの日から『コアアイディア』という言葉を死ぬほど聞くことになります。あまり馴染みのない言葉でしたが、ようするに私の話しの核になるキーワードのようなもので、聴いてくれた方に伝えたいものですね。分かりやすく、かつ端的に。これを探すのが本当に大変でしたが、結果的にはこの日に話していたことが実際のコアアイディアに落ち着きます。私も今回振り返ってみて、そうだったんだと驚きました。
 でもこの先いろんなことを考え議論したことが無駄なわけではなく、議論して思考を深めたうえで戻ってきたことに意味があったし、言葉は一緒でも中身はグッと濃くてはっきりしたものになりました。
 TED代表クリス・アンダーソンの『TED TALKS スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド』が課題図書となる。


9月8日 本番105日前 第2回ミーティング

課題図書は1週間で読み終えてミーティングに臨む。自分なりの決意の表れとして急いで読みました。これはとても重要だったと思っていて、TEDは講演会ではないのだという意識が私の中でハッキリ形作られたことは、チームの一員になるために必要なことだったと思う。この意識がスピーカーにないと、きっとちぐはぐな議論になってしまうだろうし、スタッフさんの話を軽く受け止めて我を出しすぎていた気がする。良くも悪くもこれはTEDなんだ、もし講演をしたいなら、自分の宣伝をしたいなら別の場所に行くべきだと知ることは重要。
 TEDxKobeからのメールなどを読み返すと、もちろんそのことはしっかり書いてあるのだけど、やはりスピーカーというのは我が強くて自分を表現したくてたまらない人が多いから、ついつい読み飛ばしたり、軽く考えてしまうのだと思う。だからミーティングの早い段階でこの本を読み、TEDやTEDxを理解することは極めて重要。
ミーティングはすでに苦しまないということにフォーカスを当てながらの議論をしているっぽい(ノートを振り返ると)。9月いっぱいはまずはコアアイディアを探っていく方針。

9月16日 本番97日前 ライフヒストリーから探り始める

何回かミーティングを繰り返す中で、そもそもなぜ私がこんな考え方をするのか原体験みたいなものを探っていく必要があるのではとライフヒストリーを探り始め、幼少期や学生時代のことまで遡る。
 同時にどの世代でも共感してもらえるトークにすることを心がけ、職場の話というより人間としての生き方や考え方などをどう伝えていくかが主題に。この頃から『苦しみ』というのはキーワードになっており、スタッフさんそれぞれの苦しみの感じ方について教えてもらったり、私が考えている苦しみのイメージがちょっと一般の人が考えるものと違うのではないかなどの議論が始まる。それが結果的に内面にある苦しみと、外側にある苦しみという考え方の土台になっていく。


9月24日 本番89日前 他のコアアイディアを探り始める

 一度コアアイディアをまっさらの状態から考え始める。しかし迷走する。でてきてたのは『信じる前にルールを作る』『代弁できるほど単純じゃない』『人を受け入れるのは自分が楽になるから』などなど。ただ前半のこの迷走も必要な工程だと思っていて、後半でいろいろ不安になってくる時に議論した結果が今なんだと思えることはチームとしてまとまりが出てくる。

9月28日 本番85日前 スクリプトちょっと書いてみた

コアアイディアばかり考えすぎて疲れてきたのでちょっと気分転換に初のスクリプトを書いてみた。この時はまだ笑いの要素をふんだんに入れようと思っていた私は当日のトークを聞いた人は驚くであろう出だしを書いていた。恥ずかしいけど、笑えるので載せます。

『私は小さい頃から整理整頓が苦手でした。大学生になって一人暮らしを始め整理整頓どころか掃除や洗濯まで嫌いだと分かりました。洗濯が億劫になった私はパンツを表裏2回履くようになりました。でも裏返したらそれがズボンに触れてしまうことに気づき私は一時期パンツを履くのをやめてしまいました。そんな私ももう48歳。今は水産工場の工場長をしています。』

