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また静岡に行きたくなった。

勝って得られるものは「人」

長いことアマチュア競技者として競技麻雀の世界にしがみついていると、何かの拍子にポンと大会に勝つことがあります。

地方の予選を勝って、遠くに行くことが出来たなら。
そして、そこで一生懸命麻雀を打つことが出来たなら。
きっと、とんでもなく大きなものを得られることと思います。

と、今日はそんな話を書いてみたくなりました。
そんな気持ちになるような戦いを見せていただいたからです。

私が初めて大きな予選会に勝って東京へ行ったのは、二十歳の時の麻雀最強戦読者最強位決定戦。

この頃の私は怖いもの知らずのお兄ちゃん。
全国から集まった150人くらいのアマチュア強豪を向こうに回して、無我夢中で戦って全国16位になりました。

その大会の模様を取材に来ていたのが、確か竹書房を退職してフリーになったばかりの福地誠さん。
私の競技麻雀人生は、福地さんとの出会いがきっかけで広がっていきました。

福地さんが、
「せっかく遠くから来たのだから」
と、連れて行ってくれたのが、高田馬場にあったフリー雀荘「たぬ」の1号店。
そこで、「親方」こと山崎一夫と引き合わせてくれました。

「また遊びにおいでよ」
と気さくに声をかけてくださった親方。
これがきっかけで、長期の休みが取れたら友人を連れ立って東京へ遊びに行く機会が出来ました。

東京にいる時間の9割は高田馬場にいて、その内8割は麻雀。
都合、東京滞在時間の72%は麻雀を打っている計算です。

先日、近代麻雀でも記事が載っていた「ポリエステル100%」という伝説の「ギャル雀」も怖いもの見たさで何度か遊びに行ったこともありまして、多分、あの時に清水香織プロや小林剛プロとすれ違っていたのかもしれませんね。

その後、連盟の麻雀マスターズ、最高位戦の發王戦や協会の日本オープンの権利を取って東京へ行きますが、その度にたくさんの方と知り合うことが出来ました。
もうこの頃には「大会に勝ちたい」という気持ちと同じくらいに「今度はどんな人に出会えるのだろう」ということに、胸を躍らせていました。

東海の雄、鈴木郁孝プロ。

時は流れて。
昨年、いろんなめぐりあわせから静岡のいとうメルさん、マツキヨさんというアマチュア強豪と知り合って、静岡へ伺う機会を得ました。

以前にも簡単な旅行記を書きましたが、連盟の静岡支部というところは(私にとって)とても居心地の良い場所で、日一日と時間が経つたびに、会いたい人への思いが強くなっています。

まぁ、その内8割7分は平岡理恵プロですが、今日はその話はやめておきます(笑)。

冗談抜きでまじめにお話しすると、静岡という場所はとんでもなく「麻雀に熱い場所」で、麻雀に向き合う「姿勢」が素晴らしい方が多かったという印象がありました。
なんというか、その方々が生み出す空気がとても心地よかったのです。

それはそうです。
私が尊敬する望月雅継プロが、仲間と共に20年の歳月をかけて作り出した場所ですもの。

そして、本来であればその場を継いでくださった中支部長代行にお会いしたかったのですが、めでたいことにタイトル戦を勝ち上がって不在。
代わりに相手をしてくださったのが、副支部長の鈴木郁孝プロでした。

(一番右が鈴木郁孝プロ)

麻雀の強い人って、もう打たなくてもわかるんですよね。
その場の佇まいとか、姿勢とか、雰囲気とか…。

あぁ、大会では当たりたくないな、と(笑)。

そんな雰囲気をまとわせた強者が鈴木プロでした。

ただ、実際にお話してみるととても明るくて優しい方。
麻雀に対する思い入れも大変に強く、同じビジョンを思い浮かべながら熱をぶつけあえるような信頼できる方でした。

その鈴木プロが、静岡のプロリーグを勝ち上がって、本日夏目坂の舞台に登場しました。

同年代のキャベツ太郎さんも、どうやら推しは鈴木プロ。
我々中年…いや、初老の期待の星は鈴木プロなのかもしれません。

しかし、結果は既報のとおり、壮絶な最終戦を再逆転で勝ち切った川崎義之プロが優勝。
応援している身としては残念の一言に尽きるわけですが、競技麻雀に真摯に向き合う者としては、この度の戦いの着地点はそんなところにはないわけです。

麻雀打ちの本懐

「今回は4年前より皆さんの熱い声援が届いていました。」

もちろん、ご本人は勝ちたかったと思うのです。
今頃、負けたてほやほやのアッツアツの頭をどのように冷やそうか、悶絶しているはずです。

しかし、Twitterに紡ぎ出されたこの一言に、私は鈴木プロの「本懐」を観たような気がするのです。

「本懐」とは、その人の心からの願いを意味します。

自分が良い戦いをすること、その上で勝ち切ることはプロとしての至上命題だったでしょう。
ただ、副支部長として精力的に活動し、多くの方と触れ合うことで広がった人たちに応援してもらえることがどれだけ素晴らしいことなのか、それを実感なさったのではないかと私は感じました。

プロの世界は勝たねばなりません。
負ければ灰も残らない…その考え方は否定しません。
でも、鈴木プロのみならず、壮絶なデッドヒートを戦った太田プロや、決勝の舞台を初めて踏んだ栗島プロもまた、素晴らしい戦いぶりでしたから、今日の4ゲームは必ず明日に繋がるものと私は考えます。


6ピンを勝負していったこの場面。
結果は裏に出ましたが、まっすぐに冒険できるのが男の子ですもの。
力強く河に6ピンを置いた姿、格好良かったと思います。

鈴木プロ、ナイスファイトでした。

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