藤崎剛人

ドイツ思想史/公法学 連載コラム『現代ニホンの精神史的状況』 https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/ 他にweb媒体・紙媒体ともに、様々な執筆活動や翻訳を行っています。

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  • アニメについての話

    アニメについての批評や感想です。

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    映画評、あるいは単なる映画感想文です。

  • お笑いについての話

    お笑い界や芸人について素人があれこれ論評するという芸人から最も嫌われるタイプのやつ。 今のところ不定期連載です。

最近の記事

『響け!ユーフォニアム』が貫いた「原作改変」の美学

(ネタバレあり) メディアミックス作品で「原作改変」をすることは、特に『セクシー田中さん』の痛ましい事件の後、極めてセンシティブな問題になっている。私はあの事件において実際に何があったのかを知りうる立場ではないが、テレビ局側がコミュニケーションの不足により作者を追い詰めたのは確かであり、責任は免れられないだろう。 一方で、「原作に忠実」であることはそんなに偉いのか、とはずっと考えている。特にアニメでは、過去作品のリメイク物を中心に、原作漫画の台詞の一字一句を変えずに映像化

    • 映画『きみの色』の畏れと慄き

      映画『きみの色』を観てきた。 地方の鬱屈がテーマの一つなのだが、四方を囲まれた京都や飛騨ではなく、長崎県という地域を選んだのは絶妙だなあと思いながら観ていた。山に囲まれてはいるのだが、海という脱出経路がある。しばらくは曲がりくねった湾や離島の間を進むとしても、その先は無限に広がっている。それが救済なのだ。 長崎という土地で暮らすトツ子、きみ、ルイは、それぞれがそれぞれの実存的不安を抱えている、しかしその不安は、映画の中では一部分しか開示されることはない。それぞれの家族や人生

      • FUWA

        私が初めてフワちゃんを知ったのは、今から7年ほど前、インターネット番組『Aマッソのゲラニチョビ』だった。これまでの女性芸人にもいなかったような、素人っぽさもありながら勘所を押さえているタイプの芸風に驚き、これは「発見されれば売れる」と思った。まさかYouTuber枠でデビューし、Aマッソより先に売れるとは思っていなかったが。 フワちゃんは嫉妬したのか 今回の事件についての話題で、フワちゃんの芸風がやす子と比べられることがある。フワちゃんがブレイク時と比べてテレビ露出を減ら

        • 「イメージ」選挙とメディアの怠慢

          7月7日に行われた東京都知事選挙は、「イメージ」の選挙だったと言ってよい。 現職の小池百合子が都政をつつがなく運営できているという「イメージ」。 石丸伸二の改革者としての「イメージ」。 蓮舫の「左翼」または「怖い」という「イメージ」。 なぜ現職が圧勝したのか、なぜ石丸氏が得票率で2位になり、蓮舫氏が3位になったのか。メディアの分析や有権者に対する取材では、数々の「イメージ」が並んでいる。 特に現職の対抗馬となる石丸氏や蓮舫氏に対しては、ほぼ「イメージ」だけで選ばれた「印象」

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          『虎に翼』の感想と今後に期待したいこと

          連続テレビ小説『虎に翼』を最新話まで追いついた。ちょうど第7週から第10週までを一気に見たことになる。注目したのは戦況が悪化していく描写で、物語の本筋は戦争とあまり関わりなく進んでいても、台詞の端々や背後で流れるラジオ放送、風景や服装、食事の情景などから、次第に戦争が日常へと侵食していく状況を描いている。 他の朝ドラをほとんど見たことがないので、この演出が定番なのかは分からないが、思い出したのが昨年見た映画『窓際のトットちゃん』の描写。 トットちゃんは何も変わらず自由に生

          『虎に翼』の感想と今後に期待したいこと

          映画記事一覧

          web媒体の仕事で執筆した映画評を一覧にしました。 読んでいただければ幸いです。 2024年 『オッペンハイマー』:被爆者イメージと向き合えなかった「加害者」 https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2024/04/post-66.php 2023年 「男たちが立ち上がる『ゴジラ-1.0』のご都合主義」 https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2023/11/-10.php 「LGBT理解増進法」の

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          5/19ヘイトデモと管理する警察について

          5月19日の日曜日、「日の丸街宣倶楽部」というレイシスト団体が、埼玉県蕨市でヘイトデモを行うということで、カウンターに行ってきた。 蕨や川口など埼玉県南部でクルド人を中心とした外国人差別が激しくなっていることについては、以前『ニューズウィーク 日本版』のコラムに書いた。 https://www.newsweekjapan.jp/fujisaki/2024/02/post-65.php 日本における差別に対するカウンター行動といえば、いわゆる「しばき隊」から派生した「C.R.

