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野営地にて|国興しラブロマンス・銀の鷹その12
セクァヌは、予定より随分遅く野営地へと戻った。
戦のことは考えても仕方がない。
セクァヌはその思いを心の奥に無理やり押し込むと、ともかくペンダントを渡すべくその兵士を探す。
「あ!確かあの人だ!」
友人に説き伏せられたのだろう。
がっかりと肩を落とし、その兵士は勝ち戦でにぎやかに酒を酌み交わしている輪から離れて座っていた。
「ほら!お前も呑めって!」
彼を止めていた男がその男に酒をすすめる。
「いらん。」
「なー、マーシュ・・・気持ちは分かるが・・手柄でも立てて喜ばせてやるって手もあるぞ?」
「トミー・・・」
「あの・・・・」
2人は遠慮がちに突然かけられた声の方向を見る。
「誰だ?」
「あの・・・違ったらごめんなさい、これ・・・」
少し声を低くして言いながら、セクァヌは拾ってきたペンダントをマーシュと呼ばれた男の前に差し出す。
「こ・・・これ・・・・・?!」
驚きの表情でペンダントとセクァヌを見る。
その顔は確かにそれが問題のペンダントだと示していた。
「よかった。間違ってなかった。」
「あ、ありがと・・・・」ペンダントを受け取りながら、マーシュは怪訝そうにセクァヌを見る。
勿論それはもう一人の男、トミーも同じだった。
「掃除屋・・・か?ひょっとしておれ達の話を聞いて?」
「ごめんなさい、つい耳に入ってしまったから。」
「で、いくらなんだ?」
「え?」
「だからこれの代金だよ。
あんまふっかけんじゃねーぞ。オレたち持ち合わせなんてそうないんだからな。」
ああ、そうか、とセクァヌは納得する。
戦場の掃除屋と呼ばれている彼らは、ただ単に物色して拾っていくだけでなく、探し物の依頼も受けることがあるということを思い出していた。
足元を見て彼らは結構な金額を要求するらしいことも。
「あ、私はそういうんじゃないから。」
「あ?・・・私って・・お前、男じゃないのか?」
ぐいっとトミーがセクァヌに近づく。
「そういや男にしちゃ細いよな。それにまだ子供みたいだし・・・。」
(いけない、ばれそう。)
思わずセクァヌはぎくっとした。
「女の子のわけないだろ、こんな戦地に。仲間と一緒か?そこらにいるのか?」
「えっと・・・」
「早くずらからないと上のお偉いさん方に見つかったらやばいぞ?」
「えっと・・・あの・・・」
どう言おうか迷っていると、前方にアレクシードの姿を見つけたセクァヌは、今一度、そしてさっきよりさらにぎくっとする。
こんなに長い時間離れていたことはなかった。
恐らく心配して怒っているであろう事は、予測できた。
返事もせず前をじっと見ているセクァヌにマーシュもトミーも彼女が向いている方向を見る。
「あ!あれってアレクシード様じゃないか?」
「ああ!そうだ!姫のおつきのアレクシード様だ!」
「カッコいいよなー。」
「ああ、ホントだよな。オレもいつかあんな風になれたら。」
「で、銀の姫のようなかわいい子を守るってか?無理無理!」
「んにお?自分に彼女がいるからってお前は~~!!」
アレクシードへの賛辞をセクァヌは自分のことのように嬉しく聞いていた。が、当の本人が自分達のほうに向かって歩いてきたことにまたしてもぎくっとする。
「でも、めずらしいよな、アレクシード様が姫様と一緒じゃないなんて。」
「そうだよな。・・って、おい、こっちに向かってきてないか?」
「あ、ああ・・・」
2人はもうフードをかぶった掃除屋の少年だか少女だかわからない子供のことなど忘れていた。
そして、そんな2人の目の前に戦士・アレクシードが立つ。
-ザッ-
あこがれの戦士を目の前に、直立不動の体勢をとる。
「アレクシード様が何の様なんだ?」
「俺たち何かおかしいことやったか?」
「アレク……」
厳しい表情のアクレ九シードをまえに、3人それぞれに緊張が走る。