幼なじみの夫婦
「縁がなかったと思ってあきらめて」。
高校の同級生の女子に強く望まれて交際を始めたのに何故か早々にフラれた。しかも最後の言葉は、交際を申し込んだのは僕にすり替えられていた。
これで二人に連続して同じパターンでフラれた。
さすがにショックを受け、落ち込んだ。
「またフラれたんか?」。
意気消沈している僕に、近所に住む同い年で幼なじみの女友達が大きな声で話し掛け、次いで容赦なく言い放った。
「お前に中身がないから、すぐに飽きられるねん」。
こいつにはデリカシーというものがない。
「うるさい!関係ないやろ」。
「ええ、何の関係もありません。でもうっとおしい顔されると、こっちの気分も悪いんで!」。
幼少期から彼女との会話は、何時も罵り合いに近かった。
二十歳の成人式では、お互いの晴れ姿を『馬子にも衣装』と罵りあって、流石に周囲の友人たちから窘められた。
ところがお互いが適齢期になると、僕と彼女の両親が二人の結婚を強く勧めた。
最初は悪い冗談だと思った。
しかし両親達は真剣だった。
「幼馴染というだけで何のエンもユカリもありません、勘弁して下さい」。
僕達は二人して必死に抵抗した。
両親達は言った。
「腐れ縁という一番強い縁がある。絶対うまくいく」。
そう言われて、妙に納得してしまった僕達二人は、結婚して夫婦になり、ふたりの子宝にも恵まれ幸せに暮らした。
両親達の見立ては正しかった。
<了>