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番外編 「イノベーションと企業家精神」一冊(前半)を9,000字で本気でまとめてみた

はじめに

ドラッカーの本を読みたいと思うけど、中々手をつけられないという方のために、僕が「イノベーションと企業家精神」の前半を9000字で本気でまとめてみました。約5500文字まで無料で読めます。

結構大変だったので、もし需要があれば後半もまとめようと思いますが、無ければ前半だけで終わりたいと思います。


イノベーションと企業家精神 

         
著:P.F.ドラッカー 編訳:上田惇生

<企業家>
・企業家の定義

 経済活動の本質は現在の資源を将来の期待のために使うこと、すなわち不確実性とリスクにある。
 確実性を必要とする人は企業家に向かない。企業家だけでなく、政治家、軍の将校、船長など、あらゆるものに向かない。それら全てには意思決定が必要である。意思決定の本質は不確実性にある。
 企業家精神とは気質ではなく行動である。その基礎は勘ではなく原理であり方法である。


・企業家精神の定義

 企業家の責務は「創造的破壊」まったく新しいことを行うことに価値を見出す。
 企業家は変化を当然かつ健全なものとする。自分で変化を引き起こさなくても、変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。


・企業家精神のリスク

 一般的に企業家はリスクが大きいと思われているがそうではない。成功しないリスクはある。しかし多少なりとも成功すれば、その成功はいかなるリスクも相殺して余りあるほど大きい、従って企業家精神は、単なる最適化よりもはるかにリスクが小さい
 イノベーションの機会がすでに存在し、イノベーションのよる大きな利益が必然の分野において、資源の最適化に留まることほどリスクの大きいことは無い。論理的にいって企業家精神こそ最もリスクが少ない。

 
<イノベーションのための七つの機会>
・イノベーションとは何か

○富を創造する能力を資源に与える
 ペニシリウムというカビは厄介者で役に立たなかったが。1920年代にロンドンの医師アレキサンダー・フレミングがペニシリウムからペニシリン(抗生物質)を作り出した。

○資源だけでなく、社会や経済分野にも影響を与える。
 19世紀初頭、アメリカの農民は収穫機を買うことができなかった。そのとき収穫機の発明者の1人サイラス・マコーミックがローン販売を考案した。これにより貧しい農民も、過去の蓄えからでなく未来の収入から収穫機を購入できるようになった。

○既存の資源の価値を増大させる
 貨物船を船ではなく運搬道具と見ることでコンテナ船が生まれた。港での滞留時間を大幅に減らしたことで、生産性が従来の4倍になり海運業の危機を救った。

○初等教育の普及
 17世紀チェコの教育改革者ヨハン・アモス・コメニウスによる教科書の発明。
 それまで、1人の先生につき1人か2人の生徒しか一度に教えられなかったが、教科書があれば平凡な教師でも一度に30人程の生徒を教える事が出来る
 
 イノベーションは技術に限らない。モノである必要ですら無い。それどころか社会に与える影響は、新聞や保険をはじめとする社会的イノベーションに匹敵するものはない。
 まさにローン販売は、経済そのものを供給主導型から需要主導型へと変質させた。


・社会的イノベーション

 社会的イノベーションの最たる例は日本である。日本は開国以来、日清戦争、日露戦争、真珠湾勝利、70年代~80年代に懸けての経済大国、世界市場における最強の輸出者にもかかわらず、欧米の評価は常に低かった。その主な理由はイノベーションは科学や技術に関することだという一般通念にあった。実際日本は、イノベーションを行う国ではなく模倣する国だと見られてきた。
しかし、日本の成功は社会的イノベーションによるのもだった。
イギリスの蒸気機関車は応用も修正も無しに、そのまま日本でも使う事が出来る。しかし、学校、行政、銀行、労組の様ような公的機関は、日本人が動かすものでありながら、同時に西洋的かつ技術的、経済的に適合するものでなければならない。
日本は約100年前、社会的イノベーションに集中し、技術的イノベーションは模倣し、応用するという決断をし、見事成功した。

