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麻雀は自分を映す鏡

退院の日から2ヶ月が経った。

一人で暮らす美里を心配したまどかは、退院から毎日のように美里のもとへやって来た。

まどかは、美里の部屋が大好きだった。
とても居心地が良く、温かい空気でいっぱいの部屋。
どんなに仕事で嫌なことがあっても、この部屋へやってくるとささくれだった心が癒やされるのだった。

「毎日申し訳ないわね。私なら大丈夫なのよ?」

美里がまどかを気遣う。しかし、まどかは全く意に介さない。

「私が好きで来ているんです。気にしないでくださいね。それに、たまには井上の顔を見たくない夜もあるんです。」

夕食の食器を洗いながら、まどかが笑う。

「井上くんとはうまくやっているの?」

美里の問いを、まどかは聞こえないふりをした。

付き合い始めてから数ヶ月が過ぎた二人。相手のことを少しずつ知っていき、ますます恋が燃え上がるときめきを感じる反面、少しずつ相手の粗も見えてきた。
当の井上はそんな思いなど知る由もないが、それが余計にまどかのストレスとなったようだ。

「店長、次の通院はいつですか?もしお休みが合ったら一緒に付き添いますよ?」

「今、私の話を聞こえないふりしたでしょ?うまくいってないの、井上くんと?」

洗い物を終えたまどかは、テーブルを挟んで美里と向き合った。

「うまくいっていないことはないんです。ないんですけど、なんかイライラすることが多くなっちゃって。」

まどかの表情は浮かない。

「そっか。まぁ、そんなこともあるわよね。女と男だも…ゴホッゴホッ。」

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