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iPadで同人小説作成:扉・目次・奥付を作る

小説同人の執筆から入稿まで、iPadで全部やるぞ!のシリーズ
縦式で本文を作成後、扉(タイトルページ)、目次、奥付をなるべくラクに作成する方法です
ただし今回は、縦式だけではなく、PDF編集アプリ「GoodNotes」も使用します
目次や奥付を作る方法はいくらでもありますが、「こういうやり方もあるよ」という一案です
本記事の対象読者は以下の通り
・縦式を使ってるひと
・絵を全く描かない字書き
ペイントソフトを使わず、文字入れだけでどうにかしていきます
(最後のTipsだけは、ペイントソフトを使っています)

本記事は、本文を執筆・推敲や校正を終えて、仕上げにタイトルページ、目次、奥付を挿入する、という流れを想定しています
サイズは文庫本を前提にしてますが、A5でも他サイズでも、作業の流れは変わりません


事前準備

縦式で本文を準備する

まず小説の本文を作成します
別のテキストエディタを使って書いてもいいし、最初から縦式でもいい
とにかく、縦式を開いて本文を流し込みます
よくあるやり方は、

  • 別のテキストエディタで執筆した場合は、そのエディタで「.txt」形式で書き出して、縦式で開く

  • 縦式で「書類を作成」し、別ファイルやウェブから本文をコピペしてくる

でしょうか。ご自身のやりやすい方法でOKです
縦式では、ルビを振ったり校正をしたりして、本文の調整を行います

扉用・目次用の空白ページを挿入

扉(タイトルページ)は、本になったときに表紙を開いて3ページ目、つまり本文の1ページ目です
ここはまずプロの仕事を見てみましょう 商業小説っぽくしたいので、見本どおりにするのが一番!

参考1:リヴィエラを撃て(上) 髙村薫 新潮文庫
参考2:四人組がいた。 髙村薫 文春文庫

横書きですね!
この時点で、縦式で扉を作成することを諦めます
ほら、人生諦めが肝心ですし
一応縦式だけでも横書き扉ページの作成ができますが、ちょっと設定が大変なので…
別に本文を何でもかんでも縦式でやる必要はないワケです
違うアプリを使えばいい。今回はGoodNotesでやるぞ!

※実は上記の参考に挙げた文庫本にせよ、他の商業小説にせよ、この後さらに中扉や空白ページ、登場人物紹介ページ等、結構いろんなページが挟まってたりします
ですが、同人小説だとそこまで仰々しくせず(特に必要もないのに真似したら、ページ数稼ぎと思われそう)、今回は扉と目次だけとしました
同人誌作成は作者の自由だと思うんで、やりたい場合は好きなようにすればいいと思うけどね!

というわけで、縦式では扉用・目次用ページとして、本文冒頭に空白ページを2ページぶん挿入しておきます
手順は、
・1ページ目1行目にカーソルを置く
・ハンバーガーメニューから「改ページ」>「改頁」
上記を2回実行します
目次が必要ない場合は、改ページ1回でよいです
※注:3本線が並ぶアイコンを「ハンバーガーメニュー」といいます

宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」
今回のデモ用の本文データとして、青空文庫から引用してます
今回は文庫サイズ想定しているのと、扉ページ・目次ページ用にしたいので、改頁を選択
改ページを2連続したあとはこんな感じになる

奥付用の空白ページも挿入

奥付は、レーベルによって
・縦書きと横書きが混在する奥付(新潮文庫)
・横書き(文春文庫、集英社文庫)
と、まちまちだったりします
今回は奥付も横書きにするので、本文最後のページにも改ページを入れます
※なお、縦式の本文内でも奥付作成ができますが、今回は説明しません。公式のマニュアルをご参照ください

最終ページには、奥付用の空白ページとして改ページを追加します

出力設定の確認

扉、目次、奥付用の改ページの設定ができたら、今度は出力設定オプションを確認します
「出力設定」>「…」>「出力設定オプション」>「ページの先頭の改ページを無視」をオフにします

オフにすると、ページの先頭の改ページを無視しなくなるので、先ほど設定した扉・目次用改ページが有効になります

ここまで設定完了したら、天地ノド小口、フォントサイズ、ヘッダ・フッタ等が適切に設定されているかを確認し、PDF出力します

GoodNotesで扉・目次・奥付の追加

次にGoodNotesを開いて、縦式で出力したPDFを読み込みます

縦式で出力したPDFを、GoodNotesで開いたところ

1ページ目に扉、2ページ目に目次を入れていきます
GoodNotesではテキストオブジェクトの入力が可能なので、まずは1ページ目を開きます

<扉>

扉に必要な最低限の情報は
・本のタイトル
・作者名
くらいで、その他の情報はあってもなくてもいい
ロゴ的な画像があったり枠に囲まれてると、より「商業小説っぽい」見た目になると思います
それこそ前述で画像を例示しましたが、プロの仕事を参考にすればOK
つーわけで、テキストオブジェクトを追加し、文字を入力していきます

