
2025年1月,2月の展覧会(東京)レポート
懲りずにまた企画展の感想記事を書きました。
前回は「う~ん書ききれなかった、不完全燃焼だな」とへこんでいたけれど、今振り返って読むと「へえ、こんなこと思ってたんだ、寝かせて見返すと面白いな」と前向きに見れていたりする。これが「熟成」ってやつ…?
こんにちは、豊穣です。
自分で書いていて「頭の整理になるな~楽しい!」と思う系の記事。興味のある場所があれば、良かったらどうぞ。
▼前回はこちら
1.世界のクリエイティブがやってきた!2024展【アドミュージアム東京】

■展覧内容を3行で
・月替わりで世界3大クリエイティブアワードの2024年受賞作品を展示する企画展。
・広告業界、クリエイティブ職でなくても「へ~おもしろ~!」と視覚で楽しめる。
・ひとりでも、誰かと訪れても楽しめそう。というか、常設+企画展それぞれで1日経ってそうなぐらいボリュームがあるのに、無料!
■展覧会感想
アドミュージアム自体に始めて訪れる。たまにインスタで「無料のおすすめおでかけスポット💛」とまとめられがちだよな~結構人いるのかなと思ってなんとなく敬遠していた。
けれどいざ行ってみたら、アクセスはいいし(新橋・汐留)、平日夕方なら人も多くないし、資料も展示方法も見ごたえがあるし、何よりミュージアムのスタッフさんの雰囲気がよくて(←珍しい気がする)、行ってよかった!!人にお勧めしやすい!!
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常設展は夕方に無料のギャラリーガイドがあり、参加してみる。運よく私しか参加者がおらず、マンツーマンで紹介してもらう。スタッフさん、とても愛想がいい。スタッフおすすめのCMをこっそり教えてもらったり、館内案内の丁寧な冊子を頂く。

日本広告史の展示、学生時代のゼミが「近代日本文化史」だった豊穣と親和性が高く、ずっと眺めてられる。水分不足になり、足がパンパンになる。
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ミラクルが起こり、当日飛び入りで企画展のギャラリーツアーに参加できる。2月展示のD&AD Award(三大クリエイティブアワードのひとつ)に関するギャラリートークで、審査に携わったお姉さんから直々に展示作品の紹介を聞く。贅沢だ…受け付けは顔がめっちゃ小さい眼鏡のお兄さんが優しく対応してくれた。
飛び入り&非広告業界の初心者でも理解できるわかりやすいトークで、「このお姉さん、超頭がいいんだろうな‥‥」と思いながら聞く。
最高賞を取ったJRグループの「My Japan Railway」や、そのほか日本から受賞したパッケージや書籍、ポスターなど展示の一角にみちみちに詰まっている。日常に、そのデザインを取り入れることを想像するとワクワクする。

ニッチなミュージアムかと思ってたけど(受付のお兄さんもそう言っていった)、実際は「ホスピタリティ&ハートフルミュージアム」だった。体感「3,000円の企画展行った時ぐらいの満足感がある…」という感じ!

■展覧会概要(公式サイトより)
会場:アドミュージアム東京
会期:2025年1月10日(金) - 3月29日(土)
【概要】
1月から3月までの3ヶ月。ニューヨーク、ロンドン、カンヌの世界を代表する3つのクリエイティブアワードの2024年受賞作品を展示します。こんなおもしろいことを考える人がいるなんて!とワクワクするものや、こんな風に世界が変わるなんて!と他国の課題やその変化に驚くものも。世界の「いま」が映る、とっておきの広告やデザインをご紹介します。世界中の鼓動を高鳴らせたアイデアをあなたの目で、確かめに来てください。
2.ポケモン×工芸展 ―美とわざの大発見―【麻布台ヒルズ ギャラリー】

■展覧内容を3行で
・工芸展なのに子どもも大人も楽しめる、珍しい企画展。グローバルかつ老若男女にウケる工芸展なんてポケモンしかできませんよ…。
・「工芸」をポケモンを通じて紐解いていく、工芸入門として最適&楽しい展示!2025年2月まで東京、4月から愛知、6月から青森、9月から長崎で開催。
・「ポケモンと工芸の真剣勝負」←めっちゃいい紹介文

■展覧会感想
初めての麻布台ヒルズ。外観がかっこいい。平日を狙って午後にいったのだけれど、普通に人がたくさんいた。海外観光客の方も多かったね。通常の民芸展とかまじでご高齢の方しかいないから‥‥
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工藝の知識が無くても楽しい展示。「ダイパ世代ぶっささり!うわ~!」とワクワクするものから、「ほう……」とうっとりするものまで。あくまで2Dの世界に閉じられるポケモンを3Dとして解釈していく過程、「現実世界の動植物が絵画になっているように、ポケモンがいる世界で彼らを美術作品に落とし込んだらこんな感じだろうな」というifの世界を見ているようで胸が躍った。

例えば日本でも「龍」っていろんなところで作品として昇華されるけど、そうだよなファイヤーとかホウオウがいる世界だったらばんばん作品になってるわ…と想像する。伝説のポケモンたちが作品になっているの、ifの世界でアツい…
抽選販売の商品の展示もあった。シェイミの置物、25万でちょっと揺れちゃったな~いや、25万は出せないんだけれど…
2025年4月から愛知、6月から青森、9月から長崎で展示があるらしい。展示が一部変わるらしく、行こうかなあ。

