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戦場での落とし物|国興しラブロマンス・銀の鷹その10
-カポ、カポ・・-
レイガラント軍と無事合流し、ガートランドによって占拠されている街の1つを解放したスパルキア軍は、次の目的地へ向かう前、陣を張って休憩をとっていた。
セクァヌはその陣営の中を愛馬イタカに乗って回っていた。少年の服装に軽い胸当てのみ、大き目のフードをかぶり、ほぼ上半身を隠した格好をしていた。一人で見回るときはほとんどそうしている。
「おい、待てよ!」
「放してくれ!」
「バカ言うな!勝手な行動は軍紀違反だぞ。」
「だけど・・・」
少し離れてはいたが、そんな会話がセクァヌの耳に入った。聞くべきではないと思いつつ、何か気になってセクァヌは木の陰で聞き耳をたてる。2人の若い兵士がこそこそと話していた。
「あいつがオレの無事を祈ってくれたものなんだ。だから・・・」
「今更戦場に戻ってみたところで、あの広さだぞ。見つかるわけないじゃないか?それに、負傷した敵兵や様子見などもいるはずだ。敵と出くわしたりしたらら・・。」
「だけど・・・あれは・・あのペンダントはあいつが自分の髪を売って買ってくれたものなんだ。オレがあいつにプレゼントした指輪と同じブルーサファイアの・・・。小さな石で高いものじゃないが、オレにとっては何よりも代え難いものなんだ。」
友人らしき兵士はその男の肩をぽん!と叩く。
「・・・お前がわざと失くしたんじゃないってことは、彼女だってわかってくれるさ。
それより軍紀違反などしたら手柄も何もあったもんじゃない。その方が悲しむんじゃないか?」
そこまで聞いてセクァヌはハッとした。引き上げてくる途中の草むらで何かが青く光っていたような気がした事を思い出していた。
-ドカカッ、カカッ・・・・-
その兵士が意味する物ではないかもしれなかった。が、セクァヌはつい2時間程前まで戦場だった丘へと馬を飛ばした。
-カカッカカッ・・-
「確か、この当たり・・・・」
戦場跡は、双方の兵による様子見もあったが、掃除屋と呼ばれる輩が使えそうな獲物を持って行くことが多い。すでに拾われている可能性もないわけではなかった。
「え~っと~~・・・・」
とん!と馬から飛び降りるとセクァヌはその辺りを探し始めた。
「あ!あったっ!」
30分ほど探しただろうか、踏まれて倒れた草に埋もれるようにそのペンダントはあった。切れてしまった鎖についた小さな石が青く輝いている。
「よかった。でも、本当にこれなのかしら?」
石を手に取りそんなことを呟いていたセクァヌの耳に、複数の蹄の音が聞こえる。
「敵か?味方か?」
平地のそこにはこれといった隠れる場所はない。
多少地面の起伏はあるというものの、至近距離からでは分かってしまう。
姿を隠す場所はない。
-ぶるるるる・・・-
迷っている時間はない。
セクァヌは馬に飛び乗ると、足音が聞こえてくる方向へ向かって疾走し始める。
敵に後ろをみせるより真っ向から攻撃していった方が有利になる。
-ドカカッ!カカッ!-
敵か味方か分からない、いや、おそらく敵である可能性が高いその音に向かってまっすぐに彼女は愛馬を駆った。
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