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『白虎の路』 甲州街道とうりゃんせ 3

その3 「出逢い」



出逢い

1.渋谷で待ち合わせ

 当日、宮下公園沿いの道路に車を停めて、秋彦がハチ公前まで、利紗世たちを迎えに行った。

東野はワーゲンポルシェ914、北村はBMW2002、そして直人はシボレーアストロ、いずれも年式は古いがフルレストアされて新車同然の車ばかりだ。
秋彦は、ガレージを借りていなかったので、ワーゲンバスは実家に置いたまま,その日は東野のワーゲンポルシェ914に便乗して来ていた。

 ワーゲンポルシェ914は、ミッドシップレイアウトのオープン2シーター、BMW2002は、一見、只のセダンだが速度無制限のアウトバーンを安定して走れるように作られた、謂わば羊の皮を被った狼だ。

 直人がリーバイス505のポケットから、くしゃくしゃのラッキーストライクを出して半分ほど吸い終わったところに、秋彦が女の子達を連れて戻ってきた。

 ジーンズはリーバイスのストレート、505か502、501はボタンフライがどうもしっくりこないので、滅多に穿かない。そのジーンズの左腰骨あたりにあるベルトループにバンダナの端を括り着けて、いつもだらりとぶら下げている。
そして、煙草はラッキーストライク以外吸わないのが直人定番のスタイルだ。

「うっす、おまたへぇー ・・・」

 秋彦が言い終えないうちに利紗世(吉川利紗世)が奇声を上げた。

「きゃはぁ、アストロじゃん、私これに乗るぅ〜! 奈津子も乗んな!」

2.第一印象

 奈津子(桐嶋奈津子)、身長150センチ足らず,瞳はくりっとして、不自然ににビューラーで立ち上げられた睫毛の所為で、玩具の人形のようにパッチリ、その下に、これまた不自然なくらい丸い団子っ鼻がくっついている。

 ”なんだこいつ、可愛いんだか、ブスなんだか、よくわかんねえな。。
こいつが奈津子? まいっか。(笑)” 直人は、そう思った。

 奈津子を呼び寄せたまま、利紗世は秋彦を引き込んで直人のアストロのセカンドシートに乗り込んだ。

「奈津子、あんた助手席に乗んな!」

「ふぁあー、なにそれっ!」

 奈津子が少し怒った振りをして言った、しゃがれた声が鼻から脳天に抜けるような、この “ふぁあー” と、その仕草は、妙に可愛くて直人の心の奥を擽った。

 直人は、この前の電話で秋彦が言っていた意味が漸く分かったような気がした。 と云うより、直人本人は、まだ気付いていないが、実際には、この瞬間、既に奈津子の底知れない魅力に取り憑かれていた。
しかし直人は、そんな自身の心の動きには気付かないまま、豊満なスタイルを尚更、誇張するように身体にピタッと張り付いた出で立ちで、ルックスも実際、フェロモン剥き出しと云った感じの高里愛へと視線は注がれていた。

 高里愛が東野の助手席に乗り込むのを見届けた頃、秋彦が言った。

「んじゃ、とりあえず山下公園でも目指しますかぁ」

 高里愛は東野博士のワーゲンポルシェ、残るもう一人、香取彩は北村伸也のBMWへとそれぞれ乗り込んだ。

午後11時にハチ公前で待ち合わせたはずなのに,宮下公園を出発した時、時刻は既に12時半を廻っていた。

その4 「4対4プチコンパ発進」に続く


#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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