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保苅実。2003年のある私達姉弟のやりとり。

私はとにかく書くことが好きで、日記だブログだと中学時代からあちこちに書きまくっていた。2003年のブログは不特定多数相手に書いていたのだけど、弟のミノルには近況を知らせるような気分で、URLを教えた。

このブログのことは誰にも言うなと言ってあったのに、亡くなってから、彼の元カノが読んでいたことがわかり、もしもまた書くことになったら知らせてください、と連絡が来たのだけれど、怒る相手はもうこの世にいなかった。

2003年ということは、彼が亡くなる1年半前。彼は32歳。私は36歳。長男を産んだのが2001年。

ジーンズの話。ジョンが「君のおかあさんに聞いてみて、彼女がOKって言ったら4にすれば?」と言った。彼は自分が太ったことを母に指摘され続けてうんざりしているので、こういうことを提案したのである。35にもなってるってのに、そこで母にメールするあたりが私のわけわかんないところである。

「ねぇ、ジーンズのサイズなんだけどさ、妊娠前から私のサイズは2なんだけど、GAPのサイズ2がどうしてもきつくなって見苦しい上に実際苦しくなってしまったの。で、ジョンに1サイズ上のを買いなおしたいっていったら、「だめだ、痩せろ」って偉そうにいうわけさ。彼はあんなにデブになっても、腹はジーンズの上に出てるからサイズ同じなのよ。私の場合、GAPでもコーデュロイなら2でもOKだし、Old Navyでも2なのね。それに、ウェストは入るんだけど、太ももがきついの。そしたら、「じゃあ、君のおかあさんに相談して、おかあさんがサイズ一つ上のを買ってもいいっていったら、僕も納得する。」とかわけのわかんないこと言い出してさ。ねぇ、どう思う?」

「困ったねえ。ジーンズの太ももが入らないという人、結構いるよね。ジョンこそ痩せたらいいのにね。太った分だけ元に戻すというのが痩せるための最良の方法です。太り過ぎたらもう相当の覚悟がないと絶望。今のうちです。太ももだけ痩せる方法(体操)あると思うけど…ぜひ2サイズ保ってください。この前アメリカで買ってきたカルバンクラインの2サイスのパンツですが、後ろにポケットが2つも付いていてあまりに勇ましいので貴女が来たらあげようと思っていました。ママも今はらぽこを直す体操毎日やっています 由紀ちゃんも 頑張って!」

「まっじー?! だめなのぅ?今日さ、サイズ2の友達と話したら彼女の体重46キロしかないんだよ!! で、私はどんなに痩せてた時期でもこっちでは50キロあるわけよ。ちなみに、今は53キロ。これじゃあ、サイズ2が入る方が奇跡みたいじゃない?? だめ、私、やっぱりサイズ4にするよ。だって、他のブランドならちゃんと2入るし、同じgapでもコーデュロイなら2なんだよ?? 正確に言うとさ、入るのよ、ちゃんとジッパーもあがるし。でも、キツキツでかなり気合入れてないと一日中なんてとても履いていたくないって感じ。」

「とにかく体重53キロは多すぎます。やはり50キロが限度だと思う。ママは今47キロをキーフしています。やはり努力は必要。食べる量を減らすこと、特におやつ、そして運動。週二日ダラダラ汗を流してベルトをこいで45分、これで体重をいつも元に戻します。なんにも楽しくないウオーカーをこぎ続けるおばさんは皆の驚異の的。努力大好き人間のママだから出来ること? たいていの人は音を上げて楽しいエアロビに移っていきます。皆痩せることが目的のようだけど、ビール飲む人は特に大変みたい。ママもパパもビール飲まないから助かっている。とにかく運動することです。」

あぁ、どうして日本の人ってのはこんなに体型や体重に神経質なんだろう。
「小柄な友達h」と話せば、「某氏来るんでしょ、夏に。」と嫌~なことを指摘するではないか。

納得いかないまま、持っているジーンズとチノパン(全てsize 2)を全部引っ張り出してはいてみたが、GAPのジーンズ、それもboot cutのだけがパツパツ。頭にきて、すぐに車に飛び乗ってGAPへ。4種類くらいのboot cutのsize 2と4とそれぞれankleとregular(長さ)を棚から引っ張り出して試着室へ。驚くべきことに、まず長さについては、同じboot cutでもregularでちょうどいいスタイルと5cmも長さが余るのとあるし、size 2でも入るのだが、ほんのちょっとだけ見た目も履き心地もsize 4の方がいいといった程度で、それほど違いがないことがわかった。で、結局青と黒のboot cut stretchのregular 4を。1本$50くらいするのがセールで$13で買えた。

