“生涯にわたって活躍できるまち“東川町の「しごとコンビニ」
東川町は、大雪山を望む田園風景が美しい豊かな自然環境や景観をいかし、写真文化によるまちづくりを推進し、現在は写真のみならず「多様な文化と人の交流による地域の活性化」という新たな取り組みを進めています。
また、魅力的な宅地造成や生まれた子供に手作りの椅子を送る「君の椅子」事業などの特長的な取組により、平成7年から人口が増加に転じ、豊富に湧出する良質な地下水による暮らし、充実した子育て支援や特色ある教育環境づくりにより、自分らしい豊かな暮らしに共感する人が増え、近隣市町村や首都圏との二拠点生活を目的とした移住者も増えてきている町です。
東川町では、こうした移住者や外国人も含めた町民ひとりひとりが個性豊かに生き、生涯にわたって活躍できるまちを目指し、2020年に全道で初めて業務委託型短時間ワークシェアリング事業「しごとコンビニ」を導入しました。
この事業は、単なる人材不足の解消だけではなく、地域に働く環境を生み出し、持続可能な地域経済の確立や、“しごと”を通じて若者から高齢者まで多様な人の望む生き方の実現を目指しています。
「しごとコンビニ」のしくみとは?
しごとコンビニは、仕事を依頼する側がしごとコンビニ事務局と業務委託契約を結び、事務局が受託した業務をしごとコンビニに登録した町民に再委託する仕組みとなっています。依頼主と働く町民との間に雇用関係がないため、事前にしごとコンビニ事務局で業務についてヒアリングを行い、業務の手順書を作成し、事前に稼働者が業務の流れややり方を理解した上で業務に臨みます。
そのため、依頼する側が採用や研修、労働管理などにかかる手間とコストを軽減することができるほか、町民に働いてもらう安心感や町民に自分の事業を知ってもらう機会となる効果があります。
農作業などの季節的な業務や一時的な軽作業などに人手を要する事業者のほか、家事代行、雪かきや草取りなど、生活する上での困りごとや、人に頼みづらいちょっとしたことを、専門の業者に依頼するよりもリーズナブルな料金設定で依頼することができます。
一方、「しごとコンビニ」で働きたい町民は、メンバー登録を行うことで仕事の情報が配信されるので、自分で仕事を探す手間が省けるほか、面接や履歴書が必要ないことや、働く場所が自宅から比較的近い業務が多く、通いやすく、働きやすいというメリットが多数あります。急な用事や体調不良時におけるメンバー間での交代や、子ども同伴可能な業務など、自分に合った条件の仕事を選んで仕事することができます。
また、しごとコンビニ事務局では、事前に体験会の開催や、パソコン講座などの勉強会も実施しており、町民の仕事スキル向上にも取り組んでいます。
しごとコンビニのメリット
「しごとコンビニ」は、子育て中や定年退職後など、フルタイムやパートタイムで働くことに制限があっても「少しだけ働きたい」という町民のニーズと、繁忙期や自分たちではできない作業などを「少しだけ手伝ってほしい」という依頼主側のニーズを、しごとコンビニ事務局が両者のヒアリングや仕事の細分化を通してマッチングすることで、「働く」を通じて地域と人をつなぐ仕組みです。
雇用契約であるパートやアルバイトと違い、働きたい町民が個人事業主として業務委託契約を結ぶため、仕事をするかしないか、納期の範囲内で働く時間を自由に采配できるため、コンビニのように自分自身で働き方を選ぶことができる一方で、依頼する側も必要な時だけ、少ない手間と経費で人手を確保することができます。
「しごとコンビニ」への期待
東川町では、「しごとコンビニ」を通じて、将来、小さな挑戦から身近な幸せを感じられる町民を増やし、事務局は相談を通して、町と町民を繋げて「やりたい」を叶えられる場所を増やす、そして町内ですべて賄うことのできる「なんでも地産地消できるまち」を目指しています。
令和4年度の稼働者数が837名(延べ人数)となっており、9割程度マッチングすることができている状況です。
これまでの事例では、定年退職後に、この「しごとコンビニ」を通じて、地域の人と繋がることができ、地域で働くことで心配していた健康と生活維持を叶えることができたという声や、出産や子育てにより働いた期間にブランクがあった主婦が「しごとコンビニ」を経て働く自信を持ち、その後フルタイムで働けるようになったなど、町民ひとりひとりが個性豊かに生きるための柔軟な働き方の提供につながっています。
仕事で「お金を稼ぐこと」以外に「人とのつながりができる」、「自分の望みが叶えられる」など新しい暮らし方や、活躍の機会を提供できることは、東川町の住みよい環境の確保に繋がり、ますます将来に向かって活力ある町になっていくことが期待できるとともに、これからの「しごとコンビニ」に大きな可能性を感じました。