9月29日 本番84日前 スタッフさん2名がさらにチームに合流

2名合流してもらって6名になりましたが、他にも担当があったり家庭のことなどもあるので4名ほどがチームとして動いている感じです。

9月30日 本番83日前 スタッフさん側からコアアイディア案

これまで重ねてきた議論や私の取材記事などをもとに、スタッフさんからコアアイディアを提案してもらい、それに対しての私の率直な感想を述べていく。これもとても大事だったと思っていて、お互いの意識の違いや視点の違いがハッキリしたように思います。やはり意見は出し合って議論することで深まります。私のストーリーではありますが、あくまでスクリプト(文章)はチームとして作っているんです。


10月2日 本番81日前 マインドマップで視覚的に

どうも話がとっちらかってる感じはあったのですが、そこですかさず視覚的にもまとめるあたりが流石です。マインドマップを作ることでまたいろいろと思考がハッキリし始める。話の行ったり来たりが減っていく。


10月7日 本番76日前 トークスクリプトをgoogleドキュメントで共有

2か月前リハーサルにむけてトークスクリプトをgoogleドキュメントで共有を始める。私が書いたものにコメントなど入れてもらい修正していく。毎日少しづつ修正して共有。とにかく2か月前リハではコアアイディアをしっかり届けることが大事で、そこを意識しての構成作り。カンペはOKなのでリラックスしている状態。トークスクリプト分析も始まる


10月11日 本番72日前 第7回ミーティング

2日後が2か月前リハーサルだけどまだコアアイディアが固まりきらず。ただ苦しさがやっぱりキーワードにはなっており、『内面は変えられないとか』『苦しさを取り除いてあげられるという考えがエゴ』など最終的なスクリプトの土台になる言葉も出始めている。リハーサルでの他のスタッフさんからの感想を参考にしながらまた議論していこうという感じ。

メモは手書き好き


10月13日 本番70日前 2ヶ月前リハ

当日と同じオルビスホールでしかも装飾関係もしっかりと用意していて緊張感あふれる状態。もちろん赤丸カーペットもある。緊張感はあるもののカンペOKというか、パソコンの画面を読んでいるに近い状態なので緊張はほぼゼロ。翌日のチャットにはメチャ気持ちよく話したと書いていて、実際にそんな感じだったと思います。この頃はまだ講演会で話すみたいな感じが抜けていなかったように思います。
 たぶんですが2つ理由があって、まず一つは言うまでもなくカンペがあったこと。安心感があります。そしてもう一つは手にパソコンを持っていたこと。これはカンペという意味ではなく、自分の体を客席から遮る盾のような意味合いを持っていた気がするんです。
 本番では手にポインターがあるだけで、マイクもイヤホンです。机や椅子や演題など自分を隠すものも一切ありません。赤丸カーペットに1人で立ってスポットライトは自分にだけ向けられます。こうなってくるとマイクスタンドでもいいから自分の前に何かものがあってほしいと思ってくるんです。手を前にもってくるか、上げるか下げるか、とにかく一挙手一投足をさらけ出している状態というのは予想以上に重圧がかかることを私はまだ理解していなかったんです。

この日の写真、これしかない


10月15日 本番68日前 登壇決定のお知らせ

2か月前リハーサルでの内容を評価して頂くことができ、ここではじめて登壇が確定。スクリプトはここからしっかり作りこんでいきますが、まずはコアアイディアや構成をある程度評価してもらえたのではと思っています(理由は分からないので私の憶測です)。そしてこの時点でまだ確定していない方もいて、ミーティングを繰り返したからといって決定するわけではない厳しい面も感じた日。

10月19日 本番64日前 第8回ミーティング

11月24日に行う1ヶ月前リハーサルはカンペ無しであることを告げられる。スライドもある程度完成させる必要があり緊張感が増してくる。ただこの時点では2週間あれば覚えるのは余裕と思っていた。というよりも、忘れてもうまくカバーしたり、少し先から話せば大丈夫でしょという甘い考えというか過信している部分があった。