テキストは、フォントや文字サイズの変更が可能です

テキストアイコンを選択して、画面の任意の箇所をタップすると、画面内にテキストオブジェクトが生成されます
テキストオブジェクトをページの横幅いっぱいまで広げてから「段落」で中央寄せを指定すると、画面中央にタイトルを配置できます

タイトルのテキストオブジェクト、作者名のテキストオブジェクトをそれぞれ配置したところ

タイトル、作者名でそれぞれテキストオブジェクトを作成、文字入力、フォント変更、文字サイズ変更を行い、任意の位置に配置します
これだけだと物足りないので、フリー素材の画像も探してきて配置しました

任意の画像を読み込んでサイズ変更したところ
画像を挿入するときは、自作や著作権フリーのものを選ぶ等、権利関係には気をつけてください

他にも、枠で囲いたい場合もあるかと思いますが、いったんはこれで
なぜなら、シェイプツールで枠を作って囲ったとしても、うまいことセンタリングできるかどうかは目測でやるしかないためです
※GoodNotesではトンボやスケールの表示がないので…
それでも枠で囲いたい場合は、以下のページの説明が詳しいです

<目次>

次に目次のページ(GoodNotes2ページ目)を開きます
どの章が何ページかは、ぶっちゃけ目でチェックする力技しかない…
ここはコツコツやりましょう
タイトルページと同じく、テキストオブジェクトを配置して、そこに章タイトルとページ番号を入れていきます
ここはWord等、目次を自動生成できるツールのが有利ですね…
100の短編を収めてるとかでもない限りは、人力でどうにかしましょう

章タイトル、ページ番号を入力
セロ弾きのゴーシュは本来章分けされてないけど、今回はサンプルなので
フォントはレトロな雰囲気のある「夜永オールド」を選択

<奥付>

目次と同じく、テキストオブジェクトを配置して、奥付に記載すべき事項を入力していきます
自分は大体こんな感じ

お礼の文章、本のタイトル、出版日、作者名、メアド、印刷会社など
pixivやX(Twitter)のID、感想フォームの二次元バーコードを入れるのもよくある

GoodNotesのテキストは、メールアドレスを入力すると、勝手にリンクが張られて下線がつくという、ありがた迷惑な仕様があります
こんなときは、リンク部分を長押しして「リンク設定」>「リンクを削除」すれば、下線が消えます

<出力>

一通りの作業が終わったら、GoodNotesからPDFを出力します

「共有と書き出し」から、「講演者がみるページをミラーリング」にチェックされていることを確認し、「すべてを書き出す」をタップ
上記の設定で「書き出す」すると、同人小説本文原稿PDFが完成します

<なぜGoodNotesでやるのか>

扉・目次・奥付をGoodNotesで作るのには、「横書きテキストを入れられるから」とはまた別の理由もあります
GoodNotesなら、テキストオブジェクトのフォントが好きに選べるし、保存時はテキスト・画像のオブジェクトが編集可能なまま保持されます
当然、テキストの中身も書き換え可能だし、オブジェクトとして編集も可能
そして、そのオブジェクトは、別のGoodNotesのドキュメントに対して、コピペができるのです
つまり2冊目の本を作るとき、1冊目で設定した扉、目次、奥付の書式を、そのまま2冊目に流用できちゃうのです
これは先々楽になる…!
というわけで、未来の作業への効率化のため、GoodNotesを使っています

最終確認:フォントの埋め込みや画像欠け等

ここでは、Adobe Acrobat Readerを使います やっぱPDFといえばAdobe
公式最強なので
iPadにアクロバットリーダーをインストールします。無償版でOK
Adobe税払える人はもちろん有償でもいいですが、チェックだけなら無償版のReaderで事足ります

<フォントの埋め込みチェック>

残念ながら、iPad版Adobe Acrobat Readerには、フォントの埋め込みをチェックする術が…無い…
PCだったらWinでもMacでも、無償版のAcrobat Readerで「文書のプロパティ」からフォントの埋め込み確認ができるのですが
仕方ないので、見た目だけでチェックするしかないです
ただ経験上、縦式・GoodNotesでPDF出力して、印刷所から指摘くらったり、仕上がりの本に問題があったことはありません
フォントも、こっちが縦式で指定したものでちゃんと印刷されてるし…
少なくとも、コミックモール様、ちょ古っ都製本工房様では問題が出たことはありませんでした
どうも、大陽出版様、Hope21様など、特定の印刷所様では、iPadなどMac系列の機械でPDF出力したものを印刷する時に、問題が起こることがあるらしいです
…基本的には、印刷所に問題があるんじゃなく、データ作成の段階で問題があるような気がするんだけどね…

