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#025 どうしてハワイイでは製塩業が栄えなかったのか?を砂糖と比べながら考えてみる

ハワイイ島でチェーン展開するローカルスーパーマーケット、KTAで売られている塩。
パッケージがいいでしょう。

とはいえKTAのオリジナルではなくて、KTAは袋詰めだけをしており、中身はCargill Saltだそうな。
きちんと書いてある。

ではCargill Saltって何ぞ。

Cargill Saltは、Cargill社が製造・販売する塩のブランド名でして、同社は世界最大級の農業関連企業の一つであり、その中で塩事業も行っているとのことです。

本社はミネソタ州ミネアポリスですが、Cargill Saltの製造施設は世界中にあり、主要な塩産地に点在しているらしい。
調べると、日本法人もありますね。でも日本では塩を作っているわけではなく、農産物のサプライチェーン業務を提供しているようで。

ハワイイから近いところだと、カリフォルニア州サンフランシスコの湾岸にCargill社は塩田を保有しており、するとこいつは、そこの精製塩かもしれません。

Cargill Saltは食品業界や産業用途に向けて塩製品を提供していて、その塩は、食品加工や食品保存の他に、道路の除氷など幅広い用途に使われているそうです。なるほど。

パッケージが魅力的なので買いたい気はするものの、うーんさすがに5ポンド(2.3キロ)詰めは多いなあ・・・。

というところまでが、このレポートの前置き。

ハワイイではかつて、さとうきびプランテーションに支えられた製糖産業が大いに栄えましたが、それに比べると製塩業が目立って繁栄することはありませんでした。
スーパーの塩売り場にはもちろんハワイイアン・シーソルトも並んでいて、その割高なシーソルトを観光客としての自分は買うんですけど、同じ売り場にありながら、ハワイイアン・シーソルトは、ハワイイ住民のシリアスな生活物資というのとは毛色が違う、いくらか付加価値商品のような位置付けとなっています。

海に囲まれた立地であることを考えると、ハワイイは塩作りには適しているのでは?とも思えますが、実際にはそうならなかった。その理由には、いくつかの歴史的・地理的要因があると考えることができます。
製糖業との比較を交えて整理してみましょう。

ハワイイにおける製糖業の成功の背景

  1. 気候と土壌:ハワイイの温暖な気候は、サトウキビの栽培に非常に適していました。また、特にハワイイの肥沃な火山性の土壌は、サトウキビの生育に必要なミネラルを豊富に含んでいました。

  2. 市場の需要:19世紀から20世紀初頭にかけて、砂糖の需要が急速に拡大しました。アメリカ本土での砂糖の消費量が増え、特に1898年のハワイイ併合以降、アメリカ市場へのアクセスが容易になり、ハワイイの砂糖産業は飛躍的に成長しました。

  3. インフラと労働力:ハワイイには製糖業に必要なプランテーションを運営するためのインフラが整備され、移民労働者(主に中国、日本、ポルトガルなどから)が安価な労働力として提供されました。これにより、大規模なプランテーションが効率的に運営されるようになりました。

ハワイイで製塩業が繁栄しなかった理由

  1. 市場の規模と需要:塩は食用としての基本的な調味料ですが、使用量は比較的少なく、家庭や料理で必要な量は限られています。また一方で産業用途としても、19世紀のハワイでは各種の産業は発展しておらず、大量の塩を必要とする場面が少なかったと推察できます。つまり、塩の需要は比較的限られており、特にハワイイでは製糖業に比べて市場規模が小さかったと考えられるのです。

  2. 競争と輸入・輸出:塩は、他の地域からの輸入が容易でした。特にアメリカ本土や他の太平洋諸島から、安価で大量の塩を輸入することが可能であり、ハワイイでの大規模な製塩業を発展させる必要性が低かったと考えられます。逆にハワイイで製造された塩を輸出するにしても、当時の世界市場ではすでに多くの国や地域が塩を生産していたため、ハワイイの塩が国際市場で競争力を持つことも難しかったのではないでしょうか。

  3. 地理的制約:ハワイイの気候や地形は、塩の生産に理想的ではなかったとも考えられます。まず塩田を設置するためには、平坦で乾燥した土地が必要ですが、ハワイイの多くの土地は火山活動によって形成され、適した場所は限られていたはずです。しかも、ハワイイは湿度が低くはなく、塩の結晶化にあまり適さない気候条件であるとも言えます。

  4. 経済へのインパクト度合いの差: そもそも砂糖と比べて、ハワイイの経済に製塩業が与える影響がごく限定的なものであったと考えられます。塩の生産は砂糖のプランテーションのような大規模な投資や労働力を必要とせず比較的小規模で済み、塩田の管理や製塩プロセスも単純であるため、製糖業のように雇用やインフラ整備を大きく促進することにも寄与しなかったでしょう。


スーパーでちょっと目に付いた塩のパッケージを発端に、これだけのことを知ることができました。
こういうのが、ハワイイ研究の醍醐味です。

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