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          立憲民主党の「消費税還付法案」を支持する

          最近の野党は、文字通り右も左も消費税減税を主張しています。これは考えてみれば不思議なことです。なぜなら、世論調査の結果から分かるのは、世論は消費税は上がるときは反対運動が広がるが、いざ上がってみると減税運動にはそこまで積極的にならない、というものだからです。2021年の衆議院選挙でも、消費税については特に大きな争点になっていたとは言い難いでしょう。もちろん消費税には逆進性があり、庶民の家計を圧迫する要因のひとつです。しかしながら、ほぼ全ての野党が減税にベットするような税制かと

          立憲民主党の「消費税還付法案」を支持する

          松本人志はお笑い界を支配しているか

           先日、オリエンタルラジオの中田敦彦が、お笑い界における松本人志の影響力を問題視する動画を出した。これに対して動画内で名前を出された粗品の相方のせいやが反応するなど、多くの芸人や著名人が言及する事態となっている。  中田の主張は、現在のお笑いジャンルのほとんどが松本人志によって牛耳られており、その枠内でしか芸人は評価されないため、お笑い界のイノベーションが起こらなくなっている、というものである。松本は漫才、コント、大喜利、トークといった様々な大会を「主催」している。面白いとは

          松本人志はお笑い界を支配しているか

          ウエストランドM-1優勝に寄せて

           2022年、ウエストランドが第十八回M-1グランプリ王者になった。このことは一般的には、「人を傷つけないお笑い」あるいは「コンプライアンスへの配慮」というトレンドの終焉であると捉えられている。しかし少なくとも5年以上前から「ソルジャー」(『ウエストランドのぶちラジ!』リスナー)である自分からみれば、そのような評価にはかなり違和感がある。   優勝以来、ウエストランドは様々なメディアでインタビューを受けているが、自分たちを反コンプラ時代の寵児として扱われることを井口はかなり警

          ウエストランドM-1優勝に寄せて

          革命と救世主

          宇宙小戦争  3月に公開された『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』は、1985年の旧作ストーリーを全体的には踏襲しつつ、幾つかの点で改変が見られた。「女の子を危険な目に合わせるわけにはいかない」から「君ひとりを危険な~」への台詞変更などジェンダー的視点からの改変もみられたが、根本的な作品テーマに関わる変更としては、巨大化が果たす役割の違いがある。  旧作では、巨大化はドラえもんたち及びピリカ星を救うための決定的な役割を持つ。今作でも、巨大化はドラえもんたちの生命

          革命と救世主

          文藝春秋digitalに論考を寄稿しました

          文藝春秋の方にお声がけいただき、論考を寄稿しております。主題は、今様々なメディアでブレイク中のひろゆき氏についてです。ぜひ読んでください。

          文藝春秋digitalに論考を寄稿しました

          『正論』8月号の三浦小太郎氏のコラムについての反論

           今年5月に『ニューズウィーク日本版』に書いたコラム「入管法「改正」案、成立すれば日本は極右の理想郷になる?」が、雑誌『正論』8月号に掲載された評論家の三浦小太郎氏の記事「ウイグル人救えた入管法改正案」で批判されていたので、簡単にだが応答してみよう。  まず、満州国の「多民族国家」性を肯定してみせたり、フランスの国民連合を極右として認めなかったりしているのは、いかにも偏向した「保守」的世界観であり、ご愛敬といった感じだが、ここでは特に触れない。  このノートで問題にしたいのは

          『正論』8月号の三浦小太郎氏のコラムについての反論

          7/3講演会情報

          7/3講演会情報

          プロフィール

          ・専門はドイツ思想史/公法学研究。 ・ブログ『過ぎ去ろうとしない過去』から、映画評や書評等を抜粋して載せております。 ・主なお仕事 「ノモスとアジール――尾高朝雄の法哲学についての試論」 「「正しい政治」を求めて――映画『バーフバリ』が描く国家・法・民衆 」 ユリイカ 2018年6月号 特集=『バーフバリ』の世界 ―インド映画と神話の豊穣―www.amazon.co.jp1,512

          プロフィール

          映画『デトロイト』あるいは人種妄想をめぐるグレートゲーム

          (この文章は、2018年2月12日に書かれたものです)  見る前に知人から胸糞映画だと言われて覚悟していたのだが、実際、胸がスッとするようなカタルシスは最後まで訪れず(史実に沿っているのだから仕方がないが)、見た後も頭痛がしてしばらく落ち込んだままだった。  この映画は黒人差別を扱ったものだが、その描き方については様々な観点から批判がなされている。たとえば古谷有希子は、この映画は公民権運動の一部としてのデトロイト暴動の背景や意味について触れることなく、ただその暴力性にスポッ

          映画『デトロイト』あるいは人種妄想をめぐるグレートゲーム