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[書評] デザインの言語化 2025年02月07日
1. 著者紹介
本書の著者、こげちゃ丸氏は、プロダクトデザイン、商品プロモーション、UXデザイン、デザインコンサルタントと、幅広いキャリアを積み重ねてきたデザイナーだ。デザイン分野が変わるたびに新しいスキルを求められる中で、彼が発見した共通する大切な能力が「デザインを言語化する力」だった。
デザイナーは視覚で語るべきなのか、それとも言葉も駆使すべきなのか。これはデザイナー界隈で意見が分かれるテーマであり、こげちゃ丸氏自身も若い頃は「絵で語るべき」と考えていた。しかし、クライアントとの円滑なコミュニケーション、消費者にとって最良のデザインを生み出すためには、言語化が必要不可欠であると考えるようになった。その信念をもとに本書は執筆されている。
2. 本の紹介
『デザインの言語化』は、デザイナーが自身の考えを整理し、相手に伝えるための具体的な手法を解説した一冊だ。本書は4つのステップに分かれており、それぞれ「コンセプトの言語化」「デザインの意図を伝える」「クライアントの要望をくみとる」「チームでの仕事を円滑に進める」と、デザインの言語化を段階的に学べる構成になっている。
特に、プレゼンテーションのテクニックや、クライアントとの円滑なコミュニケーション術についての実践的なアドバイスが満載で、現場のデザイナーにとって実用性の高い内容となっている。
3. 感想と主張
デザイナーにとって言葉の力は不可欠
デザインの世界では、ビジュアルが全てのように思われがちだ。しかし、本書を読むことで、デザイナーが「言葉でデザインを説明する力」を持つことの重要性を改めて認識した。
特に、デザインの意図をクライアントに伝える際、単に「きれいだから」「カッコいいから」ではなく、なぜそのデザインが最適なのかを理論的に説明できることが求められる。そのためには、デザインコンセプトを明確に言語化し、クライアントが納得できるように伝えなければならない。
クライアントとのコミュニケーションがデザインの質を左右する
「シンプルなデザインにしてください」と言われたらどうするか?「悪くはないけど、違う案も見たい」と言われたらどう対応するか?
本書では、デザイナーが直面しがちなシチュエーションに対して、具体的な対応策が紹介されている。クライアントの意図を正しくくみとり、デザインの方向性をスムーズに決定するための会話術は、実務ですぐに役立つものばかりだ。
言語化のスキルはデザイン以外にも活きる
デザインを言語化するというスキルは、プレゼンテーションやチーム内でのコミュニケーションにも役立つ。本書では、プレゼン時に「あなた」という言葉を使うことで聞き手の注意を引く方法や、資料作成のコツなど、デザイン業務に留まらず幅広い場面で応用できるテクニックが紹介されている。
4. 要約を簡単に
コンセプトを言語化する - デザインの出発点として、明確なコンセプトを言語化することが重要。
デザインの意図を伝える - 主観的な意見を論理的に説明し、説得力を持たせる。
クライアントの要望をくみとる - クライアントとの会話を工夫し、修正地獄を避ける。
チームでの仕事を円滑に進める - デザインの方向性をチーム全員で共有し、効果的に進める。
5. 初心者向けの問題提起
デザインを言語化することは、本当に必要なのか?
多くのデザイナーは、「自分のデザインを言葉で説明するのが苦手」と感じている。しかし、それは単なる苦手意識なのか、それとも本当に不要な能力なのか?
本書では、「デザインは絵で語るべき」と考えていた著者自身が、言語化の重要性に気づいた経緯が語られている。言葉にすることで、デザインの意図がより明確になり、クライアントやチームと共通認識を持つことができるのだ。
初心者のデザイナーも、自分のデザインを言語化することのメリットを考え、自身の成長につなげていくべきではないだろうか。
6. 重要なポイント
デザインコンセプトは「地図」であり、方向性を示す重要な要素である。
クライアントの言葉をそのまま使うことで、意思疎通をスムーズにする。
プレゼンでは「あなた」を使って聞き手の注意を引く。
異業種とのコラボレーションでは、業界ごとの言葉の違いを理解することが重要。
言語化のスキルは、デザイン以外の場面でも大いに役立つ。
7. まとめ
『デザインの言語化』は、デザイナーが言葉を武器にするための実践的な指南書だ。
デザインを言語化することは、「デザイナーがビジュアルで勝負するべき」という考え方とは対極にあるように思えるかもしれない。しかし、デザインの意図を正しく伝え、より良いデザインを生み出すためには、言語化のスキルは不可欠だ。
デザイナーとしてキャリアを積んでいくうえで、避けては通れないスキルである「デザインの言語化」。本書を手に取り、その力を磨いてみてはいかがだろうか。
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