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光だった

一番長かった恋は5年続いた。

それは「恋愛」と呼ぶことも躊躇われる、思春期の少女特有の、カラメルのような片想い。

中学1年生のクラスメート。出会った頃は全く意識していなかった。
友達の1人が彼を好きだと言い出したのが夏だったか。
その頃も、友達を応援したり冷やかしたりするくらい。

それなのに、秋頃。いきなり惚れた。
友達が好きになってなかったら興味も持たなかっただろうに。

綺麗な顔の少年だった。
ちょっとだけサル顔?瞳が綺麗、肌も足も綺麗、何より横顔が綺麗でいつまでも見惚れていた。

私より数センチ背が低かった。
野球部だったので常に髪は短くて、みんなに可愛いがられるキャラだった。
何とも思ってなかった頃、1回だけそのイガ栗頭を撫でたことがある。

冬、席替えで彼の隣を引き当てた。
あんな幸福な時期は人生にもう二度と訪れないのではないか、そう思えるくらいの出来事だった。
あだ名をつけて呼んでくれたり、好きな食べ物の話をしたり、一緒に勉強をしたり。
家族に私の話をしていたことをさらりと教えてくれたっけ。

心は毎日高揚していた。
あまりに幸せで、次の席替えで味わった絶望感は物凄かった。

甘酸っぱすぎる思い出のあれこれが蘇ってきて胸焼けしそうなので、詳しく振り返るのはここでやめる。
あんなに真っ直ぐに1人の男の子を追いかけた少女の私は、どこへ行ってしまったのだろう。
5年もの間、本当にずっとずっとただ1人を追いかけていた。
告白と言えそうなものは、全部で3回した。
最後の1回だけ、ちゃんと答えをくれた。「ありがとう。でも、ごめん」

ようやく諦めることができる。
もはや振られた悲しみよりも、自分で区切りを付けられたことを祝福する気持ちの方が大きかった気がする。
私はその頃かなり疲れていて、立ち止まって周りを見渡してみたその時にはもう「恋」が分からなくなってしまっていた。

中学時代は辛くて寂しくて苦しい思いを沢山したけど、あの人がいたから学校にも毎日行けた。
悲しい気持ちに支配されそうになっても、彼のことを想うことで和らいだ。

まさに生きる希望。真っ暗な明日に怯える私の足元を照らす、眩い光だった。
あるいは、鎮痛剤、麻酔、そんな存在だったのかもしれない。

高校は離れたけれど、同じ部活を始めたので大会でいつも会えた。
大学進学で彼は地元を離れた。
成人式の日、初めてツーショットを撮った。
その頃にはすでに私にも恋人がいたし、彼も都会で遊んでいる風だった。

彼に会ったのはそれが最後だった。

結局、あの席替えの後、距離は遠くなる一方だった。

彼と私の人生はきっともう二度と交わることがない。
時の流れは、否応なく人を変えていく。
いつか再び会ったとして、昔と同じように恋に落ち、彼を追いかけることは出来ないのだ。

さよなら。少女の私。そして、私の光。



#あの恋

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