■展覧会概要(公式サイトより)
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
会期:2024年11月1日(金) 〜 2025年2月2日(日)
【概要】
ポケモンと工芸の真剣勝負
ポケモンと工芸、正面切って出会わせたらどんな化学反応が起きるだろう。
この問いに人間国宝から若手まで20名のアーティストが本気で挑んでくれました。
ポケモンの姿かたちからしぐさ、気配までを呼び起こした作品。
進化や交換、旅の舞台、効果抜群のわざなどゲームの記憶をたどる作品。
そして日々を彩る器、着物や帯留など粋な装いに誘い込まれたポケモンたち。
会場で皆さんを待ち構える作品との出会いははたして…
ワクワク、うっとり、ニヤニヤそれともゾクッ?かけ算パワーで増幅した美とわざの発見をお楽しみください。
3.特別展 志村ふくみ100歳記念~《秋霞》から《野の果て》まで~【大倉集古館】

■展覧内容を3行で
・染織家/随筆家で人間国宝の志村ふくみさんの企画展。植物で染めた紬織着物の展示がメイン。
・頭で理解するというよりは「心で震えろ!」という作品かも。志村さんの作品にはそういうパワーがある気がした。
・「心が清らかになる」「夢見心地」という言葉が似合う展示。着物なのに?
■展覧会感想
服飾、しかも着物の展覧会。殆ど行ったことないんだよな~でも行った人が軒並み「良かった」と感想を述べていたので向かう。「わからなさ」よりも「行ってみたい」が勝った。
大倉集古館は、オークラ東京の向かいにある。展示最終日に国会議事堂前駅から下車し歩いて向かう。建物に向かう道のりも楽しい。このあたり(永田町周辺)って、何から何まで日常と違くて異世界って感じ。日本の中核、「迂闊に入ってはいけない感」が漂っている。姿勢を正して歩く。
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会場は着物の美しいマダムがたくさんいる。なんというか、付け焼き刃ではない上品なオーラがある。都会の本物の貴族のお方かもしれない。
そういうお姉さまは、基本タクシーで移動していて、実家では姉妹でも1人1セット以上ひな人形セット(5段以上)を持っていて、帝国ホテルとかオークラのラウンジを飽きるほど使っているんだろうな。(映画『あの子は貴族』を思い出しながら書いている)
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志村さんの作品の特徴は、植物から抽出された染料を使っているところ。そしてどこまでも心が清らかにする力があるなと思う。初作品だという〈秋霞〉は度肝も抜かれる。(「度肝を抜かれる」←もっとお上品な言い方ないかしら)
作品展示(キャプション)の言葉遣いも優しい。志村さんは随筆家としても有名な方だそうで、「は~どんな人生を送ったらこんな風になれる…?」と考えてしまう。
志村さんの手・作品を通してみた「琵琶湖の青」がぶっ刺さる。心震える美しい作品というのは知識なくとも脳裏に突き刺さってくるなとしみじみ感じた。ポストカードを一枚買って帰る。
■展覧会概要(公式サイトより)
会場:大倉集古館
会期:2024年11月21日(木)〜2025年1月19日(日)
公式URL(アルスシムラ)https://arsshimura.jp/topics/shimura/20250103-1/
【概要】
染織家志村ふくみの百寿記念回顧展「特別展 志村ふくみ100歳記念~《秋霞》から《野の果て》まで~」を開催いたします。
(中略)
31歳で染織の世界に入り、ものづくりに対する独自の芸術理念を貫きながら70年にわたって創りあげてきたふくみの作品の展観を通じて、多くの人々に感動を与え、その精神が後世に引き継がれてゆく契機となれば幸いです。
4.第73回 東京藝術大学 卒業・修了作品展【東京藝術大学周辺】

■展覧内容を3行で
・学生の「魂と青春と情熱!」がビリビリ伝わってくる展示。アツすぎ!!!アツすぎて五感(特に視覚)がキャパオーバーになった。
・10のカテゴリー(先端芸術表現、美術教育、文化地在学、グローバルアートプラクティス、日本画、油画、彫刻、工芸、デザイン、建築)から構成される。ボリューム!1日では回りきれませんでした。
・制作者が学生とのことで、その親近感と才能にしびれる。「あくまで学生の展示」なので、他の美術館の企画展にはない空気感。

■展覧会感想
思いつきで向かう。来場者はけっこういて「卒展」といっても、卒業生だけでなく一般の方も普通に来ていいんだなと知る。ほら、私は来場前に「どうやったら美術大学の関連の人っぽく見えるか」でドキドキしながら家で服を選んでいたから…
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自分に置き換えるのもおこがましいんだけれど、学生時代に卒論(6万字書いたよ)を死ぬ気で書いてた時の情熱と焦燥感を思い出した。ひりひりする。作品に魂がこもりすぎていた‥‥学生時代を思い出して、たまに思考がトリップする。

卒展、ぶわあって思うところがたくさんあったのに、いざPCを前にすると途端に感想が書けない。制作者が「学生」という距離感にいるゆえに、その作品への情熱や苦悩を感じ取りやすい&商売を目的としていない&ミュージアムのように展示を「教育・普及を目的」としていないからか、気軽に感想が書けない‥‥
「何で記事に書いてる?」という本末転倒な感じになったんですけど、これもまた感想かもしれない。

■展覧会概要(公式サイトより)
会場:学部 -- 東京都美術館・大学構内、大学院 -- 大学美術館・大学構内
会期:2025年1月28日(火) - 2月1日(土)
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おしまい