[場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)・緘動(かんどう)・発達障害・不安障害・不登校などの生きづらさ]への理解 第4話 「SOSのツール」
(ご理解いただけましたら、周りの方に伝えたり、この記事をシェアしていただけるとうれしいです。)
長女は4歳の時、幼稚園入園をきっかけに場面緘黙症・緘動(※)を発症しました。※:家庭などでは話すことができるのに、社会不安のために、ある特定の場面、状況では話すことができなくなる疾患。強い不安により体が思うように動かせなくなる「緘動(かんどう)」という症状が出る場合もある。
症状のでかたや困難さはそれぞれかと思いますが、娘の最も状態がひどかったときのことを伝えていきます。
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娘は、幼稚園などの集団場面では声を発することができなくなるだけでなく、体の動きもフリーズしました。
それはちょうどマネキン人形に似ていました。
動けない場面では、誰かに手を引いてもらったり、動かしてもらうことで生活していました。
緘動がひどいときには表情さえ動かないので、うれしいのか、悲しいのか、怒っているのか、困っているのか、感情を相手に伝えることができません。
サポートも、そのタイミングでは負担になりすぎてないか、本当は拒みたいのではないかと先生方も試行錯誤の中、不安になるポイントでした。
せめて、その時、心は笑顔なのか、そうでないのか、助けを必要としているのかそうでもないのか、それだけでも伝わってきたら。
先生方のすすめで、娘の気持ちを表情で伝えるためにシンプルな表情カードを作り、娘にも使い方を説明し先生にお渡ししました。
しかしやはり、先生がカードを提示して「いま、どんな気持ち?」と問われても動かせない手では伝えられません。
先生が娘の手を持ち、指で示すように動かしても、難しいことでした。
もしかするとこの方法なら娘は「あなたは何歳?」のような絶対に間違いのない答えなら、先生の手を借りて指させたかもしれません。
しかし、気持ちを伝えたり、選択をしたるするような決まりのない解答をすることそのものにも、とても強い不安がありました。
結果的に、動くことができない娘にとって、言葉や動きを伴うSOSはたとえどんなに優れたツールでも本人にとって安心感には繋がらないのです。
それでは何もしてあげることがないではないか。
いえ、それは違いました。
娘にとって、ここにいても大丈夫と感じられる環境を作ろうと手を尽くしてくださった先生方のおかげで、次第にこの場所なら、この先生なら、お友達だけの前でなら、示すことができることは娘が就園していた二年間でほんの少しずつでしたが増えていきました。
ですから、急がないでほしいのです。
ある方法を試したら、すぐに何かが返ってくるということを期待せず、愛情をもって時間をかけて信頼関係を築いてほしいのです。
もちろん、関わりは変化します。
担任の先生、クラスメイトは学年が上がれば変わります。
しかし、なるべく詳しく細かく情報を引き継いでいただいたり、仲の良いお友だちとは同じクラスにしてもらえるとそれは大きな助けになると思います。
イラストに添えた言葉は、少し強くてごめんなさい。
必ずしも、全て安心感に繋がらないわけではありませんが、声を出せず、動けないということを念頭に置いたSOSの方法を環境に応じて探ってほしいという願いを込めています。
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例は、娘のケースです。
すべての場面緘黙症・緘動の症状にあてはまるわけではありませんが、知ってもらうことはとても大切だと改めて感じています。