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詩歌履歴書

<プロローグ>

 
 講談社文庫で「小説履歴書」というキャンペーンがありました。

 今まで読んだ小説を三つ選んで、自分なりに紹介するものです。

 これを詩歌でしてみました。

1. 松尾芭蕉 「奥の細道」

 夏草や 兵どもが 夢の跡

 この句を見た時、情景が浮かびました。
 中学二年生の国語の授業時でした。

2. カール・ブッセ

 「山のあなた」 上田敏 訳

  山のあなたの空遠く
  幸ひ住むと人のいふ
  噫、われひとと尋めゆきて
  涙さしぐみ、かへりきぬ
  山のあなたになほ遠く
  幸ひ住むと人のいふ

 高校卒業時に国語の先生から贈られた詩。
 この先生については、下記の記事をご参照下さい。

3. 中原中也

 「生い立ちの歌」

    Ⅰ

    幼 年 時
 私の上に降る雪は
 真綿のようでありました

    少 年 時
 私の上に降る雪は

 霙のようでありました

    十七〜十九
 私の上に降る雪は
 霰のように散りました

    二十〜二十二
 私の上に降る雪は
 雹であるかと思われた

    二十三
 私の上に降る雪は
 ひどい吹雪とみえました

    二十四
 私の上に降る雪は
 いとしめやかになりました……

    Ⅱ

 私の上に降る雪は
 花びらのように降ってきます
 薪の燃える音もして
 凍るみ空の黝む頃

 私の上に降る雪は
 いとなよびかになつかしく
 手を差伸べて降りました

 私の上に降る雪は
 熱い額に落ちもくる
 涙のようでありました

 私の上に降る雪に
 いとねんごろに感謝して、神様に
 長生したいと祈りました

 私の上に降る雪は
 いと貞潔でありました

 この詩を初めて読んだ高校二年生の時、「美しい」と思い情景も浮かびました。
 それから色々な詩を読みましたが、これを超える詩とは出会えていません。

<エピローグ>

 いずれも美しい詩歌と出会えていたんだ、と国語の授業と先生に感謝しています。
 本当にありがとうございます。
                 <了>