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『白虎の路』 甲州街道とうりゃんせ 1
その1 「プロローグ」
あらすじ
世紀末も近く、世界の終わりが巷で囁かれ出した時代、二十五歳の秋、直人達は若さを持て余し、毎夜、渋谷、恵比寿、六本木と遊び回っていた。
短大を卒業した奈津子は、勤め先で妻子持ちの上司との不倫関係に戸惑い乍らも、「妻とは別れるから一緒になろう・・」などという、その場凌ぎの言葉に戸惑い始めていた。
優柔不断な不倫男の嘘に翻弄され乍らも、軽率な直人の過去に嫌悪する奈津子の揺れる心。
すれ違い、往き違う中で、二人の想いは、引き合い反発し合い乍ら、中央道を往き来する。
白虎が見守る甲州街道 とうりゃんせ♪ 、そんな二人の歯がゆくも愛しい想いの結末は・・
プロローグ
1.中央道
土砂降りの豪雨の中,中央道を河口湖から大月を抜けて、八王子方面へと向かう一台の車があった。 時間は、午前零時を回っている。
「うぉーっ。。。」
青年は、流れる涙もそのままに、叫びながらステアリングを握っていた。
その絶叫と涙を掻き消すかのように、雨がフロントガラスを叩き付け、背後では直列4気筒DOHC16バルブのエンジンが地面を叩き付けるように咆哮を放っていた。
MR2 G−Limited、その型式からSW20とも呼ばれるこの車は、日本車だがフェラーリやランボルギーニのように、背中でエンジンが息づいているミッドシップレイアウトの国産スポーツカーだ。
浅川直人、それが彼の名前である。
甲州街道は、その昔、陰陽道で云う四神の白虎が居るとされ,中馬による陸上運送によって栄えた。中央道は,その甲州街道沿いに連なってできた道路である。
そんな白虎に守られながら、往きは二人、帰りは独り、いったい何度この街道を通ったことだろう。
その2 「回想」に続く