10月23日 本番60日前

スクリプトのバージョン7を読んで時間をはかる。12分。この頃の僕は12分位で終わらせるイメージがあって、とにかく長くしたくなかった。結果的に16分を超す内容になったわけですが。そしてここからはスマホで音声をとってグループ内で共有を始める。

10月27日 本番56日前 スピーカーとしてH Pで発表

スピーカーとしてホームページなどで発表が始まる。SNSなどでも反響が大きい。やはりTEDxへの関心は高いと感じる。気が引き締まる。でもまだ気持ちに余裕がある頃。


10月29日 本番54日前

  ラストがまとまらず苦しんでいる様子。

10月31日 本番52日前 第10回ミーティング

会場の皆さんに掃除が好きか嫌いか挙手してもらうスクリプトを作っていたが、終わった後にそこにイメージをもって行かれすぎてコアアイディアが薄まらないかを議論。結果外すことになる。このあたりからトークの全てのポイントをどうコアアイディアへの伏線や繋がりにするかという意識が強くなってきた気がする。

11月4日 本番48日前 チャットにて

スライドに使うイラストのイメージをチャットで共有。当日にも7枚ほど使っているイラストは実はトークの中でも出てくる漫画家を目指しているパートさんが書いたもの。どんなタッチの絵なのかを確認してもらう。

11月6日 本番46日前 

 バージョン9のスクリプトを書くも、まだラストが未定のままでもう少し時間をかける予定。また毎週ミーティングをすることで当然ながら新しいアイディアが出てくるが、それを入れると構成が変わりすぎることに悩む。ガツンと入れて大きく変更してしまうより、細かく散りばめて入れていくイメージがいいかもしれないと感じ始める。

11月7日 本番45日前 第11回ミーティング

前日にちりばめるなんて言いながら、苦しみというキーワードをもっと解像度あげるためにガラッと構成をかえ、翌日にはバージョン10を提出。というよりもミーティング終了後に、みんなとの議論を思い返しながらすぐに書いてみた。ミーティング直後にスクリプトをいじると大幅変更に向かいやすいので一長一短あり。

11月11日 本番41日前

構成をガラッと変えたのは評判悪く、大枠は元に戻しつつ改良は加えていく。今振り返るとこの頃はどうしたらいいか若干パニック状態だった気がする。

11月13日 本番39日前

長女(二十歳前後)に内容を見てもらっていたので意見を聞くと、ズバッと削除したところを戻した方がよいとの意見。次のミーティングでスタッフさんも同意見だったので、要するに僕だけがさまよっていた。家族の意見も結構大事に考えた。

11月14日 本番38日前 第12回ミーティング

この頃も私が言っている苦しみとは何なのかがどうも伝わりきらないところが議題になる。そこでスタッフみんなの抱える内面の苦しみを聞いたりしている。人にとって苦しみとは何か、そこの共有をどうするかがずっと課題。

11月17日 本番35日前

この先の変更は1ヶ月前リハーサル(1週間後)の後にして、とりあえず覚え始めることにした。1週間あれば覚えられると思っているところが今考えると怖いけど、前にも書いた通り忘れてもなんとか自分でリカバーできると過信している。

11月20日 本番32日前

暗記し初めることで、どうも文章が固いことに気づく。これだと作文を読んでいる感じになるので、話し言葉に変えていきたたいと思い始める。でも1か月前リハーサルの4日前である。遅い。。。

11月23日(土)(1か月前リハーサル前日)
本番29日前 第14回ミーティング

スライドが全然進んでおらず急遽前日だけどミーティングすることになる。お昼前後に決まり、夕方にミーティング。暗記するためにこの日はフリーにしていたので、1日かけて暗記に時間を費やす。でも前日に関わらず相変わらず気になるところをチョコチョコ変えており、これが翌日の大失敗に繋がる。
 ただこの時点で考えていたラストは最後まで使うことになる。
 そしてこのあたりから長女を相手に何も見ずに話す練習を始める。たぶん当日まで50回以上彼女にはトークを聞いてもらったのではないだろうか。時間をはかってもらったり、内容の修正も議論したり、なかなか楽しい時間でもあった。

