恩師に贈ったアルバム
小学校卒業後三十年目で初の同窓会。
準備をする幹事会で、恩師に贈る記念品が議題に上がった。
「当日は花束。後日、写真のアルバム」。
当時、学級委員長だった女子の一言で決まった。
小学校の時と全く一緒だった。
僕はそのアルバムの作成を彼女から命じられた。
「みんなの成長が分かるアルバムにすること!」と厳命された。
僕は、手持ちの卒業アルバムや修学旅行などの行事ごとに撮影されたクラス写真を画像データにした。
次に、幹事達に頼んで級友達が写っている当時のスナップ写真を借り、これも画像データにした。
同窓会当日、出席できない人には当時と現在の画像データを送ってもらった。
僕は、アルバムの案として卒業当時と同窓会当日の写真を並べるレイアウトを幹事達に提案した。
「悪くはないけど、何かが足りない」。
異口同音に言われた。
黙って聞いていた元学級委員長の彼女が発言した。
「名刺サイズのカードを当日用意する。それに自筆で名前とメッセージを書いてもらって写真と一緒に貼るレイアウトにする。出席できない人は、名前とメッセージを自筆で書いた画像を送ってもらってちょうだい」。
すぐに手配した。
無事に同窓会が終了して、今度はアルバムの作成に取り掛かった。
何度かのチェックと手直しを経て、恩師に贈る写真アルバムが完成した。
それは、級友達の成長が分かる写真と共にカードに認められた恩師への感謝の言葉で溢れていた。
我ながら素敵なアルバムに仕上がった。
恩師宛に郵送して数日経って、彼女からメールがあった。
そこには「先生がアルバムをとても喜んでいたよ。あなたにくれぐれもよろしくって。ご苦労さん。ありがとうね」とあった。
僕は、当時ずっと片想いだった彼女からのメールを何度も何度も読み返した。
<了>