アコギのブリッジの浮きをDIYで修理する(よい子はマネしてはいけない)方法
アコースティックギターのブリッジが浮いてしまった。
放っておくと悪化する一方だし、いずれビビりノイズが発生することにもなります。楽器店のご主人の説明によれば安モノだろうがマーチンだろうが「浮くときは浮く」そうです。
そもそもネック方向に対する張力がかかり続けているところに、熱とか湿気があると徐々に接着部が緩み浮いていくのだそうです。
素人な修理(リペア)をしてしまうと取り返しのつかないことになりそうなので、購入した楽器店に持ち込んだわけですが、一筋縄ではいかなかったの巻です。
「あかん、手が入らんわ。。。」
本来であればブリッジの接着を剥がしてきれいにして、残った接着剤を除去して、再度接着してC型のクランプでがっちり抑えてかなりの時間をかけて修復してくものなんだそうです。
ただ、そもそもお安いトラベルギターなので、高額な修理費をかけるべきでもなく「見た目は気にしないなら…ボルトでガチッと締めちゃう方法で、2~3日で出来るよ」とのことだったので、それでお願いします、ということにしました。しかし、
「ちょっと待って、あれ、あ。う。あかん、これ手が入らんわ」
と。ん?
トラベルギターなのでサウンドホールが小さく、ご主人の手は入らないのです。
「あら~。そうか~僕の手、小さめですけど入りますかね?」
ん、お?
「入るね、おにいさん自分でやるしかないね」
「え、マジですか」
で、そこから15分ほどかけて手順の説明を受けて帰るのでした。なんか申し訳ないので弦を購入して帰りました。
「そもそも、そのトラベルギターならもっと柔(ヤワ)いやつじゃないとね」
とのこと。そうか~、そういえば購入して間もない頃、弦を切っちゃってテキトーなやつに変えたことがあったような。。。
トラベルギターの修理(リペア)が始まる
こんなギターです。(SX TRAVELLER とかなんとか)
ミニギターが欲しくて探していたところに、弦長が十分にあって音量は小さくネックも細めでフレットの大きさもヘンテコではない、という素晴らしいやつなんです。確か2万円しなかったので、お買い得かつお気に入りなのです。
さて、初めてのアコギの修理開始です。
浮きの具合は、アイキャッチの通り。結構な隙間です。
まずはマスキング。テープがカラフルなのは放っておいてください。
そして、ボンドはもう普通の木工用。(ここは本当はタイトボンドを使うべきだそうです。そうしないと失敗したら再起不能)
(2021.01.26追記:Amazonでタイトボンド売ってた)
隙間にぬりぬり。もう、このへんからいわゆるひとつの「ポイント オブ ノーリターン(Point of No Return)」のはじまりです。
ブリッジに穴をあけます
よい子はマネしないでくださいね。大事なことなので、二度言います。よい子はマネしないでください。
本当ですよ、なにせブリッジに穴を、というかギターの本体に穴をあけるのです。
この通り、本気のやつです。楽器店で教わったのは「細い奴から順番に広げていかないと亀裂が入ったら終わりだから」とのことで、ビットは3段階揃えました。
3mmからはじめて、4mm、5mmへ進めていきます。奥に映っている新聞の写真、腕組みしてる方は佐々木蔵之介さんです。どうでもいいけど。にっこりされているので、この先のことを思うと心がざわつきます。
本気か、本当にやっちゃうのか?!
こんなのビビってたら失敗します。いざっ!
ところで、見た目は気になるよね
いまさら何を言ってるか?と思いますが、ボルトで止めるといっても、やはり見た目はちょっと気になります。そこで今回はこんなパーツを用意しました。
ローゼットワッシャー
これはブリッジを抑え込む圧力を広範囲にかけるために用意しました。装飾用ということで見た目もそんなに悪くありません。
真中高ナット
これは、サウンドホールの小ささに起因する対策です。ボルトの受け側を穴に突っ込んだ手で受け止めなくてはならないわけで、薄っぺらいナットだとおそらくホールドできないはず。で、本来は長さ調節用のパーツですが、手ごろな厚みのあるナットを入手。
ステンキャップ
これは表に出る部分です。ワッシャーの形状から考えて普通の六角ボルトだと回せなくなります。ドライバーで回せるビスでもいいけどねじ山を揉んでしまったら終わるということもあり、六角レンチで回せる円形頭のボルトを選びました。
いよいよ穴あけ
見た目を気にするなら、やはり位置決めは大事。端により過ぎずブリッジに圧力をかけられる位置を探して。。。
ローゼットワッシャーのサイズとのバランスもあります。
位置を決めたら中心をケガキして。
そしたら今度こそ、えいっと。
電動工具を使うときは必ず手袋しましょうね。何度救われたことか。
さあ、もう引き返せません。少しずつ、穴を広げます。
ブリッジにわずかな傾斜があるのでそこに合わせて、最後の5mmのビットでボルトの入る角度を微調整します。(ちょっと斜めにしないとボルトが浮いてしまう)
孔をあけたら、ナイフで縁のバリをきれいにとります。
ボルトで止める
ローゼットワッシャーと六角穴付きボルトの組み合わせはこんな感じ。ボルトの縁のすべり止めの筋がワッシャーに反射して、ちょっといい感じ。
裏側にまずは緩み防止のためのばねワッシャーを、
と、これがすごく大変。
そもそもサウンドホールに手をねじ込む時点でそこそこ難儀なのに、こんなに小さな部品を指先に乗せて、手探りでボルトの先に合わせなくてはならないのです。
何度もポロポロ落としては、ひっくり返して振って取り出して、を繰り返している間に日も暮れそう。。。
10回ぐらいのチャレンジでどうにかコツをつかみ、ようやく成功。次はナットです。
いや、こいつどないすんねん?親指と人差し指でつまんでたら、サウンドホールに手が入らんし。
これも苦戦しましたが、よくよく考えた結果、
ナットを穴に入れておいて、手を突っ込んでからつまむ
という方法を、考えるサルは思いついたのでした。
で、この作業を先に入れたワッシャーをこぼさぬよう、ギター本体をさかさまにしながら2回繰り返すのです。きっとスリーポイントシュートの5倍ぐらい難しいと思います。はぁ、ビールが飲みたい。
暗闇の中でナットがボルトの先に噛んだ時、おもわず「ヨシっ!」と声が出るというものです。
最終工程
どうにか二つのボルトを締めあげ、いよいよ最終工程です。
六角レンチで締めて。(締めすぎは注意)
この通り隙間は無くなりました。
そして弦を張ります。
楽器店のご主人おすすめのEXTRA LIGHT。
すごく久しぶりでやり方を忘れていたので、そこはGoogleで検索しました。
弦の先っぽって危ないですよね。
そしてどうにかこうにか、完成した姿がこれです。
まぁそんなに悪くないんじゃないかと。浮きは完全には押さえつけられなかったけど、自分なりには満足。
そしてチューニングして弾いてみると、なんとも優しい音色。あ~これが本来の設計上の音色なんでしょうね。楽器店のご主人、ありがとうございます。
作業に取り掛かってから2時間半ほど。ばねワッシャーの取り付けのところでだいぶ時間を食われましたが日が暮れる前に終わってよかった。
決しておすすめできる修理方法ではないけど、
・サウンドホールが小さいトラベルギター
・専門店(リペアショップ)で修理を受け付けてもらえず
・自分の手は小さくて穴に手を入れることができて
・DIYの心得と道具があり
・失敗しても自己責任で取り組む覚悟のある方
がもしもいらしたら参考になるかもしれないと思い、ここに書き残す次第です。
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