予備自衛官補受験のための資料(最新の防衛白書の内、予備自衛官に関する記述をピックアップ)
第2部 わが国の安全保障・防衛政策
第5章 自衛隊の行動などに関する枠組みと平和 5 安全法制施行後の自衛隊の活動状況など
第1節 自衛隊の行動などに関する枠組み
4 国民保護
国民保護法5には、武力攻撃事態等及び緊急対処事態において、国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活などに及ぼす影響を最小とするた
めの、国・地方公共団体などの責務、避難、救援、武力攻撃災害への対処などの措置を規定している。防衛大臣は、都道府県知事からの要請を受け、
事態やむを得ないと認める場合、又は事態対策本部長6から求めがある場合は、内閣総理大臣の承認を得て、部隊などに国民保護等派遣を命令し、
国民保護措置又は緊急対処保護措置(住民の避難支援、避難住民などの救援、応急の復旧など)を実施させることができる。
海上保安庁長官、管区海上保安本部長及び空港事務所長も災害派遣を要請できる。災害派遣、地震防災派遣、原子力災害派遣について、①派遣を命ぜられた自衛官は、自衛隊法第94条(災害派遣時等の権限)に基づき、避難等の措置(警職法第4条)などができる。②災害派遣では予備自衛官及び即応予備自衛官に、地震防災派遣又は原子力災害派遣では即応予備自衛官に招集命令を発することができる。③必要に応じ特別の部隊を臨時に編成することができる。
第3部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)
第4節 新型コロナウイルス感染拡大を受けた防衛省・自衛隊の取り組み
❷ 新型コロナウイルス感染症に対する災害派遣
1 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための救援にかかる災害派遣
20(令和 2)年 1月、自衛隊は、中国における新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により帰国した邦人などの救援にかかる災害派遣を実施
した(1月 31日から 3月 16日まで 46日間)。この際、感染拡大防止のための帰国邦人などへの支援については、特に緊急に対応する必要があり、か
つ、特定の都道府県知事などに全般的な状況を踏まえた自衛隊の派遣の要否などにかかる判断に基づく要請を期待することは無理があって、要請を
待っていては遅きに失すると考えられたことから、要請によらない自主派遣とした。これを受けて、帰国した邦人などが滞在する一時宿泊施設や感染者が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」(乗員・乗客約 3,700名)において生活・医療支援、下船者の輸送支援などを実施した。具体的には、PCR検査のため、船内において自衛隊医官などにより、延べ約2,200検体の採取を実施した。また、陽性者などの患者や乗員・乗客の下船者約 2,000名を自衛隊救急車や大型バスにより搬送を実施しており、このうち
各国政府(米、オーストラリア、カナダなど)が準備したチャーター機に搭乗する乗員・乗客などの帰国者延べ約 1,300名の羽田空港への輸送などを
実施した。「ダイヤモンド・プリンセス号」における活動は、巨大で複雑な客船上での前例のないオペレーションであるとともに、感染リスクの高い活動であったものの、本活動に従事した現地活動人員延べ約2,700名の隊員のうち感染者はゼロであった。また、自衛隊病院などへの患者の受入れを行う
とともに、医療面からサポートするため、医師、看護師などの資格を有する予備自衛官10名を招集し、対応にあたった。本派遣の規模は、現地活動人員延べ約 8,700名(活動人員2延べ約2万名)、防衛省が契約している民間船舶「はくおう」など 2隻に上った。
第5節 大規模災害などへの対応
1 基本的な考え方
防衛大綱における、防衛力の果たすべき役割のうち、「④大規模災害等への対応」の考え方は、次のとおりである。大規模災害などの発生に際しては、所要の部隊を迅速に輸送・展開し、初動対応に万全を期すとともに、必要に応じ、対処態勢を長期間にわたり持続する。また、被災住民や被災した地方公共団体のニーズに丁寧に対応するとともに、関係機関、地方公共団体、民間部門と適切に連携・協力し、人命救助、応急復旧、生活支援などを行うこ
ととしている。
この際、発災当初においては被害状況が不明であることから、自衛隊はいかなる被害や活動にも対応できる態勢で対応し、人命救助活動を最優先
で行いつつ、生活支援などについては、現地対策本部などの場において、自治体・関係省庁などの関係者と役割分担、対応方針、活動期間、民間企