 イノベーションとは技術というよりも、経済や社会に関わる用語である。


・7つの機会

具体的にイノベーションの機会は7つある。
○企業や組織の内部の人には見える表面的な事象。
1、予期せぬ事の生起。予期せぬ成功、失敗、出来事のこと。
2、ギャップの存在、現実のものとあるべきもののギャップのこと。
3、ニーズの存在。
4、産業構造の変化。
○企業や組織の外部における現象
5、人工構造の変化
6、認識の変化
7、新しい知識の出現
これら7つは分かれるのではなく、互いに重複する。
これら7つは信頼性・確実性が大きい順に並べられている。
新知識に基づくイノベーションは目立ち、重要ではあっても信頼性は低く成果は予測しがたい。
それに比べて、予期せぬ出来事や予期せぬ失敗がもたらすイノベーションはリスクや不確実性がはるかに小さい。


<予期せぬ成功と失敗を利用する>第1の機会

◎予期せぬ成功

○予期せぬ成功は認めることは容易ではない。現実を直視する姿勢と、間違いを率直に認める謙虚さが必要になる。
 例:婦人服をメインに販売していた百貨店メイシーは家電をサブで販売していた。しかし、家電の売り上げが全体の7割以上を占めるようになり、どんな手を打っても婦人服の売り上げが伸びない。そこで婦人服の売り上げを上げるべく、家電の販売を縮小してしまった。その後メイシーは低迷したが現在ではその地位を高めている。

○予期せぬ成功は腹が立つ
 例:動物医薬品シェア1位の会社は自分たちで開発した薬は一つも無い。他の会社が人体用に開発した薬を動物用に使用した。しかし他の会社は人体用に開発した薬で動物医薬市場に進出することを嫌ったため、その会社が動物医薬市場に進出したことを逆に喜んだ。その後、人体用医薬品は厳しい価格競争や規制を受けるようになり、動物医薬市場が一番利益率の高い産業になった。

○予期せぬ成功は気付かない、注意も利用もされない。そこに誰かが現れ利益をかっさらっていく。
 例:ある病院用機器メーカーがあるテスト機器を開発し、よく売れた。しかも大学や企業の注文が増えた。しかし、誰もそれについて報告を受けず気付かなかったため。営業マンも出さなければ、アフターサービスもしなかったため、他のメーカーに市場を奪われてしまった。


・イノベーションへの要求

 予期せぬ成功は、社会が事業・技術・市場の定義についてイノベーションを要求している。それらの答えが出たとき。予期せぬ成功が最もリスクが小さく、最も成果が上がるイノベーションの機会となる。


・予期せぬ成功が意味するもの

 予期せぬ成功について問うべきこと
 1、これを機会として利用することは、我が社にとっていかなる意味があるか。
 2、その行き着く先はどこか
 3、そのためには何をおこなわなければならないか
 4、それによって仕事の仕方はいかに変わるか

◎予期せぬ失敗
予期せぬ失敗の多くは、単に計画段階での過失であることが多いが、慎重に計画し実施したものに関しては、失敗そのものが変化とともに機会の存在を教える。
特に大組織のマネジメントは予期せぬ失敗に直面すると、一層の検討と分析を指示する。しかしそれは間違った対応である。予期せぬ失敗が要求することは、外へ出て、よく見、よく聞くことである。それは消費者だけでなく取引先にも目を向ける必要がある。

◎外部の予期せぬ変化
 マネジメントが普段目にしている数字や情報に現れない事象も重要な意味を持つことが多い。
 例:1970年代のIBMでは、コンピューターの普及など起こるはずがないと、信じていた、しかし起こるはずが無いと思っていたことが実際に起こったので、外へ出て調査し、それを利用して会社は急成長した。



<ギャップを探す>第2の機会

ギャップの分類
1、業績ギャップ
2、認識ギャップ
3、価値観ギャップ
4、プロセス・ギャップ


・業績ギャッ

 需要が伸びているのに業績が伸びていない場合、そこには何らかのギャップが存在する。
 なぜ業績が伸びないのかわからない場合も多々あるが、イノベーションを行う為には、必ずしもその原因を知ろうと努力する必要はない。このギャップをチャンスとしてどう利用出来るかを考えれば良い。
 業績ギャップが求めるのは行動である。問題が分からなくても、取るべき行動が明らかなことがある。


