北海道のむかし話13 羊蹄山の伝説
ようていざんの伝説
天地創造の時代、暗い海原には、どろどろとした物体が、うごめいていた。
その中から陽炎のように立ち昇っていく気が、空となり、残ったどろどろとした物が、凝こり固まり堅くなって一つの岩となった。
その岩も次第に大きくなり、海の上に突き出て岩山となった。
その岩山の上に一人の国造りの神が現れ、しばらくすると今度は天空の雲の中から、五色の雲に乗って美しい清らかな女神が現れ、岩山の国造りの神の傍に降り立たれた。
二人の神様は、この五色の雲のうち、黒い雲を海へ投げ入れ巌を造り、黄色の雲でその巌の間をうめて、土を造り、白い雲を海に投げ入れて魚貝にされた。
それから青い雲をもって、地上の草木をつくり、赤い雲は地中に埋めて金銀宝玉にされたという。
こうして、国造りを終えた二人の神様は、この国土を誰にまかせるかを話し合っているとき、一羽の梟が飛んできて、大きな目で何かを二人の神に伝えた。
これを見た神様は、何事かをさとり、二人の神は夫婦となり、多くの子をつくられた。
そのうちの一人には、ペケレチュブという日の神を、もう一人には、クンネチュブという月の神になるように命じられた。
日の神は、後方羊蹄山(雌岳)から、月の神は雄山の羊蹄山から雲に乗って天空に昇り、暗い下界を日の神と月の神とが変わるがわる照らすようになり、下界は、やっと昼と夜とができ、それぞれの万物の営みが始まった。
これを見た国造りの二人の神は、安心して天に帰っていかれたということです。
国造りをされた神が初めて降り立たれたところが、今の羊蹄山(後方)の頂いただきであった。
更科源蔵 アイヌ伝説より
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