11月24日(日)本番28日前 1ヶ月前リハ

忘れてしまっても、トークを繋ぐうちに思い出すなんて楽観的に考えながらも、やはりきちんと覚えていないので不安を抱えつつ家を出る。会場まで電車で1時間位なのでぶつぶつと暗記しながら向かう。1時間前くらいに着いたけど、会場に行けばスタッフさんやスピーカー仲間と談笑しながら待つことになる。そんな余裕はなかったので近くのカフェで一人でぶつぶつ言いながら練習を続け10分前に会場入り。
 座った席の左前に小池陽人さんが座っているが話しかける余裕もない。ここにきてなぜか猛烈にプレッシャーを感じ始めていたもよう。ちなみに会場はオービスホール4階の会議室。スタッフさん総勢30~40名位の視線が集まる。私の順番は小池さんの次で2番目。
 小池さんが余裕でリハーサルを終えて私の出番。赤丸カーペットの真ん中に立った時、あーこれはいつもと何か違うと感じる。カンペも演題も何もなく視線が集まる。真っ白になってしまうのではという恐怖に襲われながら話し始める。1度軽く白くなる。そこは何とかごまかしてトークを続ける。ところが一番大事なあたりで、完全に真っ白になった。後から映像をみると時間は5-10秒くらいなんだけど、自分には30秒くらいの長い時間に感じた。 
 じゃあ話を少し飛ばせばいい、そこに繋げる話を少しすればいい。そう思ったのだがなんと、完全に真っ白になると一部分が思い出せないのではなく、その先ほぼ全部が真っ白になってしまう。単純に焦ってパニックになっているだけなんだが、分かっていてもどうにもならない。仕方なくカンペを見させてもらう。屈辱である。 
 そして帰りながらもう絶対にこんなことを繰り返すわけにはいかないし、1か月後の本番が楽しみから恐怖に変わってしまった。とにかくスクリプトの構成を固めることを決心し、家に帰ってからでは遅いと、帰りの電車の中ですでにパソコンを開いてキーボードを叩いていた。

11月25日(1か月前リハ翌日)本番27日前

 昨日のことがあるし、とにかく早くスクリプトを固めたくて、今日か明日にミーティングしたいとお願いする。ちなみに飛んでしまったのはリハーサル前日にガラッと変えた部分だった。だから本番は直前に変えないように、1日も早くスクリプトを完成させたいという気持ちがとても強くなっていた。翌日にミーティングを設定。

11月26日 本番26日前 第15回ミーティング 

 ミーティング前までに新しいスクリプトを仕上げるが、先日のリハーサルでもらった意見を意識しすぎ、かなりさ迷い気味。ミーティングでいろんな意見をもらい、元に戻す部分と追加の部分をミーティング後に自分なりに考えまくる。

11月27日 本番25日前 チャット

考えまくった結果、思ったよりスリムなスクリプトに作り直す。結構冷静に書いていて、今読み返してみると、この時点でほぼ最終系にもってきている様子。焦って適当なものではなく、かなり集中して思考を巡らせていたのでこの数日はかなり重要だった気がする。

11月29日 本番23日前 第16回ミーティング

まだスライドが全くできてなくて、仮で並べてみるも枚数にすると最終系の倍くらいある状態。イラストはどんどん進めてもらうことでスタッフさんも了解。スライド全体の議論は12日まで行って、13日完成が目標と設定。
 もうこのあたりからはスクリプトの暗記に入っていたと記憶している。とにかく練習時間を作らねばと、出勤時に車でニュースや音楽を聴くのを一時中断(片道約35分)してスクリプトの声出しをし、さらには英語の勉強を1か月封印してその時間を練習に費やした。1か月前あたりからの私のなかなかストイックな練習方法はこちらにまとめています(有料マガジン内のため途中までしか読めません、ごめんなさい)。