久美ちゃん曰く、日本のサイズはSMLしかないが、こっちはだいたい2から18くらいまである。ただ、日本のLはおそらくこっちの8くらいだという。それに、日本の場合、各ブランドは特定の年齢層をターゲットにしてるから同じMでもブランドによってフィット感が違うし、こっちの1サイズ違いとは全然話が違うから気にするな、と言う。それに、ジーンズはスタイル次第でフィット感が違ってサイズが違うのはよくあることだとも。

結局、何が納得できないって、それは「前にはけてたジーンズがはけなくなった」という厳然たる事実であり、それを解消するにはやはり運動して痩せるしかないということなのである。あぁ、treadmillで走るしかないかなぁ。すぐにまた妊娠しようとしてるのになぁ。とりあえず、甘いもの一切禁止から開始することに決めた。

2003.1.23「ジーンズ騒動」

これにミノルがすぐに反応したらしい。翌日のブログにミノルの反応が書いてある。

◆ あっはっは。パンツのサイズの話、むちゃおもしろいぜ。って、笑い事じゃないか?! 僕は、大食いなんだけど太らない。もちろん体質が一番の理由ですが、運動らしい運動もしていないのに太らない。で、読んでて気づいたんだけど、ぼくってほとんど全く間食をしないんだよね。お菓子って、月に一袋食べることもない。強いて言えば、映画みるときにポップコーンを食べるくらいなんだな。ついでに言えば、知ってのとおり、僕はお酒もほとんど飲まない。というわけで、果物と牛乳という朝食と、あとは昼食と夕食を普通にたべる以外は、何にも口にしていないのです。これだけで、(ゆきちゃんも僕とあまり体質は変わらないと思うから)太ることはないと思う。ただし、やせたかったら、多分運動しないといけないんだろうね。

とはいえ、最近「外見」について考えることがあります。学者の世界は、「大切なのは中身、外見はどうでもいい」みたいなのが常識になっていて、見てくれを気にする人は、基本的に馬鹿にされます。そのせいか、フェミニストには不美人な人が多いです。ただ、不美人な人が集まって「大切なのは中身、外見はどうでもいい」みたいなことを言っていても、どうも慰めあっているだけに見えてきたりもする。。。というわけで、今必要なのは、美人フェミニストなんじゃないかと思うのです。美人フェミニストが出てくれば、男もフェミニストの話を聞くようになるし、女性の中でもフェミニストにあこがれる人が増えてくるのではないかと。。。でも、そんなこと男の僕が言ったら、すっごく怒られるんですけど。

太っているか痩せているかみたいな、世間の基準で自分の外見を評価するのはすごくばかげていると思います。でも、それは外見が重要ではないからではなくて、自分の望む外見を世間の基準に合わせているところがばかげていると思う。重要なのは、自分らしい自分を魅力的に示す(中身もが外見も)ことではないでしょうかね。そういう人に会うと、世間的に言って美人か不美人かはともかく、その人は間違いなく魅力的に見えますね。昨日、美容院に行って結構過激な赤色のメッシュをかけました。気に入っています。

2003.1.24.

彼が言ってることはよくわかる。私も同意見。あれから20年近く。55歳の私は老いをそのまま素直に受けとめ、グレイヘアを楽しんでいる。

「学者の世界」は変わったでしょうか。

私は、今の時代を反映した価値観で、時代背景を考慮せずに過去の現象を糺弾する最近の傾向を苦々しく見ている。ミノルは、そういうのも「歴史実践」の範疇に入れるんだろうか。「歴史実践」の結果どうするかっていうのが問題だけど、そういう行為そのものは「歴史実践」になるんだろう、きっと。

ジェファソンの銅像が撤去されるように、まさかこの記事のせいで、「ラディカル」が、本屋の店頭からフェミニストによって撤去されるなんてことになりませぬよう。

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