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戦士の決意|国興しラブロマンス・銀の鷹その9
翌日、一時の陣を張ったその地を後にし、彼らはレイガラントへと向かうことにする。途中ガートランドの軍との戦闘への対策はすでに練ってある。
兵士が見下ろせる場所に馬上のセクァヌが姿を表す。
朝日を受けところどころ黄金色に光を反射する長い銀の髪を風になびかせ、黄金色に光を弾く鋭い瞳に兵士は魅了され、士気は鼓舞される。
「進軍!」
言葉と同時にセクァヌは勢いよく剣を掲げる。
「おおーーーー!」
セクァヌを先頭に進軍が開始される。その右隣にはアレクシードがぴったりとくっついている。
スパルキアの切り札でもある彼女は、敵にしてみれば喉から手が出るほど欲しい獲物でもある。
後ろに身を引いていればいいと誰もが進言するのだが、彼女は常に前線にいることを好む。
その彼女に付き従いアレクシードはその攻撃の嵐の中を守りぬかなくてはならない。
それは命がいくつあっても足らないようにも思えた。が、そんな彼女だからこそ兵士の心も一つになっているとも思われた。
それに、女のしかもまだ少女のセクァヌが先陣切っているのに、自分が臆するわけにはいかない。いや、そのようなことは決してありえない。
アレクシードはセクァヌを守り抜くことに誇りを持っていた。
「また当分このじゃじゃ馬さんの戦場でのお守りだな。」
苦笑いしつつ、そうは言ってもアレクシードのその瞳は真剣そのものであることには違いない。
アレクシードは戦場へ向かうごとに毎回自分に誓っていた。
「オレのお嬢ちゃんには怪我一つさせない。」
それがセクァヌをその立場に引きずり出してしまった事に対する自分の責任であり、彼女に対しての心の証でもあった。
彼女の激しさを秘めた瞳が放つ鋭利な輝きに囚われたその瞬間、敵将さえも思わず攻撃の手を止めてしまうといわれた銀の飛翔。
その銀の鷹は次なる目標に向かって進んでいた。
「お嬢ちゃん、何を考えている?」
今は両の目は閉じられ、その激しさを微塵も感じさせないセクァヌの表情を見つめ、アレクシードは心の中で呟いていた。