保苅実をtweetする人たち。
「つながる会」からの情報発信のためにTwitterを始めたのが2010年12月。時折「保苅実」で検索し、彼の名前に言及しているTweetに目を通している。
2010年8月29日のtatusiさんのTweet。ミノルを、そして「ラディカル」を見事に正確に描写していると思う。
私は研究者ではない。ミノルの研究の真の価値や意義を述べられるような身分ではない。「ラディカル」が出版された時、津田塾時代に受講した「CとDしかつけないからC.D ラミス(Charles Douglas Lummis)」先生の授業で耳にしたレヴィ=ストロースが引き合いに出されたのには仰天し、私の弟はアイツはそんなにスゴイのか、と思った。
2003年に彼が病床についてから新潟日報に掲載された連載コラム「生命あふれる大地〜アボリジニの世界」をご存知の方は多いだろう。
ミノルは「書いてある内容の質とレベルは落とさずに、一般読者にも理解できる筆致で書いた」と言っていたし、担当者の方が
地方新聞にはもったいないほどのクォリティの高い文章です。
というようなことを言っていた、と母から聞いた。
ミノルは、グリンジの人々がなぜ彼をコミュニティに受け入れて話をしてくれるのかをよくわかっていた。彼らのストーリーを、ミノルが世界中の人々へ運んでくれると信じていた。だからミノルは研究者にしか理解できないような文章や本を書くわけにはいかなかったのだ。
「ラディカル」の第一章だけはどんな人にでも読んでもらいたい、と彼は言っていた。そして、あの第一章は英訳して"Gurindji Journey"の冒頭に、"Introduction to the Japanese edition"として追加した。
今年1月11日のりえだたきさんのTweet。
そして、呼応するかのように、Kayo MurakamiさんのTweet。
是非!是非〜!"Gurindji Journey"は「ラディカル」の英語版ではなく、彼の博士論文が元になっていて、ほぼその原型を残していますので。
Tweet内の「歴史する Doing History 『ラディカル・オーラル・ヒストリー』」というのは、2016年に福岡市美術館で開催された展覧会のカタログののはず。
私の知らないところで、「ラディカル」が"Gurindji Journey"がミノルの代わりに出会いを続けている。
どんなに立派な研究でも流通しなければ意味がありませんから。
保苅実とつながる会の発足以来、一切合切を手伝ってくれている北海道立北方民族博物館の学芸主幹・笹倉いる美さんの言葉である。
つながる会は、保苅実の研究を「流通」させることを活動の主軸においている。そして彼の文章はそれをたやすくしてくれる。
かつてウォール街で働いていた私には、研究者が「よりよい社会のために」という意識で研究しているだけの報酬をもらっていないだろうと感じることが多い。目指すところがお金だろうと名誉だろうと、研究である以上、その成果は世の中に出回らなければ意味がない。だから多くの人が読めるような楽しめるような文章を書いて欲しい。思わずTweetしたくなるような本を書いて欲しい。
ミノルが亡くなって17年がたつ。彼が遺したたった2冊の著作は生き続けている。保苅実をTweetしてくれる人たちに、感謝をこめて。
NOTE:
* 写真は保苅実が撮影したもの。手前のオレンジのトラックが彼の愛車Pumpkinです。
* いずれ閉鎖することになっているメモリアルウェブサイト"Being Connected with HOKARI MINORU”は、National Library of AustraliaのデジタルアーカイブTroveに、2021年4月29日時点の状態で永久保存されています。