11月30日 本番22日前

スライドをどうするかの議論のため、スクリプトを読みながらスライドをめくる様子を1人ZOOMで録画し動画で共有。感情は入っていない状態で、まだ読んでいるだけ。でも動画を撮るだけでも緊張感は高まるし、スクリプトを人前で話すことに慣れるという意味では重要。

12月5日 本番17日前 第17回ミーティング

ここまでくるとスクリプトの内容を議論することはあまりなくスライドをどうするかのみ。枚数が多いことが気になっているスタッフさんが多いので減らす方向で。特にコアアイディアと離れているところは話しだけで十分ではないかとかなり削った。 
 スクリプトの細かな変更は自分では行っておりそれを共有はしていく。

12月7日 本番15日前 チャット

スライドの写真選定など最終議論はチャットで。スライドをめくるタイミングにも意見をもらうため動画も送り続けている。私はどうもめくるのが遅すぎるようで何度かその指摘をもらった。どうしても自分の言葉を先に持って来たくて効果的な使い方ができていない。
 このあたりから文章を見ずにトークしている動画を送っているのですこしずつ感情の入ったトークになり始める。そして話している様子を自分で見ることで、顔の動きや手の位置などを修正していくことも意識。できるかは別として意識。

12月9日(月)本番13日前

本番まで禁酒に入る!これで夜の練習にも気合が入るし体調もよくなるはずである。代表の舟橋さんはもっと前から禁酒に入っていたので、なんとなく同じ船にのったようで気分はよかった。

12月10日 本番12日前

 とにかく当日のいろんな事に慣れている状態を作りたかったので、入場する時のジングル(曲)をもらう。曲のどのタイミングで入場するかを聞いて、家で練習する時は必ずジングルを聞き、そのタイミングで部屋を歩いたのちに家族に拍手をしてもらってから話したり、とにかくいろいろやり始めた。

 練習の中で気づくが大きな音や光などがあると一気に集中力が切れたり、内容が飛んでしまう。あとぶつぶつ言うより、しっかり声を出した方が飛びにくい。いろんなことに気づく。
 当日はセッションが始まると出入りができなくなりますが、あれは本当に重要です。たぶん人が歩いたり出入りすることで外の音や光が入ってきたらかなり登壇者の妨げになるはずです。

12月12日 本番10日前 第18回ミーティング

スライドを極限まで減らし完成。最終的に29枚。写真5枚、イラスト6枚、文字5枚、図8枚、あとは合間に真っ黒が数枚。
 そしてここにきてどうしてもラスト前の大事な部分のスクリプトに違和感があることを話し、10日前に変えるのは危険と思いながらも議論する。『人を受け入れることの本質』のところです。

12月13日 本番9日前 チャット

ずるずると考え続けるわけにはいかないので一晩かけて自分なりに納得のいく流れを考え、奇跡的にとてもいい表現を思いつく。微調整を加えながらとても良くなったとチャット上で盛り上がる。

12月14日 本番8日前 チャット

最後の部分の最終調整。言葉の選定を慎重に行う。そして本当に最終的なスクリプトの完成!!ということで本番8日前がスクリプトの本当の完成日ということになります。
 ただこの最後まで考えた部分は数行分くらいなので、それ以外はほぼ3週間前には決まっていて、そこから覚え始めている状態です。スクリプトをきちっとおぼえて当日に臨むタイプの人であれば、1か月前には大枠を完成させ覚え始めることをお勧めします。

12月15日 本番7日前

日によって話すスピードにむらがあるので、練習の際に常に時間をはかり自分のスピード感覚を作る。当日は足元にタイマーがありますが、僕はそれを見たくなかったので(とにかく他に意識をもっていきたくない)、体というか感覚でスピードを叩きこもうとしていました。そしてちょっと高価でしたが、当日と同じポインター買ってそれを手に持ちながらの練習も始めました。
 1週間前でも完璧に話せるなんてことはなく、いつもどこかで止まってしまい思い出せず焦る日が続く。それでもとにかく毎日練習しかない。

