ゾンビの宴会は楽しく続行中?|創世の竪琴・その28
「まっ、もう一杯!・・・なかなかいけるじゃないか。」
「ぷはぁーっ!」
「ようようよう!」
「いっき、いっき、いっき!」
墓場ではまだ和気あいあいと宴会が続いていた。
「次、42番、『魔界音頭』いきまーす!」
「よっ、いいぞ、ゾンビちゃ~ん!」
「お次は渚ちゃん、歌ってくれよな?」
「そうだ、俺とデュエットしよう!」
「あっ、イル、抜け駆けはずるいぞ!」
2人は幻影とは全く気づかず、渚を真ん中に挟んで上機嫌。
その宴会はいつまでも続か②思えたが・・・
『ご・あ・あ・あ・あ・あ・あ・!・』
突然、紅蓮の炎が辺り一帯を焦がし、ゾンビは一瞬にして焼け失せる。
後に残ったのは火傷を負ったイルとギームのみ。
「な・・・何だ、何だ?」
「何があったんだ?・・・・あれ?渚は?」
酔いもすっかり覚め、イルは姿の見えない渚を探して周囲を見回した。
そこには大きな銀色の狼、女神ディーゼの守護獣『ルーン』がいた。
『何をしているのだ、このようなところで?』
「な・・何って言われても・・・・」
「な、渚は?・・・渚がお前を呼んだのか?」
『渚の悲鳴のような声が聞こえ、急ぎ転移して来たのだが・・・・ここにはいないようだな?』
「そ、そうだ、渚ちゃんは?」
ようやくギームもそのことに気づき、辺りを見回した。
が、そこには墓石があるばかりで渚の姿はどこにも見当たらない。
「くっそう!まんまと罠にかかっちまったってことか!」
今頃気がついても既に遅すぎた。
後悔先に立たず。
2人は己の不甲斐なさを呪った。
『ふむ・・・生気を森に吸い取られておる。この姿では無理のようだ。』
そう言うと、大きなルーンの姿は、一瞬にして小さな犬になった。
「これでいい。さあ、渚を助けに行こうではないか。」
「ああ、イル、急ごうぜ。なんかやばい気がする!」
「そうだな。ルーン、方向が分かるか?」
「闇の波動を辿っていけばいいだろう。」
急いでヒールの魔法をかけると2人はルーンと共に駆けだした。
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