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歌舞伎観てきました!17  歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』前半

2024年12月新橋演舞場にて観劇。ライ=松本幸四郎版
(劇団☆新感線が2007年に幸四郎さん主演で上演した舞台の再演)

11月30日から始まったこの評判の舞台の上演も終盤。日に2回公演もある舞台を毎回この熱量で駆け抜けているとしたら、それだけですごいことだ!最初から最後までわくわくし通しの舞台。連日満員御礼。

ボロをまとった野良犬のような主人公ライ(幸四郎)と弟分のキンタ(尾上右近)の登場。幸四郎さんの声は軽くてしゃがれている。舌先三寸でのしあがっていこうとする主人公のライは、最初とりあえず小悪党然としている。

右近さんのキンタは頭は悪いが純粋で腕っぷしに自信がありという役柄で、右近さんの身体能力の高さ、殺陣の上手さがいかんなく発揮される予感。

仮面をかぶったオボロの森の魔物たち(時蔵、染五郎、新悟)の登場で、場内にスモークが焚かれる。客席でこんなにたくさんのスモークを浴びたのは人生はじめてだ。奥行きをうまく使ったセットで、森の奥には滝が流れている。

白いドレスを身にまとった3人の魔物は、手の先までしなやかで、仮面を外すまで性別がわからなかった。両性具有の美しさ。白く輝く衣装は魔物というよりエルフに近い。

ライはこの魔物たちと命をかけた契約をし、代わりにオボロの剣を授けられる。そしてその剣で、まずエイアン四天王のヤスマサを手にかけ、成り上がってゆくはじめの一歩とする。

この後のライはひたすら嘘を重ね、人を殺すごとに身分が上がり衣装も華やかになってゆく。

この公演の一番の若手、染五郎さんは、小国オーエの党首シュテン役。細面痩身の凛々しい立ち姿に目を奪われるが、殺陣も決まっていて、ひたすらカッコいい! 年々声に太さと重量感がでてきたようだ。染五郎さんは、八月歌舞伎座公演の「鵜の殿様」で複雑な踊りを軽妙に踊ってらしたので、身体能力の高さに驚いた。シュテンは、血人形の契りという呪術をライに施しておいたが、これがあとで思わぬ結果を生む。

エイアン国王(彌十郎)は、まず花道で鯉に餌をやるシーンで登場。あれ?後ろの席の人が鯉の人形を持って口をパクパクしている!国王彌十郎がその口に向けて、お菓子をあげる演出。いいなあー。

彌十郎さんは、政治に興味がないというか、年をとってきたし人任せでいいやーという脱力の演技。うまい!大きい体の存在感と相まって、彌十郎さん無ニである。愛人(新悟)だけが生きがい。四天王に「よろしく頼むよ」というのが口癖。

花道そばのお席だったので、おいしかった点は、全体にものすごい運動量なので、演舞場の舞台では収まらず、花道まで使い切って演じられていたこと。ただ駆け抜けるだけでなく、花道でのチャンバラあり、花道での悶絶あり(染五郎さん)。花道と客席の近さは約2cm。駆け抜ける風は受けるし、ひるがえるマントが当たるし、刀が飛んでくるたびに身をかがめるし(さすがに当たらないとは思いつつ)、臨場感が半端なかったことでした。ありがたや。

一回一列7番の花道脇のお席でした。近過ぎる!

朧の森に棲む鬼 とりあえず前半まで。
つづく。


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