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奇々怪々文字羅列『紫の屋根の家』。

こんばんは、トゥインクル・コーポレーション所属の単独屋、ジャパネーズのウネモトモネで御座います。

38日目。

脳脳脳。今宵は深夜の奇々怪々文字羅列。ウネモトモネが右脳全開パッパラ原っぱラッタッターで綴りに綴りてチュルリララ。先程、先日出演させて戴いた『長尺ネタオンリーライブ』の配信映像を関係者URLにて視聴。やっぱり「KIREIですね。」というコントは面白い。こういう不条理コントは知名度のない芸人には賞レース向きではないと重々承知しておりますが、それでもやはり自分が声出して笑っちゃうのはそういうコントなのです。だからこそ右脳全開。理屈とか常識そういうのは一旦押し入れの中に仕舞っておいて。チョンガラモペッペランロリル。




奇々怪々文字羅列『紫の屋根の家』 作・ウネモトモネ

紫色した屋根がずっと気になっていた。僕の住むこの亜ン情究極町3丁目に、最近建ったあの家。淡いパステルカラーの紫ならまだしも濃ゆい濃ゆい紫の屋根。僕は他人の900倍色を見分けられるから「紫色」だと認識出来ているけれど、もしかしたら町の人たちは皆あの屋根の色を「黒色」だと認識しているのではないだろうか。

明らかに違法建築であるその家。だって煙突から巨大な煮干し人形が飛び出してるんだぜ。その煮干し人形に釣られて近所の野良猫や野良シェフが煙突に集っているんだぜ。毎日。毎週。毎月。毎年。毎世紀。

妙ちくりんな大富豪が道楽で建てたらしいという専らの噂。けれども建築に明るい僕の叔父に言わせてみれば「あの家は7,000円くらいで建てることが出来る。」らしい。7,000円あれば暦戻しステッカーが箱買い出来る時代だってのにさ。そんなの言われたらもうお尻の蝶番が外れてしまうってなもんさ。

あの家にはどんな人が住んでいるのだろう。そんなことをずっと気にして居た僕は食事も喉を通らなくなり、睡眠も鼻を通らなくなり、性欲も踝を貫かなくなり、ほとんど廃人のようになってしまっていた。そんな僕を視るに視かねて、僕は僕をあの家の近く、あの家の住民の出入りがよーく視える町一番の小高い丘に家を建てることにした。

卵の殻で出来た壁。キツツキの羽で出来た玄関。あとはダイソーで揃えた結束バンドで何とかなった。合計費用は8万9千円。明らかにヤバそうな闇金から借りた金。でも僕にとってはこの後の人生なんかどうでも良かった。あの紫の屋根の家にどんな人が住んでいるのかがわかれば、もういつ死んでもいいと思っていたくらいに。

見張り続けてから7秒後、幸運にもあの家の玄関のドアが開いた。僕は目を凝らしてその一部始終を見守った。出て来たのは40歳くらいの女性の形をしたセメントの塊を担いだ30代の老紳士風ケチャップだった。

「ケチャップ…。ケチャップ。ケチャップチャケップ、プップップ。ケチャップチャケップ、プップップ。アロンソ。テロメヤ。リック・ヴィー・ジョンボム。アジョけない。アジョおけない。アロンソはアジョおけない。切符を拝見。ナンナンナン。オー、グッドバッグレディーライター。マケロン。ニューム。バーナードカレッジ。ウィークエンドナイトソードブランケット。ちゅむちゅむちゅむ。へもパズル。あろー。」

と書いてくれたらしい。この喫茶店のメイドさんは。僕の頼んだオムライスに。でも僕にはそれが読めなかった。だって僕は独身。嫁、無かったのですから。

そう言って無理やり落語を終わらせようとした、低貞亭よっこしょ丸師匠の頭上からギロチンが振り落とされたのはあまりにも有名な話。ちなみにそのギロチンはよっこしょ丸師匠の首を切り落とすことはなく、ちょうど師匠がコンプレックスに感じていた鼻の頭のコブだけ削ぎ落したらしい。まぁこれには諸説あるんだけれどもさ。

で、結局「紫の屋根の家」には誰が住んでいたのかが知りたいんでしょ?でもそれは君が考えてみればいいことさ。幸いにもこの意味不明な文章の中にそのヒントが隠されているんだからね。

「嘘おっしゃい!ヒントなんか何処にも隠されてやいないのでしょう!」

そのとおり。確かにこの珍妙滑稽な文章の中にヒントなんてありはしない。でも、そんなこと言ったらこの世界の何処にもヒントなんてありはしなくなってしまうじゃないか。全然意味のないこと、全然関係ないことを人間の深い思考力を持ってヒントにする。それが僕たちが7分間かけてやってきたこの世界の営みってやつだろ?

翌朝、あの家は取り壊されていた。やはり違法建築だったことが原因らしい。そして中に住んでいたのはごく普通の会社員。少しだけフットサルが得意な会社員。火曜日にはかならずパスタを食べる会社員。愛読書は『魔法陣グルグル』だという会社員。録画予約をし忘れがちな会社員。レアカードが出ることよりも雑魚カードが100枚出ることに興奮を覚える会社員。ブラインドタッチが7割くらいの確率で成功する会社員。いつかはチベットに住みたいと思っている会社員。まだ就職先が決まっていない会社員。

僕は68年後、たまたま彼に逢う奇跡に恵まれるのだけど。その時彼に「あの屋根の色は紫だったよね?」と尋ねると「いいや。あの屋根の色はライラックブルーだったよ。」と言われた。僕は「なんかマセキのライブ名みたいな色だな。」と思った。彼は「みたいな、じゃないよ。」と答えた。まったくこれだからアメリカ帰りの奴ってのはさ。

収縮された猫が鳴くよ 収縮された猫が鳴くよ それそれみゃおみゃおそれみゃおみゃお。日没。暗転。讃美歌が聴こえる。