昆布はどこからどこへ行く⑧ナガコンブ2
「えー!食事はどうするの???」
歯舞で、ナガコンブの漁期の一日のスケジュールを伺ってわたしは驚いた!
昆布漁の朝は早いのです。朝5時に漁を始めます。
今朝のツイッターの、釧路町昆布森の翔ちゃん(カネショウ)さんのアップ、夜明けの中を進む昆布船です。かっこいいですねー。
この箱のようなスペースに昆布がいっぱい入ります。
(↓ここからはコロナ前の2019年7月に歯舞漁協の調査船で取材させていただいた写真です。)
漁は、10メートルものL字型の棹を海に入れて、
10〜20メートルの昆布をすくい、
石についている根っこを手でひとつひとつねじりとり、石は海へ戻します。
海に優しい仕事は最重量級の仕事なのです!!
水揚げした昆布は丸い石が敷き詰められた干場へ。
長い長いナガコンブをこんがらからないように、重ならないように並べていきます。
翔ちゃんさんの写真です。こんなにたくさん、まっすぐに並んでいます。
きれいに伸ばすのは腰が痛い仕事ですね。
海の水をたっぷりと含んだ昆布はなかなか完全に乾きません。
そんなときには乾燥機の出番です。くっつかないように気を付けます。
歯舞では昆布にストレスがかからないように温度を設定して8時間、
なんと8時間!!!
(写真は歯舞のチャールズブロンソン氏。昭和ラスト期や平成生まれのみなさん、知りませんよねー?おばあちゃんおじいちゃんおとうさんおかあさんに聞いてみてくださいねー)
歯舞では漁は6時から。
帰ってきて天日で昆布を乾燥させてから乾燥機にかけて8時間。
パリパリに乾いたら、真水を噴射して再び湿らせて、ブロンソン氏が巻いている形にして、仕上げの天日干しに備えます。
きれいにまっすぐに乾かすためです。
ここまでやって、すでに翌日の朝5時と・・・・・・。😳
(天日干しで仕上げたのは、こうして105センチにカットします。)
朝6時には漁が始まるから、奥さんも大忙し。
えーーーーーーー!!ごはんはどうしてるんですか??
奥さん大変すぎじゃないですか!!!!!
漁師さんたちは顔を見合わせて苦笑い。
「かみさん、怒らせないようにしないとな。」
まさに夫婦で二人三脚の昆布仕事です。
船に乗らないもうひとりの主役が陸で大活躍するのです。
漁師が漁から製品にするまでを担う昆布漁は、江戸時代から工夫を重ねて今の形になりました。
場所によっての違いはありますが、仕事の細やかさには、日本人ならではの感性や勤勉さ、職人気質も感じられます。
繊維質を多く含み、食べてカラダの調子が良くなるうえに、戻し水にはうまみが入った昆布は、日本人の食生活を豊かにし、支えてきました。
歯舞でお会いした昭和世代の漁師たち。
ツイッターで、出航前と昆布干し、選葉(規定の長さ105センチに切った昆布をセレクトして同じ感じのものでチーム分けする)の様子などをアップしてくださる若い漁師たち。
大事なものを未来につなげる彼らはかっこいい。
そして、今日書いた2つの世代で、変わらないことも、変わったこともあるのかと思います。
(取材したいです)
6月の竿前昆布漁から始まった暑い熱い夏は、遅採り昆布漁の9月中旬まで続きます。
北海道の東の端から、日本各地へ。
ここにしかなくて、世界で一番長い昆布がみんなの食卓へ。
おでん、煮物、塩昆布、刻み昆布の煮物、お正月の昆布巻き。
おなじみのものも滅多に食べないものもありますが、
食卓の昆布の向こう側にこんな物語があることを
北海道の現場からお伝えいたしました。
安全操業をお祈りします。
昆布おもしろい、と思った方はこちらの記事をぜひ。