地域包括支援センター保健師が福祉用具事業所の選択について考える話
こんにちは。ペーパー保健師黒井です。
地域包括支援センターで勤務していたころは、色々な福祉用具業者の人と関りがありました。
利用者さんやご家族からよく聞かれる質問は、「一番安いのはどこ?」
「どこも変わらない」というのが基本的な回答。
制度上、他事業所と比べて法外な価格設定はできないようになっているので、基本的には価格差は出にくい。
また、この歩行器はA社が安いけど、この車いすはB社の方が安いみたいな感じ。C社はどの商品も安い!ということはない。
複数商品を選ぶならばなおさら差は少なくなってくる。
なので、価格で選ぶということはあまりない。
そして、基本的には包括から事業所を決めることはないので、事業所選定にあたっては以下のような内容を伝える。
①ほしい商品を取り扱っているかどうか
4点杖とかは差がほぼないけれど、歩行器とか車いすとかベッドとか、事業所によって扱っていないこともある。
②土日も対応可能かどうか
配送も含めて。家族が働いていると土日祝日希望されることが多い。
③担当者の印象
優しい、はきはきしているなど。でも人事異動で担当者は変わる可能性あるのであくまで参考程度。
④会社の印象
大手で在庫を多く抱えていて対応が早い、地元では有名、事業所が近くにあって担当者がすぐ来てくれる、福祉用具以外に居宅やデイがあるなど。
特に要介護の認定の時はケアマネさんにお願いするときに、同一事業所と抱き合わせでだと喜ばれたりする。
(厳密にいえば抱き合わせ商法はよろしくはないけれど。)
基本的にはどこも似たり寄ったりの福祉用具事業所ではあるが、黒井の所属する地域包括支援センターの管轄内には、明らかに選択肢に入れるべきではない「めぐみ福祉用具(仮称)」という福祉用具事業所があった。
めぐみ福祉用具は、市内にある大企業の系列会社が運営しているので、利用者さんの知名度抜群。居宅やデイも運営しており、そちらの事業所は良い人ばかり。
しかしながら、福祉用具担当者は残念な人ばかり。
サービス担当者会議の日を忘れて来なかったり、何度必要書類を要求しても提出しなかったり、いつまで待っても商品納品がされなかったりということが日常的。
何人か福祉用具の担当者は存在しているけれど、どの人も福祉用具の知識が少なくて、利用者さんが「借りたい」と言ったらいわれるがまま。利用者さんの身体状態や家屋状況の把握をしようともしない。
事業所の風土が悪いのか、担当者の変更頻度がとても多く、常に新人みたいな人しかいない。
そんな事業所なので、基本的に包括としては紹介すらしないのだが、地元の知名度が高すぎて、「めぐみ福祉用具さんにしようと思って。有名だし安心だから!」と言われる。
そんなときは、「めぐみ事業所ですか…う~ん…他にも福祉用具の事業所ってたくさんあるんですよ~」とめぐみ事業所の利用を渋りながら、他の事業所も紹介する。
そんな黒井の様子から「めぐみ福祉用具はあまり良くない?」と聞かれることもあるので、そんなときは「ここだけの話、あまりおすすめはしないです」と正直に答える。(過去の前科も含めて)
だけど、自分からめぐみ福祉用具を希望してくる利用者さんたちの多くは「他の事業所の検討は面倒だし、どこもそんなに変わらないでしょ。めぐみ福祉用具でいいよ。」と、結局めぐみ事業所を利用することになることも多い。がっかり。
そんなめぐみ事業所だが、黒井の所属していたよつば地域包括支援センターのセンター長の沢村さんをキレさせた前科がある。
あれは、沢村さんが担当していたAさんが腰椎圧迫骨折になってしまったとき。
異動したばかりでめぐみ福祉用具のことを良く知らなかった沢村さんは、事業所がよつば地域包括支援センターの近くにあるという理由で、めぐみ福祉用具に特殊寝台(電動ベッド)を依頼。
めぐみ福祉用具からAさんに連絡してもらい、納品調整をしてもらえることになった。(このとき依頼する前に沢村さんが他の包括職員に聞いておけば被害は避けられたかもしれない…)
依頼してから1週間経過したとき、Aさんから包括に電話が入る。
「ベッドって、いつ頃来ますかね…」
なんと、1週間たってもAさんのところに連絡すら来ていなかったのだ。
沢村さんが慌ててめぐみ福祉用具に連絡する。
めぐみ福祉用具の担当者の言い分は以下の通り。
「Aさんに連絡しようと思ったが、電話番号を書いていたメモを紛失してしまったので連絡できずにいた。」
「よつば地域包括支援センターの担当者も番号もわからなかったので、よつば包括が所属している施設の代表番号に電話をかけたが、話がかみ合わず、切られてしまった」
とのこと。
なぜメモを紛失するのか…。
なぜ、包括直通の電話番号もあるのに施設の代表に電話したのか…。
なぜ早急な対応を依頼したのに1週間も放置したのか…。
案の定、この言い訳を聞いて、沢村さんは怒り心頭。
10分くらい相手の担当者を叱っていた。
こんな事業所もあるので、皆さん事業所選びは慎重に。
(もちろん良い事業所が大半だけれど、残念ながら、明らかなハズレも時々存在するのです…)