・認識ギャップ

 物事の判断を見誤り、現実について間違った認識をしている時、その努力は間違った方向へ向かう。しかし、それに気付いたときイノベーションのチャンスとなる認識ギャップがうまれる。
 例:1950年代始め、海上運輸業で貨物船は消滅する運命にあった。その原因は長年に渡り、成果の出ない課題(船の高速化、省エネ化等の港と港の間を効率化させること)に力を入れていたことだった。しかし、資本財にとっての最大のコストは遊休時間である。当時貨物船(資本財)は港で停泊している遊休時間が長く、その間に多大なコストが支払われていた。それにも関わらず、すでにコストが低くなっている港間のコスト削減に力を入れていた。この問題を解決するためにコンテナ船が生まれ、輸送コストはそれまでより60%減となった。

 認識ギャップを利用するためには華々しいイノベーションは必要ない。単純に成果の出ることに力を入れるだけで大きな成果が出る。その解決策は的を絞った単純で小さなイノベーションである。


・価値観ギャップ

価値観ギャップには様々な例がある。
例:日本の経済界の大物が「テレビは高すぎて日本の貧しい人達は買う余裕が無い」といっていた。しかし、テレビは庶民の憧れとして普及した。
例:ロシアのフルチョフは1956年に「ロシア人は車を必要としない、なぜならタクシーの方が安いからだ」と言っていた。フルチョフは車が単なる移動手段でなく、自由、移動力、ロマンがあることを認識できていなかった。

価値観ギャップの背景には、必ず傲慢、硬直、独断がある。つまり「貧しい人達が何を買えるか知っているのは、貧しい人達ではなく私である」といった考え方である。
あらゆるギャップの中で一番多く見られるのが価値観ギャップである。


・プロセス・ギャップ

例:O・M・スコットは芝生関連の器具、種、肥料、殺虫剤の最大手メーカーである。肥料や殺虫剤は他のメーカーも劣っていなかったが、O・M・スコットはそれらを散布するための器具を開発した。それまで、徹底した研究で製品を作っていても、それを一定量散布するための器具を開発している会社はなかった。
 
 プロセスギャップは中々見つけられないものではない。消費者はすでに感じているのである。
消費者の声に耳を傾け、真剣に取り上げることができれば、プロセスギャップをイノベーションの機会にすることが出来る。


<ニーズを見つける>第3の機会

予期せぬ成功や失敗、ギャップはすでに存在するイノベーションの機会だが、ニーズはそこに存在していないイノベーションの機会である。
 主なニーズ
 1、プロセス上のニーズ
 2、労働力上のニーズ
 3、知識上のニーズ


・プロセスニーズ

 プロセスニーズは状況からでなく、課題からスタートする。すでに存在するプロセスの弱みや欠落を補う為のイノベーションのである。そのニーズは全員知っているが、誰も手をつけていない。しかしひとたびイノベーションがあれば直ちに受け入れられ標準となり普及していく。


・労働力ニーズ

 例:労働力の減少に対処するため、ロボット技術や自動化の進歩が顕著である。


知識ニーズ

 利用することが困難で、大きなリスクを伴うが、非常に重要になることが多いのが知識ニーズである。いわゆる「開発研究」を目的にしたニーズである。
プロセスニーズを満たすためにも、「開発研究」が必要になることが多い。
例:エジソンが開発した電球がある。電力産業が主流になると言われ続けていた中で、電力産業で必要なモノは電球であると見出した。


・開発研究

開発研究と言われると、宇宙開発や新薬の発明など、大規模なモノを想像してしまう。しかし、成功を納めているモノの多くは、目標が明確な小さい規模のプロジェクトである。


・ニーズに基づくイノベーションの5つの前提と3つの条件

〇5つの前提
1、完結したプロセスについてのモノであること
2、欠陥が一カ所だけであること
3、目的が明確であること
4、目的達成に必要なものが明確であること
5、「もっと良い方法があるはず」という意識が浸透していること

〇3つの条件
1、何がニーズであるか明確に理解されていること。なんとなくニーズがあるだけでは不十分である。
 例:教育現場での数学の教え方。子供たちどうすれば数学が上達するのか100年以上前からの課題であるが、その要因が、才能か、方法論か、心理面なのか未だにわかっていない。まさにニーズがわからないので、解決策も見つかっていない。
2、イノベーションに必要な知識が手に入ること。
3、問題の解決策が、使用する人の方法や価値観に一致していること。
 例:良いカメラを作っても、素人では技術が難しすぎて使えないのでは需要は生まれない。

ひとたびニーズを発見したならば、まず5つの前提に照らし合わせ、その後3つの条件に合致するかを調べることが不可欠である。

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