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はじめてのプレゼント|国興しラブロマンス・銀の鷹その24
城の外へ出、街の中心地にある広場の入口に馬を繋ぐと、2人は歩いて回ることにした。
-わいわい、がやがや-
様々な露天商が並ぶそこは買い物客などで賑わっていた。
「迷子になるなよ。」
アレクシードはセクァヌの肩に手を回し、そっと引き寄せる。
「はい。」
セクァヌにはそれがたまらなく嬉しく思えた。
「そこの戦士のお兄さん!恋人に一つどうだい?」
通りを歩く2人に元気な装身具を取り扱っているらしい店の女主人の声が飛んだ。
「ちょいと、お兄さんってば!」
自分のことをさしているのではないと思い、そ知らぬ顔をしているアレクシードの目の前に髪飾りを差し出す。
「これなんかどうだい?今日入荷したばかりの銀の髪飾り。」
「オ、オレか?」
「他に誰がいるってんだい?」
そう言われて周りをみる。
ちょうどその時は他に連れ立ってあるいている男女は近くにはいなかった。
「女将さん。」
「なんだい、お嬢さん?」
「恋人に見える?」
「ああ、見えるともさ。さっきから大事そうにあんたを抱えるようにして歩いてるじゃないか?恋人でなけりゃなんだってんだい?」
ほがらかなその女主人は、にっこりと笑って言った。
「あ、いや、オレは・・・」
アレクシードがどもりながら答える。
「なんだい、いい体して照れるんじゃないよ!この色男っ!」
「あ・・だから・・・」
「ああ、気にしない、気にしない。女の子はすぐ大きくなるさ。今はそう思ってても年の差なんてすぐ気にならなくなるってもんだよ!
それよりも何か一つどう?髪飾りじゃなきゃ、こっちの腕輪とか?今ね、銀の姫様がいらしてるだろ?
その影響で銀製のものが飛ぶように売れててね、どうだい、彼女に?」
まいったな、といった顔でアレクシードはその腕輪を受け取る。
そういえば、とアレクシードは思い出す。
国土はないにしても仮にも族長なのだ、族長と言えば国主。
それなのにセクァヌには何一つ身を飾るものはなかった。
甲冑と剣・・・身の回りにあるのはそんなものしかない。
「そうだな、銀製の髪飾りを買っても目立たないしな・・・こっちなら。」
「目立たないって・・・・あ、あんた言うねー・・。」
朗らかに笑う女主人に、アレクシードは訳がわからずぽかんとする。
「銀の姫様みたいだと言いたいんだろ?銀の髪に銀製じゃ目立たないって。」
そして横にいるセクァヌをあごで示す。
「まったくお熱いったらないねー。でも、女としちゃ嬉しいね、銀の姫様みたいだって思われてるなんてさ。」
バッチン!とセクァヌに女主人はウインクする。
(いや、本物なんだけどな。)
とアレクシードは心の中で呟く。
「いいねー、ホントに愛されてるって感じで。うらやましいよ。」
「あ、いや・・・その・・」
「今更照れるんじゃないよっ!」
ぽん!とアレクシードの背中を叩くと彼の手から腕輪を取り、セクァヌの手を求める。
「あ・・・・」
腕輪をはめてくれるのだろうと思われた。
が、セクァヌは腕が出せなかった。
彼女の腕はあちこち傷跡があり、そんな腕を見せたら驚くに決まっていた。セクァヌは思わず後ろへ腕を回して隠す。
「ああ、待ってくれ。腕輪より、そうだな、こっちの首飾りの方をみせてくれないか?」
女主人がセクァヌのその態度を不思議に思わないうちに、アレクシードは言った。
アレクシードはセクァヌの腕に傷があったことなど忘れていた。
それもそのはず、そんなものは全く気にならなかったからである。
が、初対面の者にはそうもいかないだろう、そのことに気づいたアレクシードは女主人の注意を慌てて近くにあった首飾りに向けさせた。
「ああ、そっちは本物の石も入っていてね、お値打ちだよ。」
女主人はにこにこして答える。
セクァヌもほっとして首飾りを見る。
「いらっしゃい!どう?お連れさんに?」
女主人はアレクシードとセクァヌがあれこれみているのに微笑んでから、通りかかった別の男女を呼び込む。
「ねー、アレク・・・高くない?」
「どうかな?こういうものは買ったことがないからな。」
「でも、これを買うだけのお金があれば兵士2、3人の1か月分の食料は確保できるわよ?」
「は?」
真剣な表情で値札を見ていうセクァヌに、アレクシードは唖然とした。
(お、男から買ってもらうというのに、兵士の食料と比較するか、普通?)
「あ・・・と、いけなかった、私?・・・ごめんなさい。せっかくアレクが買ってくれるって言ってるのに。」
アレクシードの表情からそのことを察したのか、すまなさそうな顔をする。
「いや、そんなことはないが・・・・。」
「私、入口付近にあった安いものでいいわ。」
「だめだ、あれじゃみるからにその辺のガラスだぞ?お嬢ちゃんには合わない。」
「でも・・・・」
「オレたち兵は、きちんとそれなりの給金ももらってるんだ。それくらいじゃ痛くも痒くもないさ。」
「アレク。」
「女将、これを。」
「あいよ!」
「あ!そっちは3倍・・・・・」
アレクシードが女主人に差し出したのは、水晶をちりばめた三重の純銀製の首飾り。
思わず口にしたセクァヌをアレクシードは軽く睨む。勿論怒ってではない。
「はい、毎度!」
釣を受け取りながらアレクシードは包んでくれない事を不思議に思いつつ、首飾りを見つめる。
「ああ・・・包むんだったのかい?・・・だけどね、待ってる恋人に贈るんならそうもするんだけどさ、一緒にいるんだから、ね!」
ここでつけてあげないって法はないよ!と女主人は目で言っていた。
「だが・・・」
「ああ~もう!じれったいねっ!兄さん、腕っ節はよさそうだけど、女にかけちゃぜんぜんだめだね?」
「ぷっ!」
それを聞いてセクァヌは思わず笑いをもらす。
「ほら、かわいい恋人も笑ってるよ。」
「あ・・・・で?」
「『で?』じゃないよ、ほら、つけておあげ!」
が、つけるためにはフードをとらなくてはならない。店内には結構客はいる。
「奥を借りていいか?」
「は?」
女主人は言われたことのないことを言われ目を丸くする。
「うちは連れ込み宿はやってないよ!」
「そ、そうじゃなくて・・・・」
アレクシードの顔は赤くなっていた。
「ね、アレク、連れ込み宿って・・なあに?」
セクァヌのその言葉で、ますますアレクシードの顔は赤くなった。
が、日に焼けているのでほとんどわからないようなものでもあった。
「あ、あはははは!」
女主人は大笑いする。
「そこの奥の部屋でつけておあげ。よほど他の男にみせたくないかわいい子なんだろ?」
そんなに日差しが強いわけでもないのにしっかりとフードをかぶらせて、と女主人は言った。
「・・そ、それは・・・」
アレクシードはどう答えたらいいか分からなかった。
「まだ手をだしちゃいないってのが気に入ったよ。特別サービス!」
小声でアレクシードに耳打ちすると、女主人はにこやかに微笑む。
「ま、まいったな・・・・」
女主人の言葉に動揺しながら、アレクシードは店の奥の部屋でフードを取り、セクァヌにその首飾りをかける。
「お嬢ちゃん・・。」
「似合ってる?」
「ああ、とっても。」
「ありがとう、アレク。」
嬉しそうに抱きついてきたセクァヌをアレクシードも満足げに抱きしめた。
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