業の活用などの調整を行うことになる。さらに、「平成30年7月豪雨に係る初動対応検証レポート」(平成30年11月)を踏まえ、防衛省・自衛隊としては、大規模な災害が発生した際には、地方公共団体が混乱している場合もあることを前提に、より多くの被災者を救助・支援するため、自治体からの要請を待つのみではなく、積極的に支援ニーズを把握しつつ、活動内容について「提案型」の支援を自発的に行うこととしている。実際の活動においては、状況の推移に応じて変化するニーズを的確に捉えつつ柔軟な支援を行う1。その際、自衛隊の支援を真に必要としている方々が、支援に関する情報により簡単にアクセスすることができるよう、情報発信を強化している。また、自衛隊は、災害派遣を迅速に行うための初動対処態勢を整えており、この部隊を「FASTForce(ファスト・フォース)」と呼んでいる。
ウ 令和元年東日本台風(台風第19号)にかかる災害派遣
19(令和元)年10月、令和元年東日本台風(以下、「台風第19号」という。)が非常に強い勢力を保ったまま、東日本へ接近することが予想された。特に東海地方から関東地方にかけて、大雨・強風の影響により、土砂災害、浸水などによる人的被害、家屋への被害、停電、断水などのインフラ被害が発生する可能性があったことから、自衛隊は、即応態勢を確立した。また、適切な初動対応を行える態勢をとるため、各自治体からの要請を待つことなく、県庁などへの連絡員を先行的に派遣するとともに、初動対処部隊などは、出動準備を整え待機した。
台風第19号により、各地では、河川の氾濫、大規模な浸水及び土砂災害が多数発生した。このため、自衛隊は、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県及び静岡県の各都県知事からの災害派遣要請を受け、最大272か所の地方公共団体に連絡員約590名を派遣し緊密な連携を図りながら、人命救助、給水支援、入浴支援、給食支援、災害廃棄物処理・道路啓開、防疫支援などを実施した。
台風第19号による被害は、甚大かつ極めて広範囲にわたるものであり、長期間にわたり様々な救援活動が予想されたことから、初めて陸上総隊司令官を長とする統合任務部隊を編組して対応した。また、即応予備自衛官及び予備自衛官の招集を行い、約410名の即応予備自衛官及び予備自衛官が支援活動に従事した。本派遣の規模は、現地活動人員延べ約8万4,000名(活動人員延べ約88万名)、艦艇延べ約100隻、航空機延べ約1,610機、人命救助者数延べ約2,040名、給水量延べ約7,030t、入浴支援者数延べ約7万230名に上った。
第4部 防衛力を構成する中心的な要素など
❶ 募集・採用
2 採用
(2)予備自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官補
有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を早急に満たさなければならない。この所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官補の 3つの制度2を設けている。
活躍する予備自衛官とその雇用主の声
我々の病院は東京都葛飾区にあり、地域医療への貢献と充実を目標に掲げ
て開業から17年が経過しました。地域の救急医療体制のさらなる充実を図る
こと、また東京都災害拠点病院に指定されたことを受けて、災害医療体制の
充実を図る事が急務となり、大桃2佐を招へいしました。この度の令和元年
東日本台風の災害招集に際して、彼に声がかかったことは雇用企業としても
大変名誉なことと感じています。彼は病院救急の中心的な役割を担う職員だ
けに、不在になると影響が多くの部署に及びますが、彼が自衛官としての活動に専念できるよう、後顧の憂いなきように不在時の院内の体制を調節しました。彼の持っている日本国に対する思い、規律の維持や統制などは、他の職員への好影響が期待でき、実践してくれています。日本国のために働いている予備自衛官を雇用することで、間接的に日本国に尽くすことができていることをうれしく思います。
私は現在医師の職に就いていますが、日本国の為に自身の職責を生かして
尽くしたいと思い、予備自衛官補(技能)から予備自衛官に任官しました。予備自衛官として招集訓練などを通じて志を同じくするたくさんの仲間と知り合うことが出来た事は、かけがえのない財産となっています。この度の令和元年東日本台風の災害招集にあたり、理事長は「君にしかできないことがある。お国のために尽くしてきてください。」と、笑顔で送り出し、私の抜けた穴を調整してくれました。この思いに応えるべく、配属となった陸上総隊司令部医務官室において、全力で執務させていただきました。この活動は、自分だけの想いで成し得るものではなく、職場の理解と周囲の支えがあって初めて出来る事であり、かかわる全ての職員に感謝しています。我々を育んでくれたこの素晴らしい日本を守り、最前線で身を粉にして職務に就いている常備自衛官を支援できるよう、これからも研鑽を積み、その日に備えます。予備自衛官制度は、自身が培ってきた職能を生かして日本国に貢献することが出来る仕組みです。志が同じ仲間がたくさんいます。一歩踏み出し、共に歩みませんか?
