歌舞伎観てきました!23 『彦山権現誓助剣』 2020年 仁左衛門&孝太郎
2020年11月の国立劇場「毛谷村」 ※当時書いた別のSNSよりの転載です。
今年の4月歌舞伎座で、仁左衛門(六助)、孝太郎(お園)が上演されると発表されました。2020年に国立で観て大好きになった演目ですが、もう観られないと思っていました。2020年の至福の時をお伝えできたらうれしいです。
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2020年 「毛谷村」観劇記録
仁左衛門さんは、親孝行で気のいい剣豪の六助役。毎回「これで、このお役は見納めかも」と思いながら見ています。
六助は剣の技を見込まれ、仕官するように言われているのですが、それを拒んで杣家に住んでいます。近頃では、六助に勝った者は仕官が叶うと言われているほど。先ごろ母を亡くして傷心の六助。目の見えない老婆を伴いやってきた男の人情噺にほだされて、剣の試合で負けてやることにします。
見どころの一つは、六助が剣の試合で負け、勝った男から額に傷を受けてもなお、男が威張って帰っていく様子を面白がりながら見送るところ。ニコニコ笑っています。ふんわり柔らかく懐深くて、なお愛嬌がある。そのうえ美男子とは! 仁左衛門さんならではです。
そんな六助のところには、「母になってやる!」と言って押しかけてきて居座る老婆あり(まさに言葉通り居座る感じ)、殺されそうなところを六助が助けてそのまま育てることになった男の子あり。更には、力持ちのいいなずけお園が現れて、どんどんにぎやかになっていきます。
お園役は、片岡孝太郎。男勝りで力自慢だけれど、六助がいいなずけとわかるやいなや、しなしなと可愛らしい女性に変わる。その変化がおもしろくて笑いを誘います。
恩師の非業の死を知り、怒りをたぎらせる六助の変化。仇討の助太刀を誓う最後まで、気持ちの流れが明解でした。
浄瑠璃は竹本谷太夫さん。相性が良いのか先月(2020年10月)の歌舞伎座、仁左衛門さんの「梶原平三誉石切」の浄瑠璃も谷太夫さんでした。体の底から絞り出すような浄瑠璃と役者さんの台詞との掛け合いが絶妙で、絡まりながら上り詰める一体感がありました。
お芝居を観る至福とは、まさにこのこと。半蔵門の駅までのかえり道、ちょっとスキップがでてしまいました。
※この間の菊之助さんの「六助」と比べると、2020年の上演当時、仁左衛門さんは関西弁を多用していた気がします。菊之助さんは、少し関西弁に寄ったところがあったかな?という程度。4月に拝見するとき、再度確認してみます。基本的に関西人のわたしは、やっぱり上方の柔らかい雰囲気が好きなのかもしれません。