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国宝指定を契機に白滝ジオパークを核とした交流人口拡大へ
「大地の公園」を意味するジオパークは、科学的に重要で貴重な価値を持つ地形や地質を保全するとともに、持続可能な発展を推進する地域のことです。大地(ジオ)の上に広がる生態系(エコ)の中で人々の暮らし(ヒト)が営まれていることから、「ジオ・エコ・ヒト」の3つの要素をつなぐ地域資源の総称でもあります。
ジオパークは、その保護に取り組むことだけではなく、多くの方々が大地の成り立ちについて知識を深め、自然と人間の共生を深く理解する場所として活用を図ることが重要であり、歴史や地質など各地域の特色を活かしながら、貴重な地域資源として、ツーリズムなど観光振興や地域振興に繋がることが期待されるとともに、環境教育のほか、火山災害などの防災教育における教材として活用されることが求められています。
北海道内では、日本ジオパークが6か所、ジオパークの認定を目指す地域が1か所あり(令和6年2月現在)、ジオパークを活かした地域づくりに取り組んでいます。
オホーツク管内遠軽町の日本最大の黒曜石の産地である「白滝ジオパーク」では、「北海道白滝遺跡群出土品」1965点が、令和5年6月に国宝に指定され、大きな注目を集めるなど、今後の地活性化への起爆剤となることが期待されています。今回、国宝指定により新たな地域活性化に取り組む遠軽町を取材しました。
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国宝指定と白滝ジオパーク
遠軽町の白滝ジオパークは、日本最大級の質・埋蔵量を誇る黒曜石が見どころの一つで、この黒曜石から、過去の地球の活動を知ることができる場所となっています。この黒曜石を生み出した火山活動と、黒曜石を道具として用いた旧石器時代の人々について学び・体感することで、大地と人のつながりを感じることができます。この白滝から出土した「北海道白滝遺跡群出土品」1965点が、令和5年6月に国宝に指定されました。
遠軽町では、この指定による効果を地域全体に波及させるため、白滝ジオパークを拠点とした地域活性化の取組を進めています。
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認知度向上に向けた情報発信
町では、黒曜石や白滝ジオパークの認知度向上に向けて、道内外のイベントへの出展や、黒曜石のアクセサリー作り体験を通じたジオパークの魅力のPRなど、町や白滝ジオパークに人を呼び込むための取組を行っています。また、白滝ジオパークの特設サイトを構築することで、ジオパークの特色や魅力を発信し、興味を持った方が実際に町に訪れるきっかけとなるような環境整備に努めています。
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オホーツク総合振興局主催のオホーツクフェアでは、多くの方がアクセサリー作りを楽しんでいました。
豊富な体験プログラム
白滝ジオパークでは白滝ジオパーク交流センターを拠点に、ジオパークを体感できる「ジオツアー」を開催し、「北海道白滝遺跡群出土品」や白滝ジオパークを学ぶ取組を行っています。
個人旅行以外でも、小中学生などの教育旅行などの活用のため、学習教材やデジタル教材なども取り揃え、地域内外の子どもたちにこのジオパークの価値を体感できるメニューを用意しています。また、遠軽町埋蔵文化財センターでは、黒曜石を使った石器づくりや滑石を使って作る勾玉づくりなど、子どもから大人まで楽しめる体験プログラムも実施しています。
こうした豊富な体験プログラムにより、国宝や黒曜石について、体験しながら学ぶことができ、来訪者の知的好奇心を満足させるメニューが揃えられています。
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ジオパークを拠点とした町内周遊
さらに、白滝ジオパークを拠点とした町内周遊の促進や観光客の滞留時間の延長に向け、官民連携による町内周遊ガイドやPR動画の作成にも取り組むほか、道の駅「遠軽 森のオホーツク」をはじめ、町内の飲食店や土産店で、黒曜石をモチーフにした商品を開発するなど、町が一丸となって交流人口拡大に取り組んでいます。
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取組の成果と今後の展開
このように、ジオパークを核とした地域づくり、交流人口の拡大に取り組むことにより、札幌圏や道外からの観光客が目に見えて増加しており、町ではこうした地域を盛り上げる好機を活用し、今後は、地域の魅力を伝える担い手の育成にも取り組むこととしています。
地域の活性化に取り組むにあたり、黒曜石の魅力を地域や観光客に伝える担い手は欠かせない存在ですが、まだ人材は不足している状況です。学校の授業などで黒曜石の魅力や、なぜ白滝が重要なのか、地域の子どもたちに伝える“石育”という取組を通して、地域に黒曜石の魅力を広め誇りを持ってもらい、担い手の確保に取り組んでいきます。
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