予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として任務につく。即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、第一線部隊の一員として、現職自衛官とともに任務につく。また、予備自衛官補は、自衛官未経験者などから採用され、教育訓練を修了した後、予備自衛官として任用される。
予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などについているため、定期的な訓練などには仕事のスケジュールを調整するなどして参加する必要があることから、予備自衛官などを雇用する企業の理解と協力が不可欠である。
このため、防衛省は、年間 30日の訓練が求められる即応予備自衛官が、安心して訓練などに参加できるよう必要な措置を行っている雇用企業などに対し、その負担を考慮し、「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。また、17(平成29)年には、予備自衛官又は即応予備自衛官の雇用主から、訓練招集の予定期間や実運用のために予備自衛官などが招集され自衛官となる予定期間などの情報を求められた場合に、防衛省・自衛隊から当該情報を提供する枠組みを整備するとともに、18(平成 30)年には、予備自衛官又は即応予備自衛官が、①防衛出動、国民保護等派遣、災害派遣などにおいて招集に応じた場合や、②招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合、その職務に対する理解と協力の確保に資するための給付金を雇用主に支給する「雇用企業協力確保給付金」制度を新設した。さらに、
20(令和 2)年には、自衛官経験のない者が予備自衛官補を経て予備自衛官に任用され、一定の教育訓練を受け、即応予備自衛官に任用された場合に、当該即応予備自衛官が安心して教育訓練に参加できるよう必要な措置を行った雇用企業に対し、給付金を支給する「即応予備自衛官育成協力企業給付金」制度を新設した。平成 28(2016)年熊本地震3、18(平成 30)年 7月豪雨4、18(平成 30)年北海道胆振東部地震5、で即応予備自衛官が、令和元東日本台風(台風第19号)6で即応予備自衛官及び予備自衛官が招集され、物資輸送や給水支援などの任務を行った。また、20(令和 2)年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための災害派遣では、医師、看護師などの資格を有する予備自衛官を招集し、対応にあたった。今後も、地震などの災害に対し、予備自衛官などの招集機会の増加が予想されるため、予備自衛官などの充足向上を図る様々な施策を実施している。具体的には、より幅広い層から多種多様な人材を確保するため、18(平成 30)年に採用・任用基準の拡大を行い、予備自衛官については、士長以下の採用上限年齢を「37歳未満」から「55歳未満」に、継続任用時の上限年齢を「61歳未満」から「62歳未満」に引き上げるとともに、医師の資格を有する者については、上限年
齢を設けず、医師の技量が適正に維持され、予備自衛官の任務に支障がないことを確認したうえで、継続任用を認めることとした。即応予備自衛官については、士長以下の採用上限年齢を「32歳未満」から「50歳未満」へ引き上げた。また、19(平成 31)年には、自衛官経験のない予備自衛官補から予備自衛官に任用された者についても、一定の教育訓練を受けたうえで、即応予備自衛官に任用できる制度を新設した。また、割愛により民間部門に再就職する航空機操縦士を予備自衛官として任用するなど、幅広い分野で予備自衛官の活用を進めている。
第4章 防衛力を支える要素
第2節 衛生機能の強化
❹ 医官・看護官などの確保・育成
任務の多様化に伴い、医官など衛生部門に携わる者に求められる能力が高まっている中、医官の充足率は年々改善傾向にあるものの、9割に満たない状況である。この要因は、医官の離職であり、その主な理由の一つとして「医師としての研修・診療機会の不足」があげられる。防衛省・自衛隊では、防衛医科大学校を中心とした卒後の臨床教育の充実や、医官の診療機会を確保するための各種取組の促進、感染症や救急医療をはじめとした専門的な知識・能力の取得・向上、モチベーションの向上など、離職を防止するための様々なキャリアを想定した各種施策を継続して講じることで医官の充足向上を図りつつ、医療技術の練度を維持・向上させている。中期防においては、医官の充足向上を引き続き図るほか、今後増大が見込まれる任務所要に対応できるよう、医師である予備自衛官の任用を一層推進することとしている。
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