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覚悟の敵地訪問|国興しラブロマンス・銀の鷹その15

そして、その2日後、セクァヌとアレクシードは2騎のみでサクールの領地を目指し戦場跡を駈けていた。


サクールの領地に程近い丘陵地に、彼らの野営地が設けられていた。

「父上、明日はスパルキアとの和議締結ですね。」

「ああ。お前には苦労をかけるが。」

「とんでもない。国のためになるのなら私は喜んで従います。
それに相手はガートランドではなくスパルキアですから。」

が、人質同然には違いない、とサクール王は寂しげな瞳で我が子を見つめる。

「大丈夫ですよ、父上。銀の姫はそんな方ではないと私は思ってます。」

「・・・そうだな。」

噂に名高い銀の姫率いるスパルキアなら、人質扱いにはしないだろう、サクール王もそう思いなおしす。

翌日には和議締結にスパルキア軍が来る予定だった。その夜、王はようやく回復した息子、カシュランと話していた。

「申し上げます!」
テントの外で従者の声がした。

「なんだ?」

「はっ、スパルキアが陣をひいていると思われる方角から、馬が2騎こちらへ向かってきております。」

「馬が2騎?」

「はっ。」

バサッと垂れ幕をあけて、カシュランは外へ出る。

そこへ見張りに立っていた兵士がかけつけ、ひざまずく。

「スパルキアの者と名乗る者が2名、王に会いたいと申しておりますが。」

「スパルキアの?」

続いてテントからでてきたサクール王を振り返り、カシュランは父王の命を待った。

「イスを。」

「はっ!」

サクール王は、テントの外にイスを用意させると、カシュランと共にイスに座り、彼らを待つことにした。


-カポ、カポ・・・-

サクール王とカシュラン、そして、側近と兵士らが見つめる中、彼らはゆっくりと馬を駆って近づいてきた。
そして、テントの5m程手前で馬から下りる。

松明に灯され、彼らの風貌が分かる。

「戦士アレクシード?」

その途端ざわめきが聞こえる。
背中に大剣を背負ったその男は確かにスパルキア最強の戦士にして銀の姫の従者であり護衛。

名実共に大陸全土に知れ渡っている人物。
なぜそれほどの人物がここへ?と不思議に思い驚く。

そのアレクシードが王の前に進み出ると誰もが思っていた。
が、アレクシ-ドをその場に残し、王の前に進み出たのは、もう一人の小さな少年兵・・・。

もし、兵なら、と全員思いつつ、近づきつつあるその少年を見ていた。

フードをかぶっていて顔はみえないが、その背格好から判断して、王子であるカシュランより年下だと誰もが感じていた。

「そなた・・・あの時の?」
突然カシュランが大声をあげて立ち上がる。

「カシュラン?」

「父上、この少年です。私たちが倒れそうだったところを助けてくれたのは。命を繋いだ水をくれた少年は。」

カシュランは怪訝そうな顔で自分を見上げる父王に嬉しそうに話した。

「そうだったのか?」

「はい。」
そして嬉しそうにセクァヌを見る。

「もしかしたらとは思っていたが、そなたやはりスパルキアの者だったのか。しかし、そのように若くて兵士だったとは。」

嬉しそうに話し掛けてくるカシュランに軽く会釈をし、王の面前まで進み出、貴人への礼をとるとその少年はすっとフードを取った。

「な、なにっ?!」

そこに立っていたのは月明かりに照らされ、銀色に輝く髪の少女。
そして、月の光を弾く銀の瞳。

誰もが驚いて呆然とする。
と同時にアレクシードが付き従っている事に納得する。

「あの折は、名も名乗らず失礼致しました。」

にっこりとカシュランに微笑むと、セクァヌは王へと視線を移し今一度頭を垂れ言葉を続けた。

「サクール王には初めてお目にかかります。私はスパルキア族長、セクァヌ=リー=セシオノーラと申します。」

「・・・・」そこにいた全員言葉をなくしていた。

セクァヌの取っている今の行動が理解できなかった。
和議を締結する予定といえ、その本拠地へ単身乗り込んでくるとは。


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