手仕事を通じて考えた日本文化

間も無く1年が終わろうとしている秋田では道路が白くなっている光景が日常になってきました。

さて、12月18日に開催したしめ縄作りの企画は10名の方が参加して頂き心温まる雰囲気中で茅葺職人の方が実際にしめ縄を作る光景を直に観る事ができて感じるものが多々ありました。

基本的なしめ縄作りの手順

  1. 藁の束を櫛のような形状に通して選定する。

  2. 藁を木槌で叩きしなる状態にする。

  3. 叩いた藁に少し水を含ませて結っていく。


ここ二十数年、各地のさまざまな職人や職業の方々を訪ね、仕事を見せてもらいながら話を聞いてきた。
どの仕事もその地の気候や風土に培われたものであった。素材を自然から受け、それを上手に利用し、さらに弟子や子孫に残すように努力してきた。それが自分たちが受け継いできたやり方だったのである。それは技の伝承にもいえることであった。単純な道具を体の一部として使いこなせるようになるまで叱り、覚えさせ引き継いできたのである。手仕事が主流だった時代は小さな社会であった。作り手は使い手が誰であるかを知っていたし、使い手は自分の気に入った作り手を選ぶことができた。そうした小さな社会で生き抜くためには、作り手は常に最高の品を作り出すことを心がけなければならなかった。
その心構えや職業の倫理、職人仲間の仁義や礼節を、物を作り、使ってもらうことで身につけていった。そうした環境や人間関係は経済の行動成長を機に消えていった。大量生産、大量消費の時代が始まったのだ。それは大きな社会である。

「失われた手仕事の思想」
著者:塩野米松(秋田県出身)
まえがきから一部文章を引用

この文章を読むだけで今の時代と変化を読む事が出来ると思います。
戦後、各地で空襲(秋田では土崎へ爆撃があった)や原爆の影響で焼け野原が沢山ありました。物質的な不足が生じて国民は食べ物や着るものなどが必要だった時代から大量生産への舵取りをする事は必須だったと思います。
そして、人口が爆発的に増加する中で核家族化に伴い家電製品や団地など物質的な物を求めて都会を中心に人と物が増えていく時代がありました。しかし、昨今の日本では少子高齢化や持続可能な社会という文言がニュースで目にするようになりました。現代では、スマートフォンで簡単に物が買える時代になりました。その反面、どこか自分好み物を選ぶ心理が消費者の中に拡大している事が背景にあると思います。また、「自然欠乏症」という病名が統合医療では使われ始め医師でも治せない病が山や川に行くと不調が治ることまで明らかになってきました。
自然の恵みに感謝、手仕事を通じての交流、自然と人と触れ合い会話が弾む事は農村地帯が多くあった秋田でも当たり前だったと農家さんから聞いていました。秋田では少子高齢化、ひきこもり、自殺者など社会的な問題が山積みです。この背景には手仕事という文化が減少してきた事が要因の一つだと私は思っています。だからと言って、近代的な文明として発明された自動車やガソリン、インターネットやスマホを手離せという事ではなくバランスよく使い自然とも共存共鳴する道があるのでは思っています。右でも左でもなく真ん中を取る事で物質も精神も調和が取れる事を先人達は知っていたのでは本を読み、実際に手仕事を通じて感じます。

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