さっくさくでホカホカのメンチカツを食らう
学校帰り。自転車を押して通り過ぎようとする商店街の肉屋から、
ふわーっと香る揚げ物の香り。
その香りにきゅっと胃袋を捕まれて、
わたしはその度にメンチカツを1個、買わずにいられませんでした。
白くてパリパリな小さな紙袋に入ったそれを大事に持って、
西日が差す川べりに腰かけて食べる。
カリッとしてサクサクで、断面からは湯気がたっている。
お肉がタマネギでふんわり甘く優しい味になっていて、
おなかも気持ちもあったかくなって、
しあわせ~になる食べ物。自分では作らない大好物。
ある日、調理のお手伝いをしたら、その日のメニューはメンチカツ。
「いつもは作らないけれど、今日はあなたがお手伝いしてくれるから
久しぶりに作ることにしたのよ」
14個作る。
北海道産豚ひき肉は800gくらい。北海道は豚肉文化なのだ。
巨大な新タマネギ。一番大きなサイズ。ちょと安かったって。みじん切る。
にんじん 半分くらい。これもみじん切る。
大きなボウルに卵とパン粉と水、塩・コショウとともに練る。
わたしが好きだと言ったから、ナツメグを少し入れることに。
「イタリアンパセリも入れてみようかな」には反対した。
おいしいかもしれないけれど、それはわたしの食べたいメンチカツではないからだ。(いや、わたしのための料理ではないんだが。。。)
大きなお皿が3枚並んでいる。
小麦粉用、卵用、パン粉用。3個の溶き卵が入る大きな皿だ。
バットに14個並べていきながら、
お肉は1個50gで、こんなにおっきいのかと驚くわたし。
「野菜たくさん入れたからねー」
「こどもたちが小さなころ、お肉少しで、安くできるからよく作ったのよ。
こどもがパン粉をつけるお手伝いをしてね。。」
4分くらいかけて揚げる。
じゅーじゅーじわじわ。
キツネ色にカリッと揚がったメンチカツたちは
「ほーら、どうだい、食べていかないかい?」とわたしに言っている。
ケチャップととんかつソースで定番のケチャップソースを添える。
ケチャップをソースより多くしてちょっと酸味を効かせるのが、いい。
彼女が言った。
「松田さんの分も作ったからねー。持って帰る?」
な、なんて嬉しいこと!!
今食べてもいいですか、あったかいうちに。
ビールは帰ってから、メンチカツを脳内反芻して飲むことにしよう。
キッチンペーパーにくるんで、手にあったかさを感じながらかぶりつく。
カリッとしてサクサクで、断面からは湯気がたって、
お肉は野菜やパン粉と一体となって、優しい味。
ああ、お母さんの味だなぁ。と食べていたら彼女が言った。
「おいしいですか?
食べるみんなが、喜んでくれるといいなぁ」
ふたつもあるから、ひとつはウチでビールとと、食べ始めたら
おいしいし、手で持って食べることも嬉しくて、完食です。
さっくさくでホカホカのメンチカツは、やっぱり、しあわせ~な食べ物です。
「みなさん絶対、とっても喜びますよ」
わたしは何度も、彼女にこう言ったのでした。