D | チューリッヒ人になる方法A to Z
これは、2年半のチューリッヒ生活を通して見つけ出した面白おかしく、ときに皮肉ったチューリッヒ人のあれこれを、アルファベット順で紹介する連載です。このガイドラインを辿れば、あなたもチューリッヒ人の一員になれるかも? どうぞお楽しみください!
D is for…
Dig into Zmorge on the Weekends
ZMORGE(ツモルゲ)を週末に堪能せよ
週末の遅れた朝、友達とともにシャンパンをすすりながらエッグ・ベネディクトを嗜む ー 世間はこれをブランチという。この都合の良い発明は1920年代、パーティで羽目を外しすぎた富裕層が夜明けに楽しむものとして始まったそうだが、今ではチューリッヒ人はパーティモンスターにならずして、このブランチ文化を週末に組み込んでいるのだ。
スイス人はブランチのことをZmorge(ツモルゲ)という。「朝に」と意味するドイツ語「Zum Morgen(ツム・モーゲン)」を省略化し、スイス訛りを加えたのが語源だ。ひとたびLimmat(リマット)沿いやトレンディなカフェが溢れる第4地区を歩き通ると、どこのカフェやレストランもチューリッヒ人で満席で、満面の笑みを浮かべながらおいしいZmorgeを堪能している姿がそこら中見受けられる。
わたしにとって、この光景は新鮮でかつ驚きだった。週末の午前中であるのにも関わらず、街内のカフェは金曜日の夜に賑わうパブのようにガヤガヤと混んでいるからだ。「週末ブランチをするのなら、必ず予約はするように」とチューリッヒ人は口を揃えて言うのだが、これは疑いのない事実で、飛び込みで訪れたカフェで席を見つけられることはほぼ不可能に近いのです。
席の予約がいっぱいで、理想的なPinterest映えする朝一の食事をいただくことができなくても、がっかりする必要はまったくありません。チューリッヒ人は自宅でも、このZmorgeを堪能するのが一般的で、パンや卵などを簡単に調理した献立を手作りで用意している。ただチューリッヒ人は、おしゃれなカクテルよりも、Zmorgeではコーヒーやお茶を嗜むのを好むようだ ー 「午前中にお酒を飲んでも罪悪感がない」というブランチの魔力は、この街ではあまり発揮されないようです。
それでは、なぜチューリッヒではZmorgeが愛されているのだろうか?
この質問を解決してくれる明白な答えはないのだが、どうやらチューリッヒの働き方に関係していると思われる。この街は小さいながらも、銀行や国際的な企業の本社が軒並ぶほどスイスの経済中心地で、それゆえ今でも「身を削りながら働く」というメンタリティーが残っているそうだ。もちろん、日本やアメリカと比べたら、スイスの労働環境は幾分マシであることは間違いないが、9時間労働を週5日間繰り返すことは純粋に疲れるものです。
そのためか、チューリッヒ人にとっては、週末目覚まし時計に叩き起こされることなく起床できることは、一種の喜びであるのだ。のんびりとした朝とともにやってくるのが朝食で、これが平日の忙しなさと対照した「リラックス」の象徴なのです。
わたし自身もチューリッヒ人と同様、このZmorge文化に惚れ込んでしまった一人だ ー 日光浴をしながら、おいしいご馳走とコーヒーを目の前にし、支度と後片付けは他の誰かがやってくれるほどいいものはありません。また近いうちに、チューリッヒのおすすめブランチスポットのリストを紹介したいと思っています。
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この連載は、自身のブログ『Hoi, Arisa』上でも掲載中。