ほっかいどう暮らし37 苫小牧の小さな映画館 シネマトーラス
今年のお正月に苫小牧のシネコンで「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を観てきました。
実は「鬼滅の刃」についてはマンガもアニメも観たことがなく、ほとんど興味もなかったので知っていることといえば
「主人公の少年が鬼と戦う話」
くらいのものでした。
それがなぜ映画館で映画を観ることになったかと言いますと…。
元日に妻の実家でお酒を飲んでいたところ、「鬼滅の刃」にハマっている中学生の姪が、僕に鬼滅について熱く教えてくれました。
その中で「炭治郎の妹の禰󠄀豆子は鬼になってしまったので、人を噛まないようにいつも竹を咥えている」との説明がありました。
ん?竹を咥えている?
そういえばおじさんが昔読んだ「猿飛佐助」という漫画に、竹かどうか定かではないが敵方に
「うどんこプップのすけ」という忍術使いがいて、こいつも竹みたなものをいつも咥えていたわ。と言ったら
「おじさんとは話が合わない」「無駄だった」と言われたので、「わかった、悪かった。明日映画観てくるから」と約束をし、翌日映画館へ足を運んだ次第です。
映画については、やはり背景を知らないので最初の方は楽しめなかったのですが、途中(川面に映った炭治郎の影が「起きて戦えー!」と叫ぶあたり)から映画の迫力に引き込まれ、ラストでは不覚にも泣いてしまいました。
やっぱり映画、好きです。映画館も大好きです。
小学生のころから映画が好きでした。まだビデオもDVDもない時代、テレビで放送していた洋画を観るのがなによりも楽しみでした。
特に好きだったのは「水曜ロードショー」と「日曜洋画劇場」。
水曜日の水野晴郎さんの最後のセリフ「いや~、映画ってほんとにいいもんですね」と、日曜日の淀川長治さんの名セリフ「さよなら、さよなら、さよなら」は今でも忘れられません。
アランドロン、ステーブマックイーン、ポールニューマン… なんてかっこいいんだろう。大人になったらこんな人になりたいな(結局無理だったけど)。
オードリーヘップバーン、ジュリーアンドリュース、マリリンモンロー…この世にこんな綺麗な人がいるのかと、母親と見比べてため息ついていました。
「小さな恋のメロディ」のトレーシーハイドに恋心を抱いていたのもこの頃でした。
中学生ともなると少ないお小遣いを握りしめて月に1本だけ映画館へ。お小遣いが足りない時は映画館の前に貼ってあるポスターや映画のワンシーンを写した小さな写真をずっと眺めていました。
洋画専門の月刊誌「ロードショウ」と「スクリーン」、2冊は買えないので中を立ち読みしてどちらか1冊買ってはずっと読んでいました。時に「エマニエル夫人特集」など中学生には刺激の強い号もありましたが、迷わずそちらを購入してました。
高校の頃は、札幌の名画座でリバイバル映画を3本立て500円で観ることができたのでよく通っていました。たいてい3本の内1本は封切り時話題にもならなかった映画でしたが、それが「当たり」の時はかなり得した気分になったものです。(昔は封切りの映画も二本立てで2本目の方が面白かったなんてこともよくありました)
黒澤明監督の「七人の侍」がビデオ化される少し前に、『映画館では最後となる上映会』が札幌の割と小さめの映画館で行われたのもこの頃でした。
最終日に観に行ったのですが、席は満席で後ろの立ち見もいっぱい。僕も含めてたくさんの人が通路の階段に座って鑑賞しました。(今だったら消防法とかで絶対無理でしょうけど)
長い映画なのでお尻が痛くなりましたが、上映後に館内が大きな拍手で包まれたのがよい思い出です。
やっぱり映画館はいいな。
大学に入った辺りからレンタルビデオが普及し、それに伴って映画館の閉館も増えました。
僕も学生の頃は時間があると渋谷や三軒茶屋に映画を観に行ってましたが、社会人になり、結婚して子供ができると次第に映画館から足が遠のいていきました。
苫小牧市内にかつては6館あった映画館も、現在ではイオンSC内のシネコン「ディノスシネマズ苫小牧」さんと「シネマトーラス」さんの2館となっています。
シネマトーラス
シネマトーラスさんはボウリング場1階の一角にある、座席数40の小さな映画館。
シネコンでは上映されないような小粒な、しかし内容の優れた作品を厳選して上映しているそうで、劇場の運営も代表の堀岡さんと数人の市民ボランティアによって支えられているとのことです。
開館は1998年。20年以上も続くこの映画館の存在は僕も知ってましたが、ちょっとマニアックな佇まいに入館を躊躇し、一度も行ったことがありませんでした。
しかしどうしても観たい映画があり、初めて同館を訪れたのは2020年6月。
実際に入ってみるとなんだかレトロでアットホームな感じ。受付の横に小さなロビーがあり、壁中に上映予定候補のポスターが貼ってあります。映画を観に来たお客さんの投票も次回上映作品の参考にされるのだそうです。
もともと少ない座席数ですが、コロナ対策のため半分になっていました。(換気や消毒などコロナ対策は徹底されていました)
シネコンに比べたらもちろん小さいスクリーンですが、音響もよく十分楽しめました。狭さからくる「シネコンにはない緊張感」があり、小さな映画館ならではの良さを感じます。
この時観た映画は「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」。
息が詰まるような緊張感の中で発せられる「頭のいい人達の言葉のバトル」についていけたかどうかわかりませんが、「入場料分の元は取ってやろうと」かなり集中して観ていたので、いくらかわかった気になっていました(笑)
上映後に「お手洗い」に行ったのですが
お手洗いまでの通路が「小劇場」ぽくって、ちょっと心惹かれました。
シネマトーラスさんも長い歴史の中で、何度か閉館の危機に見舞われたようです。しかも昨年は新型コロナウイルスの影響で一月半の休館を余儀なくされたとのことでした。
地方都市の文化を支え、頑張っている小さな映画館を僕もできる範囲ですが応援したと思います。
おしまい。