第29回 「倉橋惣三に学ぶ|日々の実際生活の尊重」
『幼稚園真諦|倉橋惣三 著』
読むたびにあふれる気づきや学びを書き留めていきたいと思います。
この本は、昭和8年(1933年)夏の
「日本幼稚園協会保育講習会における講演の筆記」となっています。
実践からきている内容であることを踏まえると、およそ100年前の状況を見ることができると言えるのですが、知らずに読んだとしたら、現代に書かれたものだと思うほどに時を越えて響く内容です。
第29回は、
生活のとらえ方が
テーマとなります。
第3編-9「日々の実際生活の尊重」
コンダクト・カリキュラムの主張とも沿うように、朝、帽子をかける、お弁当の前に手を洗うなど、実際の生活についても、”今日(1930年代)の幼稚園が、もう少し幼児の実際生活に重きをおき、そのために時間を取られることを惜しまない、というふうになってもいいと思うくらいです”とあるように、活動以外のことにも時間を取られても惜しまないとうふうになるくらいでないと、真に生活を尊んでいる保育とは言えないと。
当時は、主活動と言われるような、形式的な与える教育に注力されていたことが垣間見ることができます。(現代でもそんな現場があるのでしょうか…)
そういったところかた倉橋は、実際生活を二つに分けて考えています。
ひとつは、幼児の個人として必要な実際生活
もうひとつは、幼稚園の集団生活をしているが故に必要になってくる実際生活
この両方を尊重してなくてはならない。
幼稚園でなくてもするような日常の行動にも、幼稚園で当然重きをおかれるべきだと。
また幼稚園となれば、たとえばお弁当のときに、皆といっしょに食事をするために必要な行動が起こりますが、そういうこともまた大いに重きをおかなければならぬことです。(P126-127)
コンダクト・カリキュラムは、1923年の幼児教育史上、プロジェクト法のとして有名な内容である。
子どもの自発的、主体的な「プロジェクト」に強く興味がある方にとっては当たり前のごとく通ってる内容であろうが、こういったことを通らずして見えてこない「プロジェクト」の本質もあろうかと思います。
ー第30回に続くー
倉橋 惣三|くらはし そうぞう
1882年(明治15年) - 1955年(昭和30年)
静岡で生まれ小学生のときに上京。
フレーベルに影響を受け、日本の保育や幼児教育の礎を築いた人物。
日本での“幼児教育の父”、“日本のフレーベル”と呼ばれている。
食べることが好きで、幼稚園真諦の本文中に出てくる例えでは、「食事」が用いられることが多い。
享年72歳。
[参考文献]
・倉橋惣三 「幼稚園真諦」(フレーベル館・1976年初版発行)