平井堅と私
「好きな食べ物は何?」
「好きな色は?」
「好きなタイプは?動物は?ファッションは?」
──こんな質問をされると悩みに悩んで黙り込んでしまう私だが、唯一自信を持って答えられるのが「好きな歌手は?」の問い。
即答で平井堅さん。
今日1月17日は彼の誕生日なので、平井堅さんとの一方的な思い出を振り返ってみる。
中学1年の頃 部活ガチ勢だった私は夜遅くに練習を終え、冷めた夕飯を前にボーッとテレビを眺めていた。
疲労困憊で箸は進まず、流行りのJpopを垂れ流すいかにも深夜っぽい番組まで始まってしまった。
(ああ…寝なきゃ…)
と思っている所に流れてきた物憂げなメロディとモノクロの映像。
海外の街、疲れた老人、転がる林檎、そして
異様に顔の濃い男
(石油王…?)
これが彼との出会いだった。
石油王の歌声はとても美しく、乾いた砂漠に雨が染み入るように心と脳を優しく潤した。
とにかくじっくりと耳を浸した。
夢心地の数分の後、
画面の隅には「楽園/平井堅」の文字。
(誰?)
非常に失礼な話なのだが、当時の私はMVで歌う彼の事を口パク出演させられているただの中東系外国人だと思っていた。
加えて物覚えが悪いため
“美しい歌声”
“カタい名前”
“MVに石油王”
という頼りない情報だけを記憶に残し
「またあの人の歌を聴けたらいいな」と漠然と思っていた。
思考がディズニープリンセスである。
そして数ヶ月後のある日、ふと耳にした曲にハッとした。
「あの声だ!!」
曲調もテイストもまるで違うけれどすぐに分かった。
集中して歌詞を聞き取る。
「ラブ オア ラスト」と繰り返している。
これは九割九分“ラブ オア ラスト”という曲名だろう。英語が赤点の私でも容易に想像がつく。
調べたら平井堅という歌手であると再度知った。
ついにあの人に会える
またあの歌声を聴ける
CDショップで“ハ行”を探し、指でなぞり、はやる気持ちを抑えて狙いを定める。
そして再会の瞬間が訪れた。
石油王〜〜〜〜〜!!!
お前だったんか〜い!
大切な人はすぐ近くにいる。
もしかしたら既に出会っているかもしれない。
そんなメルヘンチックでファンタジックな事に気付かせてくれた彼の歌を、私はずっとずっと聴き続けたい。
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