12月19日 本番3日前 第19回最終ミーティング

 もうここまでくるとさすがにミーティングで議論することはありません。いや、無くはないけど変えてしまったら頭真っ白になる可能性が高いのでやめました。その代わりにはじめてミーティングで本番と同じようにトークをしました。特にミスはなく、家族以外では初めてきちんと感情を込めたトークを体感してもらいました。
 練習してきた自信がみなぎっていたと、本番への太鼓判を押して頂き、最後だと思うと寂しさを感じつつ最後にこの5か月のお礼を言って終了となりました。

初のチームの前で
最終ミーティングの最後


12月20日(金)本番2日前

本番の前々日ではありますが、前日リハーサルの前日ということもあり、有給休暇をとってしっかり体を休めつつ最後の丸暗記に一日を使う。トークを丸暗記と言うと残念がる人もいるのだけど、この1か月間だけでもたぶん300回以上は声に出したり読んだりして修正を繰り返したこのスクリプトは、きっと当日になんとなくサラッと出てきた言葉より大事なことが詰まっている気すらしています。一語一語に大きな意味があるんです。「生きるため」というのか「生きること」というのか、そんな小さなことまで熟議を重ねた大事な丸暗記なのです。
 最後のスライドはこの日の夜に出来上がる。

最後に仕上がってきたイラスト


12月21日 本番前日 前日リハーサル

 ちょっと勘違いして10時に到着。どうやら12時くらいでもよかった様子。リハーサルとはいえ当然ながらめちゃくちゃ緊張。何だったら前リハの方がスタッフさんだけなので、さあ明日のためにどれだけ取り組んできたか見せておくれ!みたいな雰囲気を勝手に想像しながらビビっていました。笑
 そして本番をイメージして1時間前には何をするか、30分前には何をするかと考えながら行動。会場に慣れるため、できるだけ会場内で時間を過ごす。邪魔にならない程度で舞台袖に立って、客席側を見て本番に見るであろう景色に慣れておく。あのへんを見て話そう、そんなことを意識しながら舞台袖でブツブツと練習を始め、途中からはスタッフさんが近くで何か作業していも気にせず声を出し始めていた(作業の邪魔にならないように)。
 そしてリハーサルでのトーク。会心のできだった。あまりにもうまくいきすぎて心配になった。何が起きてもこんな弱気なネガティブな自分は久しぶりだった。
 夕方には前夜祭があり、6時から8時まで。だけど、7時に失礼させてもらった。家でまだ練習する気でいたんです。なぜなら昨日有給をとって一日中練習していたから今日の出来が良かったのではと思い始めたんです。でも今日はリハーサルであまり練習をしていない。だったら明日は真っ白になってしまう可能性があるのではと不安に襲われていました。
 そして緊張のせいか、ホールがとても暑かったからか、どうも顔が火照っていて若干頭痛がする。帰りの電車では頭痛がひどくなってきて練習どころではなくなってしまう。焦るが電車でちょっと寝る。
 家に帰って一度だけ家族の前でトークして、やっぱり完璧。それだけは確認して布団に倒れこんだ。夜中にチョコチョコ目が覚めるがやはり頭痛があり心配である。