<画像欠け確認>

これは、画像を埋め込んだ箇所(扉、奥付など)のページを目で見て確認すればOKです
GoodNotesで見たときと、同じ見た目になってれば問題なし

<ネットプリントで確認>

まだ安心できない人は、ネットプリントで印刷して確認してみましょう
ネップリは、インターネット経由でサーバにファイルがアップロードされ、コンビニコピー機でプリントアウトされます
これなら、フォントが正常に埋め込みされていない場合や、画像オブジェクト等が欠けている場合は「思ってたんと違う!」出力結果になります
※ただ、文庫本サイズの原稿をプリントアウトするときは、印刷時に「小冊子」の指定をするとA5に拡大印刷されてしまうので、そこはご承知おきください
原寸でチェックしたい場合は、
・小冊子:しない
・ちょっと小さめ:しない
・2枚を1枚・両面:しない
の設定にします

なお、ネップリで確認したい場合は、わざわざ全ページのPDFではなく、気になるページだけを抽出したPDFを別途用意して印刷するとよいです
コンビニの印刷費(モノクロ1ページ20円)が気にならない場合は、全ページ印刷してもいいけど…

縦式Tips:空白ページに通常のノンブルを表示させる

おまけで、縦式のちょっと便利なTips
通常、縦式で空白のページを作ったとき、かつ隠しノンブル設定をオンにしている場合は、空白ページには隠しノンブルが表示されます
しかし、空白ページに隠しノンブルではなく、通常のノンブルを表示させたいときもある…
そういう場合、以下のように設定してください

  1. 縦5px 横5px程度の小さな画像(色は白)を用意する
    ※上記のような画像は、クリスタ、プロクリ、アイビスで作成可能でした 意外と↑のキャンバスサイズで作成できるソフトって無くてね…
    フリーだとアイビスが楽そう

  2. 縦式の「設定画面」>「スタンプの管理」>「+」>「画像を追加」で、1で作った画像を登録

  3. 縦式のテキスト編集画面で、空白にしたいページにカーソルを移動させ、ハンバーガーメニューの「スタンプ」>「未設定」>2で設定したスタンプを選択>「完了」>「完了」
    画像が真っ白なのでよく分からないと思いますが、これでカーソルを置いた部分に「スタンプ」が追加されました
    どうしても「スタンプがちゃんと埋まってるか確認したい!」という場合は、ヘッダにあるカラーパレットのアイコンをタップし、ユーザーテーマの画面で「ダーク」を選択すると確認可能です

ユーザーテーマの設定で「ダーク」を選択
真っ黒ダークテーマに映える、真っ白スタンプ
スタンプがちゃんと埋め込まれているのを確認したら、テーマは元に戻します
(別にダークテーマそのままにしてても、PDF出力には影響しませんけどね)

最後に、PDF出力して見た目チェックします
これで、空白ページに隠しノンブルではないノンブルが表示されてるはず
出力設定の「隠しノンブル」がオンになっていても、この方法なら隠しノンブルではなく通常のノンブルが表示されます
※某フォーラムで質問があったので編み出した裏技です
このやり方で印刷所にお願いしたことはないのですが、ネットプリントでは正常にプリントアウトでき、空白ページに普通のノンブルが表示されました

縦式での同人小説作成のお手伝いになれば幸いです


おまけ:「商業小説っぽさ」にこだわる理由

何回かnoteで記事を書いてきて、「商業小説っぽくしたい!」と繰り返してきたんですけど、その理由について
プロの真似をしたい!というのが第一の理由ではありません
商業小説=プロの仕事の組版は、幅広い人口に膾炙し、読みやすく、分かりやすく、そして美しいからです
同人小説を鈍器にしたくない」でも書きましたが、まずは「読んでもらうために」なんです
自分の書くものは毎度長文になりがちで、読み手の負担が強い
ただでさえ長文読むのしんどいのに、さらに読んでいて違和感になるようなモヤモヤポイントがあると、読む気を削いでしまいそうで…
なので、読みやすいものにしたい。それを一言に集約すると「商業小説っぽくしたい」なのでした
とはいえ、商業小説といっても、さまざまな組版があってピンキリなんですがね
同じレーベルでも出版された時代によって違うし、それこそ本によりけり
商業小説でも、微妙だなーと思う組版も、たまにある…
個人的に、どれを見ても総じて美しいと思っているのは、新潮文庫です

なので、文庫サイズにこだわるのは「手持ちしやすいから」、商業小説にこだわるのは「読みやすいから」という理由でした
帯やカバーは、個人的には重視しておらず、あってもなくてもいい
いち読み手としては、極論、読めりゃなんでもいいです 読むもんがあるなら「ありがたい」の感想一択です
そもそも同人なんだから、作りたい人が好きに作るのが一番いい、と思っています
作り手として「読みやすい」を追求しだすと、それなりに指針はあるよってだけ

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