12月22日 当日 

 朝起きる。頭痛がひいていない、肩や首がパンパンで体調最悪である。これでお酒を止めていなかったらどうなっていたか考えるだけでも恐ろしい。これまで何度も緊張と酒のミックスで大失態をおこしたことがある。
 とは言え気持ちを切り替えてとにかく会場へ向かう。もう何年も薬なんて飲んでいないけど、念のために頭痛止めだけもって家を出る。電車の中で練習したいけどスマホを見るのがしんどい。でもスクリプトは頭の中に入っているから目をつむりながら電車でぶつぶつと練習する。周りの人は気持ち悪かっただろうと思う。1時間の電車で500mlの水を飲みほす、体調が悪い時のいつもの感じだ。
 会場につき主担当のWさんにだけ体調が悪いことを伝え、心配するといけないので他の人には黙っていた。ただ本番が近づいてくると今度は緊張の方が高まってきて、顔が火照って精神的にはとても不安定な状況。
 でもスタッフの皆さんと話したり、スピーカー仲間と話したり、いろんなことで少しづついつもの感じを取り戻しつつ、会場に来てくれた家族と話すことでリラックス。あと開演直前のこの時間もかなりリラックスできましたし、一つになった気がしました。

大体どこのTEDxでも同じかと思うのですが スピーカーさん同士とても仲良くなります。 お互い同士会った時間は1日にも満たない筈なのですが、、、 それは、多分、おそらく、なんとなく 何週間も何ヶ月もスタッフから「やり直し!」を出されながらも トークを作り上げた者同士の「戦友」的な何かなのかもしれませんね

Posted by TEDxKobe on Wednesday, December 25, 2024


 当日も昨日と同じルーティンにしたくて、舞台袖で邪魔にならない程度に1人でホールを見渡しながら練習したり、30分前には控え室で声を出して通しで練習したり(Wさんは私が何も言わなくても察して部屋を出てくれて、すご!!って思いました)、あと舞台袖に移動しての直前までは最初の10行くらいをとにかくぶつぶつ練習して、数分前にスマホをWさんに預けて完全にスタンバイ。ちなみに本番1時間前くらいは緊張のせいか頭痛はしてませんでした(薬は飲まず)。
 この時も主担当のWさんは超ナーバスな僕にあえて声をかけず、でも本当に直前に『これまでの武藤さんの練習量なら絶対大丈夫』だと優しく力強い言葉をもらい舞台へと向かいました。ありがとうございました。

当日登壇数分前


まとめ

当日、壇上にてスタッフさんの紹介

 正直なところ当日のトークに関してあまり記憶がないです。舞台袖で練習している時の風景が広がっているけれど、やはり客席に人がいると全然違う緊張感があり、飛ばないかとドキドキはしていました。
 ただ、話しながら右後ろにはFさん、左後ろにはWさん、右前(テック)にはMさん、左前(もしくは別部屋)にはMさん、そして客席にはOさん、会場の外からきっとYさんがと、チームのみんなのことをじんわりと感じていました。
 私は今回素敵なチームで駆け抜けたことをとても嬉しく、そして誇りに思っています。「チーム 理解しない受け入れる」本当に最高でしたし、このメンバーだったから作り上げることができたトークです。来年にはYOUTUBEにアップされると思います。この5か月の集大成と思って見てもらえると嬉しいです。

 最後にチームスタッフの皆さんはもちろんのこと、関わってくださった全ての皆さんの手厚いサポートがなければ僕は緊張で押しつぶされてグダグダになっていたと思います。本当に助けて頂き心より感謝しております。

 そしてTEDxKobe10周年本当にすごいと思いますし、ここに立てたことを誇りに思います。私にとってTEDxという舞台で話すのはこれが最後になると思います。最高のものが作れました。後はこの動画を多くの人に見てもらえるように努力し、そして私が目指す争いや排除のない安心して生きていける世界を目指し、自分なりに頑張っていきます。

よく頑張った!と思って頂けたら 💗 を押してもらえると嬉しいです。

パプアニューギニア海産
代表取締役 エビ工場長 武藤北斗

湊ペンペンズ/新藤さんによるグラレコ。会社に飾っています。


・・・・・以下ちょっと宣伝

・第3期職場を考える私たち募集中(今回は学校関係者限定)

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・お家で豪華にエビフライ!!


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武藤北斗/パプアニューギニア海産
お小遣いは自分で稼ぐというのが武藤家流。サポート感謝です。